アマゾンで注文した商品が、軽乗用車で届くようになるかもしれない。
撮影:小林優多郎
アマゾンは10月26日、個人事業主と業務委託契約を結んで商品を配送する「Amazon Flexプログラム」の参加要件を緩和すると発表した。
具体的には、従来では運搬するための車両として軽貨物車(いわゆる軽バン)が必須だったが、26日からは軽乗用車も対象となる。
なお、事業用ナンバープレート(いわゆる黒ナンバー)の取得や保険加入などの、車両の種類以外の要件は従来通り。
運送業界ではいま、規制強化に際してドライバーが足りなくなる「運送業界の2024年問題」が取りざたされている。アマゾンとしては、要件緩和でより多くのドライバーを確保する狙いがある。
2022年の規制緩和を受け対応車両を拡大
アマゾンが展開する物流ネットワークの一部は、個人事業主が担っている。
撮影:小林優多郎
アマゾンで注文された商品の多くは、ヤマト運輸や佐川急便、日本郵政といった提携する運送事業者以外に、アマゾンが独自に契約・管理する物流網を使って配達されている。
このうち、アマゾンが個人事業主と契約を業務委託契約を締結して、各地域の物流拠点「デリバリーセンター」から注文者までの間を配送する仕組みは「Amazon Flexプログラム」と呼ばれている。
Amazon Flexプログラムは日本では2019年から開始。普通自動車免許やスマートフォン、銀行口座を持っていることなど、各地域の運輸支局への届出が必要な事業用ナンバープレートが必要ということ以外は比較的誰でも参加しやすい参加要件になっている。
Amazon Flexプログラムの要件の一部。
撮影:小林優多郎
今回、その要件の中にあった軽貨物車(いわゆる軽バン)のみだった車両条件が軽乗用車、具体的には「車高が1700mm以上のワンボックスタイプもしくはスーパーハイトワゴンタイプ」「自動車検査証上の乗車定員数が4名以上で後部座席が倒せること」を満たす車両も使えるようになった。
これは2022年10月に国土交通省が発表した貨物軽自動車運送事業における軽乗用車の使用についての規制緩和を受けてのこと。
車両は、フルフラットになる必要はないが、ある程度の大きさの荷物が置ける必要がある。
撮影:小林優多郎
アマゾンでは既に「2023年の比較的早い時期」(担当者)から軽乗用車の活用を試験的に始めており、今回の本格展開に至るまでに国内50カ所以上あるうちの30カ所のデリバリーステーションで、数百人規模のAmazon Flexドライバーが軽乗用車を活用しているという。
アマゾンは具体的な目標値などを明確に示していないが、10月26日の説明会に登壇した運送事業の日本代表を務めるAwanish Narain Singh(アヴァニシュ・ナライン・シング)氏は「すべてのデリバリーステーションに広げていきたい」と展望を述べた。
より多様な個人がアマゾンの荷物を運ぶ
アマゾンロジスティクス代表のアヴァニシュ・ナライン・シング氏。
撮影:小林優多郎
アマゾンは軽乗用車の対応に合わせて、Amazon Flexで稼動する「時間」についても緩和している。
Amazon Flexでは、ドライバー側が配送できる時間を柔軟に選べる点も特徴になっている。従来は4時間や8時間といった単位で、ドライバーがアマゾンに事前に申請していた。
軽乗用車の対応に合わせ、この枠の最小単位として「2時間」も設定できるようになった。
シング氏は時間枠を短くした狙いについて「多様なバックグラウンドの人が従事できるようにした」と説明。
つまり「軽バンは持っていないが軽乗用車は持っている」ような層、つまり若者や主婦(夫)や、副収入を得たい人のような一般人に配慮した形になっている。
Amazon Flexドライバーの男性。
撮影:小林優多郎
説明会には試験導入時期に軽乗用車でFlexドライバーを始めた20代の男性も登壇。男性はバンド活動の傍ら、フードデリバリーに従事していたが、収入を上げるためにAmazon Flexプログラムに参加。
男性は注文を受けてから動くフードデリバリー業務と比べて「1日の荷物の量も決まっているので、安定している」と語った。