不動産投資家のコディ・バーマン氏。
Cody Berman
主にカレンダーやスケジュール管理ソフトなどのデジタル製品を販売するフリーランサーだったコディ・バーマン(Cody Berman)氏は、自分の収入源がいつかは断たれるのではと心配していた。
そのおかげで不動産という常に需要のある資産クラスに興味を持つようになったのだと彼は話す。だが、住宅の価格高騰の可能性に関心を向ける他の多くの投資家とは違って、彼は家賃収入によるキャッシュフローに関心を抱いていた。つまり、彼はマージンに注目したのだ。
問題は、バーマン氏が育ったのはマサチューセッツ州の中心部で、そこでは住宅価格が高かったということだ。彼は50以上の物件を検討し、そして諦めるまでに少なくとも10件を直接見学したと振り返る。
「住宅価格が高すぎて、価格対キャッシュフローはめちゃくちゃでした」
彼は友人からコネチカット州とロードアイランド州に行ってみてはどうかと勧められた。どちらの州も自宅から自動車で行ける距離だったが、そこは自分が住んでいた地域よりも住宅価格が40%安いのに対して、賃貸料は20%しか安くなく、より良いマージンを得られることがわかった。
適切な地域を選ぶ指標
銀行は27万5000ドル(約4125万円、1ドル=150円換算)のローンを事前承認してくれたので、十分な予算を確保できていたとバーマン氏は語る。
だが物件リストをくまなく探し始めてみると、多くの家は書類上では素晴らしく見えたが、実際に訪れてみると安全性に難があったり、食に関しては砂漠だったりしたと彼は語る。物件を直接見ることは、選択肢を大胆に絞る上で役立ったという。
彼はApartments.comやZillowで取引可能な物件リストを検討し、賃貸料や過去30日間に賃貸契約が成立した物件を確認した。また、郵便番号で家賃の幅を確認できるWebサイトのRentometerも調査した。
最初に見つけた物件は、状態のよい3ユニットの集合住宅で、コネチカット州ウィンダム郡のすばらしい地域にあった。彼はその物件を、20%の頭金を支払って23万5000ドル(約3525万円)で購入した。バーマン氏は地階に住んで、メインユニット2戸を貸し出すことができた。つまり、彼は単に家賃を払わずに生活できるようになっただけでなく、月に約500ドル(約7万5000円)のキャッシュフローも手に入れたのだ。
「その地域は有望でした。昔ながらの工業都市のような感じで、あたりを歩いても安全に感じられた。私たちはそこに住んだこともありました。そして、ハウスハックのようなことをしたのです」とバーマンは語る。
「実際に暮らしていない土地の物件であっても、そこに行き、見学し、歩いて、1マイルをぐるりと回って安全だと感じられるかを確かめることです。周辺に食事ができるところはあるか。住人がきちんとした仕事を持っている土地で、活気のある場所だと感じられるか。地域で住人がベビーカーを押したり、ジョギングしたりしているか。そういったことですね」
バーマン氏はその地域の将来の経済成長の徴候となりうる指標に注意を払うことを勧めている。主な指標としては、高級コーヒーショップや従来型の商店などの大型チェーン店が新規出店したり既に存在しているかといったことだ。このような企業は、特定の地域に出店する前に綿密な市場調査を行う。こうした大企業に頼ってみるのは、良いアプローチだと彼は語る。反対に閉店はその逆の徴候になる。
バーマン氏はほかにも、ZillowなどのWebサイトで閲覧できる学校の評価や、商店まで歩いていけるかどうか、大都市に通じる高速道路や公共交通機関への近さを挙げる。交通の便がよければ、よりよい家賃収入を得ることができる。なぜなら、都市労働者は高所得者であることが多いからだと彼は付け加えた。
「だから、大都市圏から3時間以上離れた土地は購入しません。25〜50分ほど離れた土地を購入しています。これなら好きに行き来するには十分な近さですが、高すぎて手が届かないというほどではありません」
