アンデスの火山の頂上で発見されたネズミのミイラ。
Marcial Quiroga-Carmona
- 13匹のネズミのミイラがチリとアルゼンチンにまたがる火山の頂上で発見された。
- 哺乳類がこれほど標高の高いところに生息できるとは思っていなかった科学者たちは当惑している。
- 研究チームは現在、ネズミが極限的な高地で生き延びるための生理学的適応力を持っているかどうかについて研究している。
チリとアルゼンチンにまたがる3つの火山の頂上で、13匹のミイラ化したネズミが発見され、科学者たちは頭を悩ませている。なぜこの小さな哺乳類が、誰も寄せ付けないような高地に登ったのかが不明なのだ。
ミイラが発見されたのは標高約6000mの地点で、気温は氷点下を超えることがなく、空気中の酸素は海面で得られる酸素の半分以下で、岩、氷、雪でできた不毛の地形に強風が打ち付けている。
ネズミのミイラが発掘された3つの火山のうちのひとつ、サリン火山の山頂(標高6029m)。
Jay Storz
「(これらの)火山の頂上やその周辺は、特にネズミのような小型の温血動物にとって、極めて過酷な環境だ」と、このミイラの研究を率いるネブラスカ大学リンカーン校の生物学者、ジェイ・ストーツ(Jay Storz)はInsiderに電子メールで述べている。
見つかったミイラはキジリオオミミマウス(leaf-eared mice)で、標高の高い場所に生息することが知られている。
世界で最も高い場所に住む哺乳類とされるキジリオオミミマウス。
Marcial Quiroga-Carmona
このミイラに関する論文が、2023年10月23日付でCurrent Biologyに掲載された。
「このような極限的な高地は、以前は哺乳類がまったく生息できないと考えられていた」と論文に記されている。
ストーツによると、ミイラはこれらのネズミが何百年も、あるいはもっと前から極めて高い場所まで進出していたことを示している。この種のネズミは「何十万年もの間アンデス山脈の高地に生息していたことから、かなり長い間、火山の頂上に頻繁に出没していた可能性がある」という。
このネズミは今でも少数ながら生息している。研究チームは、その高地で生きているネズミと巣穴を発見した。
「まだ発見すべきことがたくさん残っている。今生きているネズミと山頂のミイラは、『世界一標高の高い場所に生息する哺乳類の物理的記録』だと言える」
これらのマウスには特殊な適応力があるのか?
ひとつめのミイラは、ストーツが偶然発見した。その後、研究チームは火山岩の隙間からフリーズドライされたネズミの死体を次々と発見していった。
チリ北部のプラル火山山頂でネズミのミイラを発掘するジェイ・ストーツ。
Mario Pérez Mamani
ミイラのほとんどは数十年前のものだったが、中には数百年前のものもあった。
これらをゲノム解析した結果、オスとメスが同数であり、近縁のネズミもいた。このことは、少数の個体がたまたま火山に登ったのではなく、火山の頂上で実際にコミュニティが形成されていたことを示している。
ネズミが山を登ることの利点として、ストーツが唯一考えられることは、火山の頂上には捕食者がいないということだとInsiderに語っている。
ネズミが山を登る理由とともに、彼らがそこでどうやって生き延びているのかについても、まだ謎に包まれている。
ストーツは山頂の環境を火星に例えながら、声明でこう述べている。
「よく訓練された登山家であれば、1日限りの登頂挑戦でこのような極端な標高にも耐えられるだろう。だが、ネズミが実際にそこで生活しているという事実は、我々が小型哺乳類の生理的耐性を過小評価していたことを示している」
研究チームは現在、標高が高くて酸素濃度の低い場所でも、これらのネズミが生き延びられる要因を探るため、標高の異なる生息地から集めたネズミを、実験的に低酸素にさらし、極限高度に生息するネズミに特有の生理機能が見られるかどうかについて調べている。
加えて、火山の頂上での調査も続けており、生きているネズミやそのミイラの痕跡も探し続けている。
「最も高い山の頂上であろうと、最も深い海の底であろうと、生命が存在するとは誰も思っていなかったような場所に生息している動物を発見するのは、常にエキサイティングなことだ」とストーツは語った。