クリスチャン・ベール主演のサイコ・ホラー映画『アメリカン・サイコ』の一場面。
Lionsgate Films
- 職場の有害な人物は往々にして、強力な組織に引き寄せられ、出世の階段を上るのが得意だ。
- そんな企業サイコパスがどのようにして自分の所属する企業を不安定にするかを専門家が説明してくれた。
- 採用方法の強化など、その影響から組織を守るために企業側ができることも紹介する。
彼らは計算高く、魅力的で、カリスマ性があるが、あなたの会社にはいてほしくない人材だろう。企業サイコパスとは、権力のあるポジションに引き寄せられる人々で、あなたの職場にも存在するかもしれない。
「企業サイコパスは、会社に侵入して昇進の階段を上ることに長けている」と、イギリスのアングリア・ラスキン大学(Anglia Ruskin University)経営学部准教授のクライヴ・ボディ(Clive Boddy)博士はInsiderに語った。
2023年10月18日から24日までイギリスで開催された「Chelmsford Science Festival」で、ボディ博士はアメリカの詐欺師バーニー・マドフ(Bernie Madoff)を死後に企業サイコパスと診断した最新の研究についてプレゼンテーションを行った。
ボディ博士によると、企業サイコパスは、一度出世すると、会社のために最善を尽くすことをやめ、自分の利益のために行動することが多くなるという。
サイコパスがいると、有害性の高い職場環境になったり、人材の入れ替わりが激しくなったりと企業にとって厄介なことになりかねない。その結果、「莫大な費用がかかるか、精神的苦痛を与えられるか、場合によっては両方になることもある」とボディ博士は話している。彼はそのキャリアの大半を企業サイコパスの研究に捧げており、このテーマを世に広めることに貢献したと評価されている。
ボディ博士は、ネズミ講詐欺師バーニー・マドフから、エンロン事件(Enron Scandal)のジェフリー・スキリング(Jeffrey Skilling)、2008年の経済危機を招いた銀行家など、過去数十年の間に何度も金融の大惨事が起きたのは、彼ら企業サイコパスが理由のひとつであると述べている。
あなたの同僚を見分ける方法
企業サイコパスは、しばしば周囲の人々を非難して不安定な職場環境を作り出す。
Motortion/Getty Images
オーストラリア心理学会(Australian Psychological Society)の調査によると、サイコパスの基準を満たす人は全体の人口に対しては約1%だが、企業の上層部では3%から20%がサイコパスであると推定されている。サイコパスかどうかは、その人が20の異なる特徴をどの程度体現しているかに基づいて診断される。
正式な診断がなくても、特に彼らの下で働いている人は、そういう人間かどうかを見分けられるかもしれないとボディ博士は言う。
企業サイコパスは、上司を騙して自分を優秀だと思い込ませ、それが通用した場合は手を抜いたり、さぼったり、あからさまな嘘をついたりする。そのため、通常はサイコパスの下で働く人々が最初に彼らの厄介な兆候に気付くのだという。
それは、他人の業績を自分のものだと主張したり、持っていないように見える資格を自慢したりするなど、彼らの信頼できない行動を見た時に始まる。そして次は、彼らが職場の同僚をいじめたり、人々を敵に回そうとする姿を目にするかもしれない。
基本的には「金銭と権力と支配力を獲得するために、完全に冷酷に」行動する人がいたら、その人は企業サイコパスでかもしれないとボディ博士は述べている。
そもそも採用を避けるために
企業のサイコパスは、映画『アメリカン・サイコ』の主人公のように物理的に危険な存在ではないかもしれないが、企業に損害を与える可能性がある。
Am Psycho Productions
ボディ博士は、採用方法をより厳しくすることは、将来的な企業サイコパス候補を排除するために十分な方法かもしれないと述べている。
企業サイコパスはしばしば経歴を偽造したり、自分のスキルを誇張したりするので、まず企業は候補者の資格や経歴を徹底的にチェックする必要がある。
また、採用の過程で、以前彼らの下で働いていた人にヒアリングして確認することも役に立つだろう。
ある企業では、企業心理学者を雇用していたという。その心理学者は社内で昇進を狙っているサイコパスを特定し、少なくともその人物が社内で昇進するのを阻止できたとボディ博士は話している。
だが結局のところ、企業は通常、社内のサイコパスについて公に議論することを避けているため、このような方法が実際にどの程度成功しているのかを判断するのは難しいとボディ博士は述べている。