積水ハウスは、47都道府県のパパ・ママ9400人を対象に男性の家事・育児の実態を調査した「男性育休白書 2023」を発表した。
都道府県別、男性の家事・育児力は高知県が2年連続の1位
2023年の男性の家事・育児力全国ランキングでは、「女性の評価」「男性の育休取得経験」「男性の家事・育児時間」「男性の家事・育児参加による幸福感」の4つの指標をもとに47都道府県で調査。
2024年に県内企業男性の育児休業取得率50%を目標に掲げ、官民共同で積極的な取り組みを行っている高知県が昨年に引き続き、1位に輝いた。2位には鳥取県(前年3位)が、3位には前年23位から大幅に順位を上げた佐賀県がランクインした。
5年間で男性の育休取得率は約2.5倍、取得日数は約10倍に
2019年から男性の育休にまつわる実態調査を独自に行ってきた積水ハウス。調査を開始した19年の男性の育休取得率は9.6%だったが、23年は24.4%と5年間で2.5倍に増加し、調査対象となる小学生以下の子供と同居する20~50代の男性の約4人に1人が取得した結果となった。
また、23年の男性の育休取得日数は23.4日で、19年の2.4日から5年間でおよそ10倍に。男女での取得期間にはまだまだ乖離があるものの、男性取得者のうち4割が1カ月以上の育休を取得したことで、男性育休の取得日数が伸長した。
男性の育休取得率・取得日数が伸びている一方、調査では20代の働くパパ層の7割が収入面の不安から育休取得を諦めていることが明らかになった。取得に対して前進しているものの、不安に思う要素はあるようだ。
マネジメント層の取り組みにより男性育休促進の動きが見られる
働くパパ・ママ層に対する、職場での男性社員の育休取得が促進されているかの調査によると、2022年に比べ数%ではあるが「促進されている」の回答が増加傾向であることから、マネジメント層の取り組みや企業の変化は社員へ伝わっており、男性育休を取り巻く環境も着実に変化していることが読み取れる。
働くパパ・ママ層に聞いた男性の育休取得に対する男女別の意識変化については、「自分自身が育休を取得したい」男性は69.9%と5年前に比べて9.4ポイントの増加、「パートナー男性に育休を取得してほしい」女性は64.7%と15.6ポイントも増加しており、いずれも過去5年間で最多に。それぞれの意識と行動が大きく変化していることもわかった。さらにはマネジメント層による男性社員の育休取得促進に対する取り組みも広がりの兆しが伺える。
また、企業風土の変化についても育休取得経験のある働くパパ・ママ層の64.7%が「変化を感じる」と答えており、多くの人が風土の変化を実感していた。緩やかな変化ではあるが、確実に育休取得の環境は確実に変化しており、男性の育休取得を後押しする環境があれば、より育休取得率の伸長が見込めるだろう。
従業員数1000人以上の企業では、育休取得について勤務しているパパ・ママ層の60.2%が「促進されている」と答えた。
男性育休取得は本人だけでなく、企業にとってポジティブな影響も
さらに、自身または職場で周囲に育休取得者がいると答えた有職者を対象に、育休取得による自身や周囲の変化について調査したところ、「男性が育休を取得することを、お互い様の気持ちで受け入れられるようになった」といったポジティブな声が多かっただけでなく、「フレックスや在宅勤務など働き方を意識するようになった」「自律的な仕事の進め方になった」など、働き方・仕事との向き合い方にもプラスの効果が表れた。
「職場や家庭でお互いを思いやる気持ちが育まれた」といった声も聞かれるなど、「男性の育休取得」が取得者に限らず職場全体にポジティブな空気を醸成させ、好環境を創り出す呼び水になっていることがわかった。
「男性育休白書」の取り組みに参加してきたジャーナリストで東工大准教授の治部れんげ氏は、男性育休を阻む“抵抗”はここ1年で弱くなったと指摘する。
「大きな理由は『育児・介護休業法』の改正です。今や多くの企業が男性育休を『取れたらラッキー』ではなく『取れないとまずい』と考えるようになりました。今の20代は、男性も育児休業を取り家庭生活にコミットしながら働きたいと考えています。
大学の授業で男性も育児休業が取れる、という事例や制度を伝えると『子どもが好きだからぜひ取りたい』『男女平等がいいから自分も育児をしたい』という反応が男子学生から当たり前のように返ってきます」(治部氏)
甲南大学文学部教授の中里英樹氏は、今回のリサーチの中で「パートナー男性に育休を取得してほしい」と考える女性の割合の増加に注目。2022年10月からの「産後パパ育休」の導入により、出産後に両親が共に子育てをスタートする機運が高まっていると分析する。
「この時期の育休は、2人のキャリア・人生を一緒に考え始め、男性も『自分が取らなければならない』という必要性に気付く機会となるのではないでしょうか。企業としても、男女を問わず社員が家族を含めてキャリアを考えるのをサポートしていくことが、男性の育休取得率アップや『1カ月以上の育休取得』の促進に続く次のステップとなるでしょう」(中里氏)
両者の指摘に加え、白書では依然として家事・育児時間に男女で歴然とした差があることも示されており、今後より一層の男性育休の促進が必要であることが読み取れる。