金融機関のキャンペーンには、必ずしもお得とはいえないものがある。
Hananeko_Studio/Shutterstock
- 日々の金融機関のキャンペーンには、大盤振る舞いに見えるものが多い。
- しかし、利用者としては、簡単にその甘言に乗っていいわけではない。
- なぜなら、長い目で見て、利益に繋がらないケースもあるからだ。
それが「お得」に見えるのには、ワケがある。
日々実施される金融機関のキャンペーンは、大盤振る舞いに見えるものが多い。たとえば、昔から様々な銀行によって実施されている、定期預金の金利優遇キャンペーンなど、まさにその典型だ。
しかし、簡単にその甘言に乗っていいわけではない。なぜなら、それで目先の利益は享受できても、長い目ではむしろ損失を被ったり、不便な思いをする場合もあるからだ。
本記事では、各金融機関のキャンペーンを分析するとともに、それぞれとの向き合い方を解説していく。
なぜキャンペーンを実施するか?
まず、金融機関が気前のいいキャンペーンを実施する理由を考えよう。それは、「損をして得を取る」ためである。金融機関のサービスは、中長期的に利用されるものが多く、一度利用してもらえれば、なかなか離反されにくいからだ。
また、○○経済圏という言葉がある通り、近年は特に金融機関がグループ全体でビジネスを推進する動きが強まっている。そのため、顧客を囲い込む重要性が高まっているのだ。いずれかのサービスを一度使ってもらえれば、グループ会社の異なる金融サービスをクロスセルしやすい。
さらに、新規顧客獲得コストを引き下げることにもキャンペーンは有効だ。金融は新規顧客獲得コストが安いとはいえない業態である。この費用をキャンペーン活用で効果的に下げることができるのだ。
このように、優遇キャンペーンは金融機関にとって、長い目で見て利益に繋がる。しかし、利用者側にとっては必ずしもそうではないのだ。
例えば、定期預金の高金利キャンペーンだと、破格の料率を打ち出していながら、優遇期間は数カ月だけといったものがある。また、ポイント還元率を大幅にアップできても、グループ内の預金口座に証券口座への連携を求めるようなキャンペーンなども……。
以下より個別のケースごとに、注意点と対応策を共有する。
【口座開設】現金・ポイントのプレゼントキャンペーン
口座開設を条件に現金やポイントなどがプレゼントされる、特に銀行などが好むキャンペーンだ。その銀行口座をグループ内の証券会社の口座と連携することで、さらに特典が付与されるケースもある。
対応策:そうした事態を防ぐには、キャンペーンがなくても作りたいと思える口座かどうか、自問自答することが重要だ。中長期的に利用する予定がない場合は、考え直した方が良いかもしれない。他に利用している銀行口座がある場合、複数口座の管理が手間にならないか、確認することも重要だ。
【クレジットカード】高還元率キャンペーン
クレジットカードを新規申込した際に、一定のポイントが提供されるだけでなく、期間限定で特別料率のポイントが付与されたりするものもある。銀行の口座開設と違う点は、特別な還元率でもお得になる場合があることだ。
還元率は厳密にはキャンペーンとはいえない。ただ、特に新規ブランドや会員を増やすことに力を入れている会社であれば、他社に比べて有利な条件に設定されていることが多い。そのため、実質的にはキャンペーンに近い側面がある。
加えて、還元率は永遠に継続するわけではない点も注意が必要だ。ネットではこういった還元率が変更になると「改悪だ」と話題になる。ただ、それは驚くことではない。その理由はカード会社の立場から考えていただければわかるだろう。
高い還元率を設定するのはあくまで販促のためだ。その施策の必要性が薄まれば、還元率を低く変更することも十分にあり得る。
対応策:とりいそぎ、そのキャンペーンがなくても利用したいカードかを考えよう。さらに、還元率を満たすための利用条件も要チェックだ。加えて、近い将来、還元率が引き下げられても使い続けたいか、確認しておきたい。他に利用しているカードがある場合、家計管理が手間がどれだけ増えるかチェックしておこう。
【定期預金】高金利キャンペーン
金融商品のキャンペーンでも注意が必要なものがある。その最たるものが、定期預金の金利を期間限定で優遇するキャンペーンだ。定期預金単体の利用が条件の場合もあれば、資産運用など他のサービスとの併用が条件となるケースもある。なお、定期預金には円貨だけでなく外貨の場合もある。
利率の数字を見ると、通常の利息と比較して100倍、200倍の利息がつく旨を強調している広告を見かけることがある。しかし、金額に換算してみると、そこまで大儲けするわけではない場合が多い。また、キャンペーン金利が年利で表記されているのに、高金利が適用される期間が最初の数カ月などに限定されているケースもある。場合によっては、預入額の上限が定められているキャンペーンも。
外貨定期預金キャンペーンの場合、為替リスクを勘案すれば、むしろ損失が出るケースもある。この点は、資産運用がセットに定期預金を利用することで高金利が得られるキャンペーンも同様だ。資産運用の運用状況によっては、定期預金で得られた利益と差し引きで損益がマイナスになる可能性もあるのだ。
対応策:円貨定期預金の場合、利益金額を計算して魅力的な内容なのかを確認。外貨定期預金の場合、為替リスクを考慮しても申し込むメリットがあるのかを確認すると良い。 資産運用とセットの場合は、資産運用の商品性、リスク、手数料をチェックし、それ単体としても利用したいと思えるかが重要だ。
【住宅ローン】低金利キャンペーン
住宅ローンの低金利キャンペーンにも気をつけたい。新規申込および借り換え、住宅ローン単体および他の金融サービス一体でのキャンペーンなど、内容にバリエーションがある。低金利に関しては、全体に向けてキャンペーンとして打ち出しているケースもあれば、個々のお客様ごとに個別具体的に優遇条件を提示しているケースの2つがある。
一方で、他の金融サービス一体でのキャンペーンであれば、有利な金利条件を引き出すこと自体を目的に、必要のない他のサービスを利用しないように注意したい。例えば、投資信託の購入もキャンペーン適用条件になっている場合、長期間投資をしていれば毎年必要となる信託報酬が無視できないコストになる。一方で、住宅ローンは過去に比べて相対的に低くなっているケースが多い。金利優遇で軽減できる費用と合わせて計算してみたら、そこまでプラスではない場合もある。
対応策:優遇金利で省けるコストを事前に計算して、魅力的な金利といえるか、しっかり確認しよう。住宅ローンと合わせて利用が必要なサービスがある場合、確認すべきは住宅ローン利用中に継続的に利用したいと思えるかどうかだけでない。当該サービスが資産運用商品の場合、優遇金利で省けるコストと資産運用でかかるコストを合わせたトータルの損益を加味して利用したいと思えるかを確認しよう。
まとめ
このように金融機関のキャンペーンには様々なものがある。上記に挙げたのはその一部に過ぎない。こういったキャンペーンに申し込む際は一時的な利益だけでなく中長期的に見て利益になるかどうか考えることが重要だ。短期的な利益に目がくらんでしまえば、中長期的に見て損をすることになりかねない。