ジャティン・ナラン氏(中央)はロンドン大学でコンピューターサイエンスの学位を取得。IT企業に勤務しつつ、副業の一つとしてアマゾンでの商品販売で大きな収益を上げ、経済的自立を実現したという。
Courtesy of Jatin Naran
ドロップシッピング(在庫を持たず商品を販売するネットショップやブログ運営)からFX取引まで、いくつかの副業に手を出してみたが、ジャティン・ナラン氏の貯金をついに底を突いた。
ロンドンを拠点に起業を目指していた彼は、数年前に経験した経済的苦境について、Insider編集部にこう説明した。
「20歳だった当時の僕は、4000ポンド(5000ドル、約75万円)の借金を抱えていました」
ナラン氏は日々の生活費に充てるためのローンを組み、ついには起業のために一度は辞めたIT業界の仕事にも復帰した。当時、彼はコンピューターサイエンスの学位を取得するために英ロンドン大学に通っている最中でもあった。
その数カ月後、パンデミックが発生した。
ロックダウン(都市封鎖)による行動制限を受け、ナラン氏の仕事も大学の授業もリモートになり、さまざまな副業を試してみる時間の余裕が生まれた。
アマゾンでの商品販売に挑戦してみようと決めたのはまさにそんな時期だった。
2020年末、ナラン氏は最初の商品を出品。以来約3年、深刻な損失を招いた失敗や大商いの実例含め、その経験を余すところなくソーシャルメディアで伝え続けた結果、TikTokのフォロワーは140万人、20万人以上のYouTubeチャンネル登録者数は24万人超まで増えた。
ナラン氏はいま収入源を複数化することに成功し、24歳にして経済的自立を実現できたと考えている。
アマゾンでの商品販売を柱に、ブランドとの直接取引、アフィリエイトリンク、YouTube広告、さらには(アマゾン活用法などの)コーチングプログラムも運営中だ。
また最近では、アマゾン出品者が高い収益性を期待できる商品を効率的に見つけ出すための支援ツール「ソーシオ(Sourcio)」のサブスク提供を開始した。
Insider編集部はナラン氏から銀行口座のスクリーンショットの提供を受け、過去数年間にわたって6ケタ(10万ドル以上)の収入を得ている事実を確認している。
さて、ナラン氏の説明によれば、アマゾンで商品を販売するに当たっては、金銭的もしくは時間的な負担の異なる3つの手法が想定される。
初期コストが数百ドル程度の「アービトラージ(裁定取引)」、大量仕入れを伴う「ホールセール(卸売り)」に加え、さらにそこから「プライベートブランド(PB)」の開発販売を目指すこともできるという。
以下では、ナラン氏にそれぞれの特徴や収益を上げるコツを説明してもらおう。
アービトラージ(裁定取引)
アマゾンで商品販売を始める最もベーシックかつローコストな方法は「アービトラージ」です。
利益を出すためには、Amazonマーケットプレイスで販売されている価格よりも安く商品を仕入れなければなりません。仕入れた商品をアマゾン経由で購入してもらえれば、差額が手元に利益として残るわけです。
地元の小売店やスーパーマーケットに行き、セール品の陳列棚をチェックします。そして、その場で(スマホなどで)Amazonマーケットプレイスでの販売価格と比較するのです。
もしその店のセール商品の方が安いようであればその場で購入し、Amazonマーケットプレイスに出品します。売れれば差額が利益になります。
同じ論理で、アマゾン以外のECサイトのタイムセールなど特集ページをチェックするのもいいでしょう。
アービトラージは、アマゾンを介した商品販売の基礎を学ぶのに最適な方法です。実際に商品を出品し、受注して梱包・発送するプロセスを経験できるので、本を読み込むより実践的に学べる上、初期コストもあまりかかりません。現物を数個購入することから始められるのでリスクも少ないです。
ホールセール(卸売り)
次のステップとして紹介したいのが「ホールセール」。商品を大量購入してAmazonマーケットプレイスで売りさばく、いわゆる卸売りです。
前項のアービトラージのように、自分でどこかから安い商品を探して来るのではなく、現に売られている商品を大量購入によって割引価格で仕入れ(ボリュームディスカウント)、そのまま売るだけです。
