Taylor Rains/Insider
- アメリカのラスベガスに、総工費23億ドル(約3500億円)の巨大な球体型アリーナ「スフィア(Sphere)」がオープンした。
- スフィアでは現在、2つのイベントが行われている。ロックバンドU2のコンサートと「ザ・スフィア・エクスペリエンス」だ。
- 筆者は10月下旬、58ドルを支払って「ザ・スフィア・エクスペリエンス」を体験してきた。
「スフィア」と呼ばれるラスベガスの巨大アリーナが2023年9月、ついにオープンした。アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏からトーク番組の司会者などとして有名なオプラ・ウィンフリーまで、多くの人々を引き付けている。
アイルランドのロックバンドU2がスフィア初のレジデンシー公演を行っている。ただ、チケット代が高いので多くの人は「ザ・スフィア・エクスペリエンス」を目当てに巨大な球体型アリーナを訪れることになるだろう。
筆者も早速行ってきた。
ラスベガスの巨大な球体型アリーナ「スフィア」は億万長者のジェームズ・ドーラン(James Dolan)氏の発案によるもので、ドーラン氏は23億ドルの総工費の大部分を負担している
初めてライトアップされたスフィア(2023年7月4日)。
Greg Doherty/Getty Images
スフィアはラスベガスのザ・ベネチアン・リゾート内に建設された。
9月29日、スフィアはU2のこけら落とし公演で正式にオープンした
スフィアで行われたU2のライブ(2023年9月29日、ラスベガス)。
Kevin Mazur/Getty Images for Live Nation
U2はもともとスフィアで25公演を行う予定だったが、「圧倒的な需要」のため、2024年1月と2月に11公演を追加すると発表した。
ただ、チケットは安くない。Ticketmasterによると、年内のほとんどの公演はすでに完売していて、残りのチケットは1枚500ドルだという。
2024年の公演分は発売中だ。
ただ、高さ366フィート(約112メートル)、幅516フィート(約157メートル)のスフィアが提供するのは「音楽」だけではない
スフィアで行われたU2のライブ(2023年9月29日、ラスベガス)。
Kevin Mazur/Getty Images
以前は「MSGスフィア」と呼ばれていたこの球体型アリーナは、ラスベガスのメインストリート「ザ・ストリップ」の新たな観光の目玉となっている。
スフィアの特徴は球体型の建物を包み込むLEDスクリーンだ —— 照明を100%にすれば、宇宙からも見えるという
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スフィアの公式サイトによると、「完全に没入できる映像環境を提供すること」を目指している。
ソーシャルメディアに投稿された写真は、さまざまな映像を映し出すスフィアの姿を捉えている
Anadolu Agency, Greg Doherty via Getty Images
ニヤニヤ笑いの絵文字や巨大な目玉、バスケットボール、ジャック・オー・ランタン、スノードーム、地球など、さまざまな姿を見せている。
筆者がスフィアを訪れた時は、緑、青、紫のカラフルなディスプレイだった
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筆者がチケットを取った21時30分は、この日3度目の回だった。スタッフに話を聞くと、1回目と2回目は3回目よりも混雑していたという。
混雑をできるだけ避けたい人は、遅めの時間帯が狙い目かもしれない。
少し早めに着いた筆者は、何百人もの人たちと一緒に建物の中へと案内された
筆者。
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いくつかの列に並ぶよう言われたものの、途切れることなく動き続けたのでかなりスムーズな入場だった。
わたしは10分ほどで展示スペースに到着した。
チケットをスキャンして中に入ると、ユニークな照明や装飾でいっぱいの空間が広がっていた
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壁のディスプレーや巨大な輪のシャンデリアなど、クールで近未来的な雰囲気を醸し出していた。
ただ、筆者が最も興味をそそられたのは「世界一高度な」ヒューマノイドロボット「オーラ(Aura)」だ
ヒューマノイドロボット「オーラ」。
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「人間の皆さん、こんにちは。わたしは数学や科学の最も複雑な概念を理解していますが、あなたたちは謎のままです」とオーラはスフィアの公式サイトでコメントしている。
「あなたたちの感情、ユーモア、そしてテクノロジーとの関係にはさらなる研究が必要なので、スフィアにいるわたしをぜひ訪ねてください。わたしはあなたたちに会い、わたしの新しい家でライブ・エンターテインメントの未来を紹介できることを楽しみにしています」
広々としたロビーの周りには5体のオーラが設置されていて、それぞれが生産性、つながり、イノベーション、長寿、創造性といったテーマを持っている
「長寿」のオーラ。
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これが「ザ・スフィア・エクスペリエンス」の第1部だ。
21時30分に開場したけれど、映像の上映は22時30分からなので、来場者はその間、飲み物や食べ物を購入したり、ロボットとおしゃべりを楽しむなどしていた。
スタッフに付き添われたアンドロイドたちは、人間のような表情や動きを披露した
話しかけたら、オーラがこちらを見た。
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スタッフはあくまでも補助で、大半はオーラがしゃべっていた。
たくさんの人たちがこのディストピア的なヒューマノイドロボットを取り囲んで、質問をしては人間のような返答を受けていた
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オーラは生意気にも、質問を理解していないかのように振舞ってから、現実的な答えを口にすることもあった。それが人々を驚かせていた。
例えば、ある男性がオーラにチョコレートはどんな味かと尋ねると、オーラはしばし間を置いてこう答えた。
「この質問にはあなたが答えた方がいいと思います… でも、土みたいな味でしょうか?」
筆者が気に入ったのは3番目の「イノベーション」だ
