ライフドリンクカンパニーのオリジナル商品「ZAO SODA」。低価格で「アンチのいない」飲みやすさがウリだ。
出典:ライフドリンクカンパニー楽天市場
「乳酸菌」で健康支援、「クラフト○○」で希少性をアピールするなど、高付加価値をうたう商品で溢れる飲料市場で、独自路線をひた走る会社が関西にある。
メイン商品は水・お茶・炭酸水の3種類。イオン「トップバリュ」や西友「みなさまのお墨付き」など約30社のPB商品を黒子としてつくりながら、利益を上げている。
ライバルは飲料メーカーではなく「水道とやかん」。買い物ではなく「調達」のニーズに応え、少品種大量生産で圧倒的な低価格を実現する、「脱・付加価値戦略」に迫った。
大手飲料とは明確に戦略異なる
ライフドリンクカンパニー(大阪府大阪市)は売り上げの6割がPB商品で、イオン「トップバリュ」や西友「みなさまのお墨付き」など誰もが知る大手スーパーをはじめ、約30社から生産を受託している。
残り4割を占めるオリジナル商品も好調だ。中でも炭酸水の「ZAO SODA」は楽天市場の水・ソフトドリンクカテゴリで、2021年・2022年と2年連続で1位を獲得した。
同社の2023年3月期(通期)の売上高は302億5000万円、当期純利益20億7600万円の黒字だった。
2021年12月に東証二部(現スタンダード市場)に上場。市場再編でプライム市場からスタンダード市場へ「降格」する企業が相次ぐ中、2023年6月にはプライム市場への変更も果たしている。
さらに生産数を増やすため、2023年1月にはニットービバレッジを21億1600万円で買収(不動産の取得含む)、子会社化した。
同社が掲げるのは、「脱・付加価値戦略」だ。
「大手飲料メーカーが付加価値戦略を展開しているが、ライフドリンクカンパニーは戦略が明確に違う。
他メーカーは『買い物』向けの商品展開をしている。多様なバリエーションの味・サイズ・ラベルデザインを持った商品がコンビニエンスストアなどの店舗チャネルに並べられており、消費者は購入時の気分や目的などに合わせて、購入する。
一方で弊社は、選択・判断に労力をかけない『調達』に向けて、インフラドリンクの提供を行っている。そう言った意味では、競合は『水道』と『やかん』と言えるかもしれない」(人財本部長・浅井祥平氏)
ペットボトルは原材料の調達から自社で
ライフドリンクカンパニーの商品が支持される背景は、「アンチのいない」究極のスタンダードだと同社が自負する味と、なんと言ってもその価格にある。オリジナル商品では、ZAO SODA(プレーン)は500ミリリットル・24本で1579円、天然水は2リットル・8本で848円、緑茶は500ミリリットル・24本で1148円(いずれも税込)という安さだ。
低価格を実現できる背景は主に3つ。まずは「少品種大量生産」。商品を「水」「お茶」「炭酸水」に絞って開発・生産・販売しているのは冒頭の通りだが、加えて、サイズも2リットルと500ミリリットルに限定。ペットボトルのキャップも統一するなどして製造ラインの中での切り替えを少なくし、1本あたりの生産コストを下げている。
次に「内製化」。たとえば多くの飲料メーカーが一部または全てを外部に委託しているペットボトルの製造は、その原材料となるレジンの調達から製造までを原則、自社で行う。
最後に「工場の全国展開」だ。北は岩手県から南は宮崎県まで国内10カ所に飲料生産工場を持ち、消費地までの配送コストを抑えている。
お茶屋から上場企業へ、PEファンドの元で進めた「選択と集中」
2016年から進めてきたポートフォリオ整理は、2023年2月のソース事業譲渡で終了した。
出典:2023年3月期・決算資料
ライフドリンクカンパニー(旧あさみや)は1950年にお茶の卸売業として創業、1972年に会社を設立した歴史を持つ。
その後、運送、氷、太陽光発電、乾麺、菓子などさまざまな分野に事業を拡大していったが、2015年にPEファンドのサンライズキャピタルに株式を売却。この資本業務提携をきっかけに、同ファンドの元でこれらの事業を次々と売却し、ポートフォリオ整理を進めてきた。
現在もサンライズキャピタルはライフドリンクカンパニーの株主として、約22%の株式を保有している。
今後も「脱・付加価値」戦略を貫きながら、販路を拡大していく計画だ。
「現在はBtoBのビジネスがメインだが、今後は定期購入の仕組みを充実させ、直接お客様に届ける、つまり自社サイトなどのECの売上を増やしていきたいと考えている。中長期では、販路を海外に拡大する可能性もある」(担当者)