ロシアのウラジーミルにある流刑地。
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- 労働者が不足しているロシアでは、囚人労働への依存が高まっている。
- 強制囚人労働によって得られた収入は2022年、191億ルーブルにのぼった。
- 戦闘を避けたり、ロシアの経済状況から逃れるために、約100万人のロシア人が国外へ脱出している。
ロシアの労働者不足が深刻だ。不振にあえぐ産業を支え、人手不足を補うために、囚人労働への依存を強めている。
2022年、ロシアは強制囚人労働によって191億ルーブル(約305億円)を稼ぎ出したと見られると、モスクワ・タイムズはロシア財務省のデータを引用して報じた。これは158億ルーブルとしていたロシアの2021年の予測を上回るものだった。
2021年の概算によると、2023年には159億ルーブル、2024年には162億ルーブルの収入が見込まれている。ロシア連邦刑執行庁の2023年8月のデータによると、ロシアでは1700の組織で約2万6000人の囚人が強制的に働かされている。アメリカのシンクタンク、ジェームズタウン財団(Jamestown Foundation)によると、これは9300人の囚人が強制労働させられていた2022年の報告の2倍以上だ。
この引き金となったのが記録的な労働力不足だ。約100万人のロシア人が戦闘を避けるため、あるいはロシアの厳しい経済状況から逃れるために国外へと脱出している。
「有能な労働力の不足など、ロシア経済は厳しい構造的課題に直面している」とジェームズタウン財団のシニアフェロー、セルゲイ・スカンキン(Sergey Sukhankin)氏は10月23日のメモで指摘した。
「この問題を解決するために、クレムリンは囚人労働を国内経済の特定部門と統合しようとしている」
囚人労働の利用はロシアにとって新しいことではない。スカンキン氏によると、その歴史はソ連時代の「グラーグ(収容所)」制度にまで遡る。こうした収容施設では、囚人はソ連経済の中で最もリスクが高く、最も「儲かる」部門で働かされたという。
ロシアの現在の指導部がウクライナとの紛争を乗り切れれば、囚人労働は今後、ソ連時代のようなシステムに発展する可能性があるとスカンキン氏は付け加えた。
「近年ロシアで囚人労働の利用が増えているのは、単にパンデミックの後の経済的に問題を抱えた、あるいは戦争で傷ついたロシアの一過性のトレンドではない。ウラジーミル・プーチンがウクライナとの戦争を乗り切った場合、ロシアにおける囚人労働の利用はソ連時代と同様のシステムへと発展するかもしれない」とスカンキン氏は言う。
一方、専門家は戦争と西側諸国の制裁によって打撃を受け続けるロシアの未来について、厳しい警告を発している。制裁に苦しみ、"のけ者国家"との評判によって国際貿易から孤立することで、ロシアは今後10年で"破たん国家"になるという悲惨な予測もある。