あるファンドマネジャーは、国際株はアメリカの投資家から不当に見落とされていると述べている。
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エリアス・エリクソン(Elias Erickson)氏がナインティ・ワン・インターナショナル・フランチャイズ・ファンド(Ninety One International Franchise Fund)を運営し始めてからの2年2カ月で、彼はいくつかの異なる市場レジームで優れた実績を残した。
モーニングスター(Morningstar)によると、同氏の海外中心の大型成長ファンドは2023年にそのカテゴリーの上位9%に入り、そのインデックスが0.5%下落したのに対し、4.8%の上昇だった。2022年は12%前半で終え、順位は低かったものの、ベンチマークを3.5%上回った。
2021年8月以降は市場と経済でさまざまな変化があったが、エリクソン氏の実績は、彼の投資戦略と同様に不変だった。
「私たちがマクロについて考える場合、それは、適応性や脆弱性を考慮して多様な経済やマクロ経済環境に合ったポートフォリオを構築することです」とエリクソン氏はInsiderの取材に語る。
「そのため、私たちは毎年毎年ポートフォリオを再構築したり、変化するマクロの展望に対して再調整することはありません」
狙いは一流銘柄、ただし適正価格で
他の多くのマネジャーとは異なり、エリクソン氏はファンドに数十の銘柄しか組み入れない。彼のボトムアップの銘柄選択プロセスでは、候補となる銘柄を注意深く調べ、それがどのような経済的背景でも成長できる良質な事業かを確認する。
「当社は、それぞれの属性の閾値が非常に高い組み合わせを求めており、それが当ファンドの特性を際立たせています」とエリクソン氏は述べる。
「スタイル分析ツールを用いているか、他のツールを用いているかにかかわらず、それは経験則に基づいています。私たちは競合他社よりも統計的に有意で一貫した品質評価を行っているのです」
最初に、エリクソン氏は自分自身の眼で、投資先候補が他の同業他社と差別化されているかを確認する。彼はソフトウェアのコードでも、特許技術でも、あるいは数十年かけて構築されたネットワークによるグローバル企業であっても、ビジネスが持つ測定可能で永続的なメリットを求めている。
競合他社との差別化が十分に図れているかを判断したら、彼はその企業の債務負担と資本集約度を調べて、経済後退時にどのように対処できるかを判断する。
しかし、好調な企業を調べる最良の尺度はキャッシュフローだとエリクソン氏は語る。成長重視の投資家は企業の収益とユーザー基盤が増加しているかどうかを重視し、価値重視のマネジャーは利払前・税引前利益(EBIT)などの利益指標を優先するので、彼のアプローチは独特だ。
「当社は、本質的価値の尺度として1株当たりのフリーキャッシュフローに注目しており、それが時間の経過でどう推移するかによって、この機会が興味深いものかどうかが決まります」エリクソン氏は述べる。
「当社の哲学のさまざまな特質はすべて、キャッシュフローによって測定される本質的価値の根底にある進歩に対し、われわれの確信を高めることを中心に構築されています」
エリクソン氏が使用する二次的な指標には、企業の内部収益率 (IRR)やEBITまたはEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)に対する企業価値などがある。良いニュースすべてが織り込まれていないかを確認するためには、その銘柄の価格が、後にどれだけの現金や収益を生み出すかに対して公正であることを確認することが重要だ。
「重要なことは、良質なビジネスと美徳の組み合わせを見つけ、過剰な支払いをしないことです」
今行うべき8つの投資
国際株式は地政学的紛争にさらされるリスクが高いという見方が一般的であるため、アメリカを本拠とする投資家の多くは、国際株式を避ける傾向がある。
しかしエリクソン氏は、それはあまりにも大雑把だと考えている。外国株の指数は近年、S&P500に後れをとっているかもしれないが、海外にはポートフォリオを多様化しながらリターンを向上させる優れた投資機会が数多く隠されていると彼は言う。
「ホームバイアスを持っていて、アメリカを好む人々にとっても、競争構造、経済の構築方法などの面でアメリカ経済には国際的なビジネスがあふれています。したがって、完全な意味でアメリカ経済に参加するには、国際的な事業を所有する必要があるのです」
エリクソン氏は現在、一般消費財、生活必需品、ヘルスケア、情報技術の4つの分野の国際株が特に期待できると見ている。
このようなグループは良質な特徴を持ち、資本が少なく、外部資金や経済に依存しすぎていないとエリクソン氏は言う。市場のこれらの分野の企業は、自ら成長を生み出すことができ、多くの場合、予測可能な収益を享受できる。
エリクソン氏が好む銘柄の1つにエルメス(Hermes) がある。創業から186年の歴史を持つこのフランスの高級ファッション企業は垂直統合されたサプライチェーンを持っており、これは事業のあらゆる側面をコントロールできることを意味するとエリクソン氏は指摘する。加えて、同業他社に比べて不況の影響を受けにくい。
「同社のハンドバッグには多くの順番待ちリストがあり、顧客は上流階級の富裕層です」とエリクソン氏は言う。
「そのため、市場低迷時には典型的なラグジュアリー企業よりも守備的であるにもかかわらず、より広範な成長時にはすべて、また場合よってはそれ以上に成長するという、興味深い非対称性を生み出しています。エルメスは希少性と成長性という矛盾のバランスを非常にうまくとっているのです」
生活必需品やヘルスケアなどの市場の守備的なセクターも、製品やサービスに対する需要が通常は増減しないため、景気後退の中でもよく持ちこたえる傾向がある。 彼は特に、ヘルスケア分野の医薬品、医療機器、ヘルスケアサービスに関心を持っている。
エリクソン氏はまた、テクノロジー分野またはテクノロジー関連業界の3つの企業についても言及した。
彼の最大の保有株はドイツのソフトウェア企業SAPで、同社はエンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)製品の複数年転換アップグレードサイクルでサブスクリプション化をさらに推進している。氏は、この決定が今後数年間にわたってSAPに安定した売上をもたらすと考えている。
マスターカード(Mastercard)はエリクソン氏にとって2番目に大きい割合を占めているが、それは同社がニューヨークに本社を置きながら、収益の約3分の2をアメリカ国外で生み出していることによる。エリクソン氏は、クレジットカード・ネットワークには巨大な参入障壁があり、これは潜在的競合他社から隔離されていることを意味すると指摘した。 また、デジタル決済ブームが続いていることからも恩恵を受けることになると見ている。
最後に、半導体製造の大手TSMCは、高性能半導体で驚異の85%、すべてのチップでも半分以上を製造していることから、エリクソン氏のファンドの保有銘柄の上位10位以内に入っている。 比類なき障壁とあらゆる状況下の回復力により、TSMCは彼のポートフォリオに自然に適合している。
「注文がキャンセルされ、キャパシティに空きができると、そのキャパシティを確保するための待機リストができます」とエリクソン氏は述べる。
「そのため、何らかの困難に直面しても、運営上は大きな問題はない。これは、われわれが求めている回復力があることを物語っています」