スタートアップに転職するなら覚悟しておくべき「エグジット」の可能性。事業売却の余波で年収ダウンも?

その転職、間違ってない?

Luis Alvarez/Getty Images

スピード感、成長性、フラットで自由な雰囲気。それらを求めて「スタートアップ」への転職を希望する方は多数いらっしゃいます。IPOによって多額の利益(キャピタルゲイン)を得られるストックオプションに魅力を感じる方もいます。

しかし、IPOを目指していたはずが思いがけない方向へ進む可能性もあるという現実を、スタートアップに転職するみなさんは覚悟しておかなければなりません。

起業家がスタートアップを立ち上げる際には、成長した先の「エグジット(EXT)」を視野に入れています。つまり、「出口戦略」です。

スタートアップのエグジットには大きく2つの種類があります。

  • IPO(株式公開)
  • M&A(事業売却)

求人広告などでは「IPOを目指す」「IPOを予定」といったフレーズを見かけますよね。募集職種そのものが「IPO準備要員」であったりもします。

多くのスタートアップはIPOを目指しますし、転職する方もIPOを目標に会社の成長に貢献することをモチベーションとしていたりします。

ところが、IPOではなく、「M&A」に行き着くスタートアップもあります。これは、メンバー~マネジャークラスの社員にとっては「青天の霹靂」「寝耳に水」となることが多いものです。

今回は、「M&A」というエグジットについて、スタートアップへの転職を検討しているみなさんに知っておいていただきたいことについてお話しします。

「事業売却」の決断に至る事情はさまざま

エグジットが「M&Aで売却」となる場合、企業によって事情が異なります。

まず100%ポジティブにM&Aを選択するケースは少ないといえるでしょう。実際には、IPOを目指していたけれど資金調達がうまくいかず、他社に売却するケースが多く見られます。

資金調達に奔走するなかで、大手企業などから「数%の出資では意味がない。100%なら出資する」と提案され、受け入れる……といったようにです。

また、創業者自身が「自分の力ではこれ以上成長させられない」と限界を感じ、事業をさらに大きく育ててくれる会社に委ねるケースもあります。

これは「全体最適」を見極め、会社と社員たちの未来を考えたうえでの決断ですので、ある意味ポジティブともいえるでしょう。

森本語録

一方、起業の初期段階から積極的に売却を計画している起業家もいます。ある社長は「森本さんだから話すけどさ」と、社員たちには打ち明けていない本音を語ってくれました。「自分はもともと飽きっぽいし、いろんなことをやりたい。今の事業を軌道に乗せたら売却して新しいことにチャレンジしたいんだよね」と。

そんな考えがあることを社員たちに公言している社長も中にはいますが、非常にレアです。多くの場合、本音を語りません。

アメリカなどでは、事業売却は会社を成長させるための適切な戦略の一つとして捉えられることも多いのですが、日本では「起業家精神に反する」「社員への裏切り」「自分だけ大儲けしている」などと見られてしまうことを懸念し、考えはあっても内に秘めておくわけです。

ですから、スタートアップに応募したとして、面接で「いずれ売却する考えはありますか?」と聞いたところで、率直に答えてもらえることはまずないでしょう。

なお、「ファンドによるエグジット」というパターンもあります。

これは投資ファンドがスタートアップの株主になっているケースであり、ファンドが投資資金回収のためにエグジットを実行します。エグジットの形はIPOであったり売却であったりと、ケース・バイ・ケースです。

このケースでは、転職する時点でファンドが入っていることが分かっているため、覚悟はしやすいといえるでしょう。

事業売却による社員のメリット・デメリット

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