在庫を持つことになるため、初期コストが嵩(かさ)むのが難点。1000ドルあるいは1500ドルといった大きな資金が必要になりますが、アービトラージのようにセール品を四六時中探して回らなくてもいいのは魅力です。
ホールセールの場合、商品を選ぶ基準がものすごくシンプル。要するに、本当によく売れる商品を探せばいいのです。
ホールセールを中心に稼いでいた時代(と言ってもここ数年の話ですが)、自分が仕入れて売りさばいていたのは、どこにでもあるような商品ばかり。ティッシュペーパーでも液体洗剤でも、特定のカテゴリーに絞り込む必要は一切なく、安く仕入れて売れるものなら何でもOK。
この取引のための専門性は特に必要なく、アマゾンに馴染みの薄い初心者にも推奨できる手法です。よく売れる商品を探し、仕入れ、販売する方法を身につければ、そのプロセスを繰り返すだけで収益を上げられます。
そのプロセスの中で厄介な部分を挙げるとすれば、Amazonマーケットプレイスで販売した時に利ざやを得られるような(割引)価格で商品を提供してくれるサプライヤーを見つけ出せるかどうかです。
そうしたサプライヤーをつかまえるベストな方法は、ブランドに直接アプローチすることです。例えばヴァセリン(Vaseline)を扱いたい場合、自分ならユニリーバ(Unilever)のような製造元に直接コンタクトを取ります。取引が成立すれば、中抜き(卸売業者を介入させない取引)できますから。
ブランドと直接取引すれば可能な限りの最安値で商品を確保できます。それだけなく、ブランドとの関係を構築することで、そのうち価格交渉の余地も出てくるものです。
取引実績がそこそこできてきたら、ブランド側にこう持ちかけるのです。
「現在こちらは1個当たり1ポンドで購入していますが、いま毎月100個買っているところを10倍の1000個に増やすので、いくらかの割引価格を検討してもらえませんか?」
たいていの場合は(そうしたボリュームアップが前提であれば)値引きしてもらえるので、そうなればマージン(利幅)を5%あるいは10%増やすことができます。
ナラン氏は大量に在庫を抱えるホールセールでもビジネスを成功させた。
Courtesy of Jatin Naran
ブランドと直接コンタクトして取引することで、ある種の失敗を未然に防げる面もあります。実は、自分はホールセールに手を出して間もなく、その失敗で損失を出したことがあるんです。
最初に扱った商品は中国の大手ECサイト・アリババから(卸売りOKの商品だと考えて)購入したのですが、それがまずかった。
アマゾンに納品を終えて販売を始めたところ、最初の1時間だけで9件ほど売れ、「すごい!これで次の億万長者は自分だ」などと内心ほくそ笑んだのですが、1時間もしないうちにアリババから通知が来て、同社がブランドを所有する商品のため(アマゾンでの)販売は不可だと。
それで途端に残りの商品の売り先がなくなり、500ポンド(606ドル、約9万円)相当の不良在庫を損失として処理せざるを得ませんでした。
ホールセールのターゲット商品がプライベート(ラベル)ブランドでないことを確認するには、買い物客がショッピングカートにアイテムを追加する製品詳細ページの「購入ボックス」をチェックする必要があります。
そこで複数の出品者が表示されない場合、プライベートラベルである可能性が高いです。
プライベートブランド(PB)
最後に第3段階の「プライベートブランド」。始めるのに最も時間とコストがかかる方法ですが、得られる利益も最大化できます。
僕自身も2023年6月にプライベートブランドを立ち上げたばかりですが、先行投資は非常に大きな金額になりました。僕と同じ道を歩むなら、最低でも5000ドル(約75万円)は必要になると考えてください。それでも、実現すれば大きな儲けが期待できます。
それに、自分のブランドを立ち上げて販売できるのは何より大きなことです。ホールセールは既存のブランド商品を買って再販売するだけのビジネスにすぎません。結局、自分の商品ではないのです。
立ち上げに向けて学ぶべきことはいくらでもあり、それだけの時間がかかります。成功するためには、キーワード調査や広告の配置などの方法も学ばねばなりません。学ぶことが多すぎて圧倒されること請け合いです。
まずはホールセールから始めて、販売する商品を見つけ出し、アマゾンに在庫として納品し、売上を得るための基本的な流れやノウハウを学ぶことを強く推奨します。