本記事の筆者、ジェニファー・ストリークス氏。
Jennifer Streaks
- 私は7年間、住宅を所有していた。そのことに誇りを感じていたし、家もきちんと管理した。
- しかし、その家を売り、賃貸住宅に住むようになってから、賃貸もお金の無駄遣いではないと気づいた。
- 家を持つことが資産を築く唯一の方法だと考えて、慌てて住宅所有者になろうとするのはやめたほうがいい。
一般的に、長期的には持ち家を所有するほうが賃貸よりも賢明だと考えられている。しかし、この流れに飛び込む前に、一度計算してみることをお勧めする。資産を形成するのに、必ずしも家を所有する必要はないし、家を所有することだけが資産形成の方法でもない。
賃貸は時間やお金の無駄ではない。そしてこの事実に気づく人が増えてきた。賃貸住宅斡旋サービスのレントカフェ(RentCafe)が、米国国勢調査局のデータをもとに行った調査の結果を今年の初めに発表した。それによると、年収15万ドル(約2240万円)以上の高所得で賃貸住宅を利用している人の数は2015年から2020年で82%上昇し、賃貸住宅を利用しているミリオネアにいたっては同期間で3倍に増えていた。
この数字は何を意味しているのだろうか? 私がこれまでもずっと言ってきたように、パーソナルファイナンスは人それぞれなので、経済的な成功を約束する絶対的な方法やルールは存在しない。ここでも同じで、家を持つことが資産形成の近道あるいは唯一の方法と考えないほうがいい。
私自身、7年間持ち家に住んでいたが、今は賃貸住宅で幸せに暮らしている。持ち家から賃貸に移り住んで気づいた点を、ここで紹介しよう。
1. 賃貸住宅には隠れたコストが少ない
家を買う決心をして、購入手続きを進めていたころの私は、頭金、引っ越し費用、そして当然、毎月の住宅ローンのことばかりを考えていた。しかし、いざその家を所有してみると、それ以外にもたくさんの、本当にたくさんの出費が生じた。
たとえば、住宅所有者保険、固定資産税、維持費や修繕費などだ。人々が話題にしないコストがかさんだ。毎月の住宅ローンだけではなかった。引っ越しするやいなや、深刻な雨漏りにも悩まされた。前の所有者がその家を売り逃げるために、紙とクリップとテープですべてをつなぎ止めていたのではないかと思ったほどだ。
そして今の賃貸住宅には、そのような「隠れたコスト」が存在しない。維持や修繕の費用もいらないし、固定資産税も保険もない。賃貸保険には加入しているが、かつての持ち家時代に支払っていた保険に比べれば微々たる額だ。
2. 賃貸住宅ならインフレを恐れなくていい
フェデラル・ファンド金利(FFレート)の上昇に応じて、住宅ローン金利も上がることがある。住宅ローン金利が上昇すると、同じ額のローンに対する毎月の返済額が増える。たとえば、金利が4%で、30万ドル(約4490万円)の住宅ローンなら、毎月の支払額は1432ドル(約21万円)になる。これが6%になると、ローンの額は同じでも、毎月の返済額は1799ドル(約26万円)だ。ローンの額が大きくなればなるほど、差額も大きくなる。
この増加により、売り手の販売能力と買い手の購買能力にも影響が生じる。賃貸に切り替えた私は、住宅市場での出来事を幸せに傍観できる立場にある。もちろんインフレの影響は受けるが、それはまた別の話だ。
3. 住宅の所有は成功の証ではなくなった
ゴーダディ(GoDaddy)がある調査を行い、1000人の中小企業オーナーに、彼らにとって何が「アメリカンドリームの達成」を意味しているのかと尋ねたところ、54%が「人生での幸福感」と、49%が「好きなことをする自由」と答えた。かつては成功の証とみなされていた「住宅の所有」は順位にして第4位、率にして45%だった。
私にとってのアメリカンドリーム? 自由に、柔軟に、快適に、そして経済的に安心して、今の暮らしを続けることだ。
繰り返すが、家を所有することや、購入しようとすることが悪いことだと言いたいわけではない。私自身、いつかふたたび家を所有しようと思っている。しかし、家を持つことだけが成功の証ではないし、資産形成の唯一の方法でもない。