X(旧ツイッター)オーナーのイーロン・マスク。
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イーロン・マスクによるX(旧Twitter)の買収後、世界で巨額の広告費を投じている広告主の圧倒的多数がXへの広告掲載を中止したことが分かった。マーケティング・コンサルティング会社のイービクイティ(Ebiquity)がInsiderに独占的に提供した最新データから明らかになった。
メディア調査会社のCOMvergenceによると、イービクイティは、世界の広告支出額上位100社のうち70社と取引があるが、それらのクライントのうち2023年9月にXに広告を出稿したのはわずか2社だけだったという。マスクが2022年10月にTwitterを買収する以前の同年9月には31社だったが、そこから減少したことになる。それ以降、Xに広告を出稿するイービクイティのクライアント数は着実に減少していることがデータから見て取れる。
イービクイティはこれらのクライアント名は公表していない。ただ、最近のイービクイティの財務報告書によれば、同社の顧客にはグーグル(Google)、ウォルマート(Walmart)、ボーダフォン(Vodafone)、ゼネラルモーターズ(General Motors)などが含まれている。イービクイティは、代理店やプラットフォームからデジタルメディア投資データを収集する自社のデジタルメディア・ソリューション部門から、分析に用いたXのデータを取得したという。
「このような落ち込みは、大手広告プラットフォームでは見たことがない」と、イービクイティのチーフ・ストラテジー・オフィサーであるルーベン・シュルース(Ruben Schreurs)は話す。
世界最大級の広告費を投じる70社をクライアントに持つイービクイティのデータからは、大口広告主の大半がXへの広告支出を停止していることが分かる。
Ebiquity
イービクイティの分析と、Xのリンダ・ヤッカリーノCEO(最高経営責任者)が9月にあるイベントのインタビューで語った「過去12週間だけを見ても、上位100の広告主のうち90%がXに戻ってきた」という発言は矛盾しているように見える。このインタビューでヤッカリーノは、Xへの広告出稿を再開した 「1500 」社の中には、VISA、日産、AT&Tなどが含まれるとしていた。
Xの広報担当者は、この90%という数字について、前年度のXの上位100社の広告主を指していると明らかにした。しかし、イービクイティの調査結果については公式のコメントを避けた。
ブルームバーグは以前、分析会社センサータワー(Sensor Tower)のデータを引用しながら、Twitterの代表的な大手クライアントはアマゾン、ユニリーバ、コカ・コーラ、IBMなど、世界的に見て広告予算が潤沢な企業でもあると報じている。
マスクは2023年4月の時点で「ほとんどすべての」広告主が戻ってきた、あるいは戻ってくる見込みだと語っていたが、9月にになると、アメリカにおけるXの広告収入は60%減少したと述べている。ただ、それがいつのことを指しているのかは明らかにしていない。
「Xの首脳陣が最近、同社のプラットフォームに広告を出稿するトップクラスの広告主が大量に戻ってきたと発言していますが、われわれとしては困惑しています」
イービクイティのシュルースはこのように述べ、同社がクライアントと協業したり広告主の業界団体グループと情報交換をしたかぎりでは、大手広告主がXに戻ってきていることを示すデータは得られていないと付け加えた。
つまり、「マスクとヤッカリーノによる公の場での発言の信憑性について深刻な懸念がある 」というのが、イービクイティの分析だ。
Xに投稿されるコンテンツや、Xの広告プラットフォームに対する全体的な信頼性や効果に懸念が示されるなかで、多くの広告主が過去1年間にXへの広告出稿を停止したり、大幅に削減したりしている。
広告分析会社であるガイドライン(Guideline)の分析によると、マスクの買収以降、アメリカにおけるXの広告収入は毎月55%以上減少しているという。
進歩的な監視団体であるメディアマターズ(Media Matters)が行ったセンサータワーのデータのレビューでは、一部の広告主が実際にXの広告枠に戻ってきたものの、彼らの広告支出額はごく少額にすぎないことが分かっている。センサータワーのデータによれば、例えば、VISAは10月6日までの12週間に10ドル(約1500円、1ドル=150円換算)を広告に費やしたが、前年同期間には7万7500ドル(約1160万円)を使っていた。
「信頼と透明性が非常に重要である今、裏付けとなるデータを使ってこの件に関して正式な追跡調査をしてほしいです」(シュルース)