南極大陸東部にそびえるアドミラルティ山脈。
Andrew Peacock via Getty Images
- 南極大陸の氷の下の「発掘されていない風景」が発見された。
- かつての南極大陸は、今とまったく異なる姿をしており、気温もはるかに高かった。
- 研究者たちは、南極大陸の氷が溶けつつある今、この大陸の過去についてもっと知りたいと考えている。
何百万年も前の南極大陸は、今とまったく異なる姿をしていた。ほとんどが氷に覆われた大陸ではなく、川が縦横に流れ、氷河に削られた渓谷がある陸地だった。
しかし3400万年前から1400万年前の間に、氷床が大陸を覆うようになった。緑豊かな景観は、厚さ1600mもの氷床に埋もれてしまったとNBC Newsが報じている。
氷の下の景観は、今日に至るまでずっと隠されたままだった。これに関する研究論文が、2023年10月24日にNature Communicationsに掲載された。
「これは発掘されていない景観だ」と、氷河学者で論文の筆頭著者であるスチュワート・ジェイミソン(Stewart Jamieson)がAFP通信に語っている。
「誰も目にしたことがない」
熱帯気候の南極
ジェイミソンの研究チームは、南極大陸の東部沿岸から300km内陸に位置する、メリーランド州の面積より少し小さい約3万1000平方kmの地域を調査した。
太古のゆっくりと動く氷は、南極大陸の地形の多くを浸食した。しかしこの地域では、氷は同じダメージを与えるほど厚くはなかった。逆に、氷が地形を保存するのに役立ったのかもしれない。
「突然、その風景は時間の中で凍りついたようになった」とジェイミソンはLive Scienceに語っている。
研究チームは、これまで収集されてきた衛星画像と南極東部のラジオエコーサウンディング(RES)のデータを分析した。
RESとは、電波を使って氷の厚さを測定する技術であり、研究チームはこれを用いて、氷の下に隠れた山頂の高さや谷の深さを測ることができた。
南極の厚い氷床の下にある地形を表したイラスト。
Stewart Jamieson via Reuters
この地域はかつてどのような植生で、どのような種類の動物が生息していたのかなど、まだ解明されていないことがたくさんある。約5000万年前には南極大陸にヤシの木が生えていたことを示唆する研究が、2012年に発表されている。
「どこまで遡るかによるが、現在のパタゴニアの気候から熱帯に近い気候まで、さまざまな気候があったようだ」とジェイミソンはNBCに語った。
温暖化する南極大陸
気温の上昇によって南極の氷がどのような影響を受けるのか、それを理解するのは極めて重要なことだ。
10月半ばに発表された別の論文によると、各国が気候変動目標を達成したとしても、ウェスト棚氷が融解する可能性があるという。このシナリオでは、海面が5m上昇する可能性があるとガーディアンが伝えている。
ジェイミソンは、氷が溶けて今回発見された地形が姿を現すのは「ずっと先のこと」だと指摘した。
しかし、この地域とその氷が過去の温暖化現象にどのように反応したかを知ることで、現在の気候危機によって何が起きるのかを知る手がかりが得られるだろう。