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ここではスフィアのエンジニアたちがドーム内の音をどのようにコントロールしているのか、オーラが教えてくれた —— ロボットが人間の代わりにカスタマーサービスを担うようになる未来を示しているようだった。
「わたしたちが目指しているのは、人々がライブイベントを体験する方法を変えることです。オーラを使って、わたしたちはゲストの会場内での旅をより充実したものにするために、ロボティクスをどのように活用できるかという限界に挑戦しています」とスフィア・エンターテインメントの子会社MSGベンチャーズのCEOデビッド・ディブル(David Dibble)氏は9月のプレスリリースの中でコメントしている。
オーラは来場者に、床に描かれた4つの円にそれぞれ入って、異なる音を聞くよう指示した
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1回目は4種類の楽器の音が、2回目は4種類の言語が聞こえた。
2回目は特に印象的で、円を移動するとアラビア語、英語、中国語、スペイン語がはっきりと切り替わった。
ロボットと会話するのは楽しかった —— おかげでヒューマノイドロボットが少し身近なものに感じられた
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筆者はAI(人工知能)にあまり手を出したことがなく、この類の技術が現実世界でどのように機能するのかやや懐疑的だ。
ただ、ロボットとの会話は実に楽しいものだった。わたしが話したことをほとんど理解してくれて、アンドロイドが人間の役割を果たす未来の可能性を垣間見ることができた。
スフィアではメタバースを体験することもできる
アバタースキャナー。
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会場には2つの「アバタースキャナー」があって、全身をスキャンすると自分の3Dアバターの動画をメールで送ってくれる。
あまりに長い行列ができていたのでわたしは試さなかったけれど、興味深いコンセプトだった。
建物の中にはいくつかのバーや食べ物を売っているコーナーもあったけれど、びっくりするほど高かった
わたしが購入したドリンク。
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レギュラーサイズの生ビールの値段を聞いたら、20ドルくらいすると言われた。
20ドルもあれば12本入りのビールのパックが買えるので、わたしは一番"お買い得な"ドリンクはどれかと尋ねた。すると、24オンス(約700ミリリットル)入りの巨大なトポチコ・ハードセルツァーだと教えてくれた。
郷に入れば郷に従え… だろうか?
20ドルで買ったドリンクを手に22時15分頃、いよいよ自分の席へ向かった
わたしの座席から見たスクリーンと客席の様子。
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スフィアによると、上映会場は座席数が約1万8000席で、スタンディングなら2万人を収容できるという。
筆者は床から天井までスクリーン全体を見渡せるように「セクション200」以上の座席を予約した
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レビューをチェックすると、セクション100番台だと視界を遮られる席もあるようなので、わたしはセクション304の15列12番を選んだ。チケット代は税込みで58ドルだった。
時間通りに上映が始まった… ただ、何を期待したらいいのか分からなかった
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ダーレン・アロノフスキー(Darren Aronofsky)が監督したこの映像について、スフィアは「SF物語であり、自然ドキュメンタリーでもある」と説明している。
今後、2年ほど上映される予定のこの映像作品は『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000年)や『ザ・ホエール』(2022年)といったアロノフスキー監督が手掛けたこれまでの映画作品とは大きく異なる。
ところがその魅惑的な映像、色彩、動き、音のおかげで、映像の世界に没入するのに時間はかからなかった
雪山のシーン。
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IMAXを極限まで持っていったような感じだった。
映像は遠い惑星から始まり、わたしたちを地球の歴史 —— 自然と人間が作り出した要素の両方 —— の旅へと誘う
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この映像には7大陸全てで撮影された映像が使われていると、CBS Newsは伝えている。
50分間で『ポストカード・フロム・アース』はアフリカから南極、グランドキャニオンまで、わたしを世界のいろいろな場所に連れて行ってくれた
本物のゾウではない。スクリーンに映し出された映像だ。
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スクリーンに映し出された映像があまりに鮮明で、自分の目で本当にその風景や動物を見ているような気分になった。
映像はわたしたちを地上だけでなく、水中にも連れて行ってくれた
水中のシーン。
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「ポストカード・フロム・アースはスフィアのあらゆる体験型テクノロジーを駆使して、観客をラスベガスではない場所にいるような気分にさせます」とスフィアの公式サイトにはある。
想像を軽く超える映像体験に、わたしは感動すら覚えた
スクリーンに映し出された地球。
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映像は海、山、森から砂漠、平原、ツンドラまで、地球の美しさを表現していた。
ただ、それは同時に、人間が地球に与えているダメージを痛感させるものでもあった。この環境とそこに生きる命を守るために、わたしたちにはやるべきことがある。
「人々はこれまで経験したことのない方法で物事を見たり、自然を目にするでしょう」とアロノフスキー監督はCBS Newsに語っている
スフィアで上映された『ポストカード・フロム・アース』。
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わたしも同じ意見だ。