37歳でミリオネアになった私は、「節約」に関する一般的なアドバイスのいくつかは間違っていると確信した

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本記事の筆者、クリス・レイニング氏。

Courtesy of Chris Reining

  • クリス・レイニング氏は一代にしてミリオネアになり、37歳にして職業生活から引退した。
  • レイニング氏は、財テクの専門家はよく生活防衛資金を確保しておくようアドバイスするが、自身の経験から、このアドバイスは緊急時に利用できるほかの貯金がない人にのみ有効だと主張する。
  • 出費を十分にまかなうことができる人は、余った現金を長期的により大きな利益が期待できる投資に用いたほうがいいと、レイニング氏は説く。

非常時、たとえば解雇されたり、腕を骨折したり、冷蔵庫が壊れたりしたときなどのために貯金が必要だという話を、誰もが聞いたことがあるだろう。そうした出来事は起きてしまうものだし、ときには同時に起こることもある。そのため、財テクの専門家は最大6カ月分の収入に相当する現金を確保しておくよう勧めることが多い。

しかし、このアドバイスは毎月の給料で生活がギリギリ成り立っている人向けだと言えそうだ。そのような場合、貯金をしておくのは賢い選択だろう。そうしておけば、クレジットカードで予期しない借金をして、15%の利子を支払うような羽目に陥ることはない。

一方、毎月たとえば退職金口座などに投資している人は、すでに十分な現金を確保していることになる。余分な貯金は必要ない。言い換えれば、必要なときに必要な場所にお金を動かすだけで、緊急時にも対応できるということだ。

保険を掛けすぎている

加えて、どうやら私たちは一般に、生活に悪いことが起こる可能性を高く見積もりすぎているようだ。不安は強い感情だ。コミック『ディルバート』の作者スコット・アダムスは「サメに襲われる話を読むと、誰もが自分のサーフボードに下にホオジロザメがいると考える」と述べている。

では、現実問題として、職を失う可能性はどれくらいなのだろうか? あるざっくりとした試算によると、およそ1.5%だそうだ。大型家電が故障する確率は? とても小さい。だからこそ、小売店はオプションとして延長保証などの保護プランを売ろうとするのである。経済学者のダニエル・カーネマンが著書『ファスト&スロー』でこう指摘している。

「人は予測される額よりもはるかに多くの保険をかけようとする――この傾向を利用して、保険会社はコストをカバーし、利益を上げている。人々は起こりそうもない災難に備えて必要以上の保護を買う。心配をなくし、安心を買うのである」

ここで少し違う考え方をしてみよう。道である人が近づいてきて、あなたにコインを見せ、賭けを挑んできた。「表ならあなたが私に1ドルを、裏なら私があなたに1ドルを支払う」多くの人はその賭けを受け入れるだろう。確率は半々で、掛金はたった1ドルなのだから。

では、掛金が1000ドルだったらどうだろうか? 確率はまったく変わらないが、負けた場合の損失は大きくなる。そして潜在的な損失が大きくなると、リスクを回避しようとする意識が働く。この心理が、人々が必要以上に保険に支出し、家電の保護プランに無駄遣いしてしまう原因になっている。

「合理的な判断」と「賢い選択」

誰もが、悪い出来事が起こる確率は低いと理解している。同時に、何か悪いことが起これば大きな出費につながることも知っている。だからそうした緊急時のために貯金をしておけと昔から言われてきたのであるが、裕福な人が裕福になれたのは、そのような古い常識に従ったからではない。彼らは投資を通じて豊かになった

お金を使って何かをしようと決断するということは、裏を返せば、それ以外のことをしないと決心することに等しい。これは「機会費用」と呼ばれている。たとえば、現金2万5000ドルを緊急時用として手元に置いた場合、それによって潜在的な利益を放棄することになる。この放棄した額が機会費用だ。

現金の山を確保しておけば、夜に安心して眠れるのかもしれない。それ自体は悪いことではないが、同じ額を30年間ずっと平均して10%の利益が得られる株式市場に投資しておけば、最初の2万5000ドルが40万ドルに成長するのである。

この37万5000ドルは、取り逃がすにはあまりにも大きい額だと思わないだろうか?これこそが合理的な決断というものだ。何かを放棄するとき、それがどれぐらいの価値をもっているのか知っておかなければならない。それが賢い選択につながる。私の場合、住宅の頭金をためる必要があったときだけ、緊急時用の貯金をしていた。そしてありがたいことに、不運に見舞われることはなかった。

人によって答えは違う

つまり、予想外のタイミングで大きな出費が必要になるリスクはとても小さく、投資した場合の潜在的な利益はとても大きい、ということだ。最悪の事態が起こって、それが経済的にどれほど厳しいものになるかを想像したくなる気持ちは誰にだってあるが、実際に起こる最悪の事態と言えば、ほとんどの場合で職を失い、いくつかの投資を精算する必要に迫られることぐらいだろう。

パーソナルファイナンスで重要なのは、給料の何カ月分を現金で確保しておく、などといった一般的なアドバイスをそのままうのみにすることではない。そのアドバイスが自分にも当てはまるかどうかを問うことが大切だ。だからこそパーソナルファイナンスと呼ばれるのである。とてもパーソナルで、人によって答えは違う。

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