今期(2023年3月期)売上高2007億円を目指すZOZOは、今後のクリスマスや年末年始などの繁忙期を迎えるにあたり、新しい物流拠点を本格稼働させる。
撮影:小林優多郎
アパレルECサイトを運営するZOZOは10月25日、11月から本格稼働する物流拠点「ZOZOBASEつくば3」を報道関係者向けに公開した。
ZOZOBASEつくば3は、国内で5つ目、つくばで3つ目となる同社の物流拠点で、延床面積は同社としては最大規模となる13万7000平米。個人向けの「ZOZOTOWN」や「ZOZOUSED」、法人向けの「ZOZOMO」といった事業の商品管理、発送等を担うことになる。
ZOZOがこうした物流拠点を報道関係者向けに披露するのは今回が初めて。国内事業者で初導入となる自動化ソリューションの導入など、物流業界が抱える人手不足解消の一助になる「効率化」をどのように実現しているか、そのテクノロジーを取材した。
ロボが荷受けした商品を仕分ける「t-Sort」
荷受けした商品を仕分けるエリア。
撮影:小林優多郎
ZOZOBASEつくば3の自動化の要素は大きく分けると3つある。
まず、各種アパレルブランドからZOZOBASEに送られてきた(荷受けした)商品が、触れることになる自動化ソリューションが「t-Sort」(ティーソート)だ。
カゴを載せた自動走行ロボットは、コンピューターで集中管理されている。
撮影:小林優多郎
t-Sortは検品作業の仕分けを担当しており、その主役を担うのが自動走行ロボット。ロボットは集中管理されており、作業エリアの床面に仕込まれたRFIDという無線タグで現在地を検知しつつ、高速に移動する。
ロボットの上部にはカゴがあり、検品をする従業員のもとまで移動し、商品を受け取ると、指定されたコンテナにまで入れるという作業をする。
従業員は商品をロボットのカゴに入れていく。
撮影:小林優多郎
ロボットは適切な商品を適切なコンテナに入れていく。
撮影:小林優多郎
t-Sort導入前は、納品書に従って人間が検品から仕分けまで手作業で行なっていた。仕分けと格納をロボットで自動化することで、人間は検品作業に集中できるというわけだ。
ZOZOBASEつくば3にはt-Sortのロボットが約500台があり、1時間あたり3万2000点の商品を仕分けできるという。
発送順序をつけるための一時保管場所「シャトル&サーバー」
ZOZOBASEつくば3には、コンテナを運ぶためのコンベアがフロアを跨いでつながっている。
撮影:小林優多郎
t-Sortで仕分けされた商品はベルトコンベアで保管場所まで運ばれ、在庫として客からの注文・発送を待つことになる(いわゆる棚入れ)。
注文を受けると保管場所から商品がを取り出す(ピッキング)のは人間の仕事だが、ここでピッキングした商品に対して発送日などで優先順位をつける作業が必要になる。
大きな機械の棚……に見える「シャトル&サーバー」。
撮影:小林優多郎
ピッキング後の優先順位付けを担うのが「シャトル&サーバー」という設備だ。シャトル&サーバーはロボットというより、見た目は巨大な機械の棚だ。
「シャトル&サーバー」の役割は、いわば発送する商品の待機場といったところ。倉庫のさまざまな場所からピッキングされた商品がここに集まり、まず3つで構成された機械に格納されてから、順序づけて次の工程に送られる。
約5000のコンテナを一時保管できる。
撮影:小林優多郎
商品はコンテナ単位で運ばれるが、シャトル&サーバーで一時保管可能なコンテナ数は約5000。これは商品数で言えば約8万5000点の商品を保管できる計算となる。
ZOZOの担当者は、シャトル&サーバーについて入出荷数が1時間あたり2100コンテナと「かなり高速」であるとアピール。「物流が多い日や多くなる時間帯でも、すべて対応できるような設計となっている」と説明していた。
国内では初導入となる「Pocket Sorter」
コンテナから取り出した商品はポケットに入れる。
撮影:小林優多郎
シャトル&サーバーから出た商品は続いて、さらに細かく仕分けやダンボールへの梱包・発送作業に送られる。
その商品の倉庫内での移動や、一つの注文で2点以上の商品が購入された場合に必要な「商品を集める」作業を担うのが、国内事業者では初導入となる「Pocket Sorter」(ポケットソーター)になる。
