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マイクロソフト(Microsoft)はイスラエルとハマスの衝突に関し、従業員の間で議論することを禁じた。同社内のメッセージから明らかになった。
マイクロソフト社内の「全社」掲示板に投稿されたあるメッセージを、約9万人が閲覧した。この投稿の中である従業員は、上層部からの「一方的な命令」と思われる対応によって「自分たちの仕事と会社にひどく幻滅」したと書き込み、次のように続けている。
「パレスチナ・イスラエル戦争が続くなか、ダイバーシティとインクルージョンを強力に推進する会社が、このようにひどく差別的で社会問題を無視するような態度をとるのを見ると悲しくなる。パレスチナの人たちを打ちのめすほどの不当な苦しみに対して、まるでうちの会社は関心がないみたいじゃないか」
この投稿には約600件のリアクションと60件のコメントが寄せられたが、その後、マイクロソフトはこの投稿へのコメントを締め切った。
「本スレッドへのコメントは、締め切らせていただきました。引き続きお互いに思いやりと優しさを実践し、Viva Engageで対話する際には、忘れずにMicrosoft 365使用ガイドラインを順守するようお願いします」
と、コミュニティマネージャーは発信している。Viva Engage(旧名称はYammer)とはマイクロソフトの従業員が利用しているプラットフォームで、企業用チャットボードも備えている。
なお、この従業員は、幹部のどのコメントが偏向していると感じたのかは投稿の中で特に言及していない。
人事トップは残虐行為を非難
10月10日、マイクロソフトの最高人事責任者であるキャスリーン・ホーガンは、シニアリーダーシップチーム(SLT)を代表して従業員にメールを送り、「イスラエルでの恐ろしいテロ攻撃」と「そこで繰り広げられる残虐行為」を非難した。彼女はハマスを名指ししてはいない。
ホーガンは次のように表明している。
「SLTとともに、命を落とした人、負傷した人、愛する人を失った人、そしてこの暴力行為で影響を受けたあらゆる人たちに深い哀悼の意を表します。私たちはともに、この憎悪に基づく残虐な行為を非難します。影響を受けたすべての方々へ。私たちの心と行動は、皆さんとともにあります。私たちはこれからも、皆さんを支援し、安全に過ごせるよう全力を尽くしていきます」
ホーガンによると、マイクロソフトでは、イスラエルにいる従業員3000人が直接影響を受けている。
「当社には世界中にユダヤ人の従業員がいますが、憎悪と暴言が増すなか、彼らも悲しみ、恐怖、不安を感じています。当社には世界中にパレスチナ人の従業員もいます。彼ら彼女らはこの地域にいる愛する人たちの安全を深く懸念しています。当社はこのようなテロ行為に反対します」(ホーガンのメールより)
「このような暴力行為を座視できない」
ホーガンが声明を出した同日、マイクロソフト従業員リソースグループのあるユダヤ人リーダーは、一部の従業員に宛てたメールの中で、パレスチナの武装組織ハマスをより強く非難した。
この人物はInsiderが閲覧した別のメールで次のように書いている。
「この問題が、複雑で政治的・文化的な立場の違いを明らかにする、非常にデリケートな話題になりうることは理解している。現時点においては、イスラエルとパレスチナの紛争は二面性を持つ問題であり、議論にはバランスが必要だと主張する人もいるかもしれない」
「はっきりさせておくが、私は、民族や宗教に関係なく、すべての人間に尊厳と権利があると信じている。罪のないパレスチナ人も、罪のないイスラエル人と同じように保護されるべきだ。しかし、特にこのような致命的な、いわれのない攻撃を受けた後に誤った平等を作り出すと、悲劇の切迫度が薄らぎ、これらの行為は正当化されうるというメッセージを暗に送ることになる。しかし、正当化されることはない」
「ハマスの掲げる目標は、イスラエルにおけるユダヤ人の存在を根絶することだが、それはパレスチナ人の幅広い意思を反映するものではない。私たちは、いかなる集団に対しても、このような暴力行為が繰り広げられるのを座視しているわけにはいかない」
イスラエルに多くの従業員を抱える企業で、この状況を乗り切ろうとしているのはマイクロソフトだけではない。同じくイスラエルに約3000人の従業員を抱えるエヌビディア(Nvidia)は、「イスラエル、ガザ、またはその両方」へ人道的な寄付を行うと社内メールで従業員に告げており、この取り組みで1000万ドル(約15億円、1ドル=150円換算)を集めようとしている。