バーマン氏は他にも人口の変動、犯罪データ、学校、生活費、平均収入を調べるのに役立つツールがいくつかあると指摘する。そうしたWebサイトの1つがCity-Data.comだ。
バーマン氏は同じ手順を何度か繰り返しているうちに、17万ドル(約2550万円)の2ユニット住宅など、さらに安い住宅が見つかることもあった。バーマン氏は現在ではマサチューセッツ州に2ユニット住宅を1棟、コネティカット州とマサチューセッツ州に3ユニットの住宅を2棟持っており、Insiderが閲覧した賃貸借契約書によると、長期賃貸借用のユニット8戸で月に9300ドル(約140万円)を稼いでいる。
彼は最近、短期賃貸借にも着手し、ビジネスパートナーとともに物件を購入し、2戸を共同管理し始めた。9月にはこれらの物件で合わせて5520ドル(約83万円)を稼いでおり、その月の家賃収入は合計1万4820ドル(約222万円)になった。
安い物件から始める
アメリカの住宅ローンの30年固定金利の平均は10月27日の時点で約7.67%あたりを行き来していた。この2年間で2倍以上になっている。金利の支払いを抑える方法の1つは、より多くの現金で頭金を支払うか、もっと安い住宅を見つけてローンの額を減らすことだ。
連邦準備銀行のデータによると、第3四半期に販売された住宅の販売価格の中央値は43万1000ドル(約6465万円)だった。Insiderの計算によると、43万1000ドルの住宅を20%の頭金と30年固定の7.67%の金利で購入すると、月々の支払額は約2451ドル(約36万8000円)になる。同じ条件で20万ドル(約3000万円)の住宅を購入すると、月々1137ドル(約17万円)になる。これは半分以下の金額であり、支払額としてははるかに扱いやすくなるとバーマン氏は話す。
高い方の物件では金利の支払額の合計は約53万8000ドル(約8070万円)になるのに対して、安い物件では25万ドル(3750万円)だ。高価な物件を購入する余裕があるとしても、安い物件を選び、毎月の支払額を増やせば、元金を減らすことができる。その結果、ローンの完済は早まり、支払う金利は少なくなる。
家賃収入に空白があっても、月々の支払いが2倍の場合よりも簡単にカバーできるだろう。また、住宅を購入すればするほど、負うリスクも高まると彼は語る。安い物件から始めるほうがずっと簡単だとバーマン氏は話す。
「なぜなら頭金の支払額も少なく、毎月の金銭上のリスクも少なく、手頃な住宅の需要の方が高いおかげで賃借人の選択肢は増えるからです。高額の家賃を支払う余裕がある人は多くありません」
1%ルール
バーマン氏はキャッシュフローに重点を置いて投資している。だが他の投資家たちの間でよく見られるやり方は、価格高騰を狙うことであり、これは部分的には投機目的の行為だと彼は語る。彼はこうした戦略は推奨していない。特に一戸建て住宅に関しては。
例えば、大都市から約20分の距離の物件は現在でもすでに高すぎることが多いが、そうした物件を購入する人の多くは価値がこれからも上がっていくことを前提としている。それは結局、住宅ローンの支払額が増えるだけだと彼は語る。
「たとえ価格高騰中に貸し出す計画だとしても、そうした物件では優れたキャッシュフロー・マージンを実現することは難しいと思います」
彼は1%ルールにこだわる。このルールでは、物件が優れたキャッシュフローの投資となるためには、月々の家賃で物件価格の1%のリターンを得られなければならない。住宅ローンの金利が高ければ、これを達成するのは難しいだろう。だが同じ屋根の下に複数のユニットがあれば、より多くの家賃を集めることができる。また、複数ユニットについて1つの配管、1つの電気系統、1つの屋根を管理するだけで済むので、それぞれが戸建ての場合よりも効率的だと彼は言う。