梱包・出荷のエリアの天井にはレールが縦横無尽に張り巡らされていた。
撮影:小林優多郎
Pocket Sorterは、シャトル&サーバーから送られたコンテナ内にあった商品を、一つ一つ布製のポケットにぶら下げて高速に運ぶ。
ポケットは単に1本道を進むのではなく、作業エリアの天井に縦横無尽に張り巡らされたレールを、最終的に「注文ごとに商品が集まるルート」で走っていく。
梱包を担当する従業員はポケットから商品を順番に取り出す。
撮影:小林優多郎
注文内容と商品の数や種類を確認しつつ、段ボールに詰める。
撮影:小林優多郎
ポケットはその後、梱包を担当する従業員の作業エリアに到着する。従業員はシステムから指示通りに、商品をポケットの届いた順番に、中身を確認しつつ梱包していくだけでいいというわけだ。
ZOZOBASEつくば3のPocket Sorterは、約2万6000ものポケットが用意されており、仕分け能力は1時間あたり1万5000点になる。
新拠点に約100億円投資、30%の省人化を見込む
ZOZOBASEつくば3は、茨城県つくば市にある。
出典:ZOZO
ZOZOがZOZOBASEつくば3にかけた投資額は約100億円と、これは既存の拠点の約4倍の額にもなる。新拠点の構想自体は2020年から計画されており、半導体不足や輸入コストの高止まりを受けつつも、計画通り2023年11月に本格稼働を迎える。
こうした物流拠点に対する積極的な投資の背景には、「労働人口の減少」あると、ZOZO執行役員の田代将広氏は説明する。
ZOZO執行役員の田代将広氏。
撮影:小林優多郎
どの業界でも働き手の不足は課題になっている。少子高齢化が進み労働人口が減る中で、人がやるべきことと、そうでないことを区別し、システムに任せられることを検証・開発していくことが急務となっている。
t-sortやシャトル&サーバー、Pocket Sorterといった自動化ツールが担う複数のタイミングでの仕分けの作業はまさに「人間より機械でやった方が効率的が良い」ものなわけだ。
こうした設備の導入によって、ZOZOBASEつくば3は他の出荷機能のある拠点(習志野1、つくば1)に比べて必要な人員を30%削減しつつ、国内全体の商品保管能力を1.3倍まで拡大できるとしている。
また、現在は商品を取り出したり、畳む、箱に詰めるといった作業は人間の手で行なっている。これはZOZOが衣服やアクセサリー、靴といったサイズも硬さも異なる商品を扱っているゆえの対応となる。
機械に囲まれて働くZOZOBASEつくば3の従業員。
撮影:小林優多郎
ただ、こうした今は人間が担った方が合理的である部分も、技術の進歩によってだんだんと置き換わっていく。実際、EC大手のアマゾンでは、数百万個の商品のピックアップできるロボットアームの開発と導入をアメリカで進めている。
これに対し、ZOZOもそうしたロボットアームのような設備の導入は「最もフィットするものを検討している」(ZOZO担当者)と回答。具体的な特徴や導入時期は明らかにはなっていないが、さらなる省人化は常に念頭にあるようだ。
省人化と雇用のバランスも課題に
ZOZOBASEつくば3には、1Fと5Fの2箇所に休憩エリアがあり、それぞれ乃村工藝社がデザイン・設計・施工を担当する凝ったものになっている(写真は1Fのもので、デニム素材が随所に使われている)。
出典:ZOZO
一方で気になるのが雇用の問題だ。
企業は、省人化は進めなければ今後の成長は見込めない。ただ、同時に機械と働く従業員の労働環境の整備や雇用の維持に努める義務も負っている。
ZOZOBASEも、物流拠点という大規模な設備の性質上、地元(習志野とつくば)の雇用に大きく影響を与えている。
25日のZOZOBASEつくば3の見学会の説明は、5Fの休憩室で実施された。
撮影:小林優多郎
ZOZOBASEつくば3の場合は、約500名のアルバイトスタッフを新規雇用し、獲得状況は「順調に推移している」(ZOZO担当者)という。
ZOZOは省人化を進めていく中で、当然こうした「(直接雇用の社員ではないスタッフの)雇用の数は調整していく」(田代氏)方針だが、今いる働き手に対しては「休憩室や福利厚生を有意性のある、働きがいのあるものを広げていきたい」(ZOZO担当者)と述べている。