アップルは10月30日(現地時間)に、新製品発表会をオンラインで開催した。主役となったのは新チップセットの「M3シリーズ」だ。
出典:アップル
アップルは10月30日(現地時間)、新しいチップセット「Apple M3」シリーズ3種と、それらを搭載したノートPC「14インチ/16インチMacBook Pro」を発表した。
予約は直販サイトなどですでに開始しており、出荷は11月7日を予定。ベースとなるモデルの直販価格(いずれも税込)は以下の通りだ。
14インチMacBook Pro
- M3(8コアCPU/10コアGPU)、8GBメモリー、512GB SSD……24万8800円
- M3(8コアCPU/10コアGPU)、8GBメモリー、1TB SSD……27万6800円
- M3 Pro(11コアCPU/14コアGPU)、18GBメモリー、512GB SSD……32万8800円
- M3 Pro(12コアCPU/18コアGPU)、18GBメモリー、1TB SSD……39万8800円
- M3 Max(14コアCPU/30コアGPU)、36GBメモリー、1TB SSD……53万8800円
16インチMacBook Pro
- M3 Pro(12コアCPU/18コアGPU)、18GBメモリー、512GB SSD……39万8800円
- M3 Pro(12コアCPU/18コアGPU)、36GBメモリー、512GB SSD……45万4800円
- M3 Max(14コアCPU/30コアGPU)、36GBメモリー、1TB SSD……55万4800円
- M3 Max(16コアCPU/40コアGPU)、48GBメモリー、1TB SSD……64万4800円
3nmプロセス採用の「Apple M3シリーズ」を採用
M3シリーズの概要。
出典:アップル
注目ポイントはやはり、新設計のチップセット「M3シリーズ」だ。M3は個人向けPCでは初となる3nmのプロセスを採用している。
M3シリーズには現状CPUやGPUのコア数、トランジスタの数の違う「M3」「M3 Pro」「M3 Max」の3つの仕様がある。
アップルによると、M3シリーズと従来のM1シリーズ(2020年発表)、M2シリーズ(2022年発表)と比べると、通常利用時に使用する高効率コアの性能は、M2シリーズの最大30%、M1シリーズの最大50%高速化したとする。高負荷時に稼働するパフォーマンスコアの性能は、M2に比べて最大15%、M1の最大30%高速化となっている。
リアルタイムにローカルGPUメモリーの使用量を制御する「Dynamic Caching」。
出典:アップル
また、GPUにおいては新しく「Dynamic Caching」(ダイナミック・キャッシング)というメモリー技術を搭載。タスクごとのメモリー使用割り当ての最適化によって、GPUの平均使用率を向上させて、より高い性能を引き出せるという。
アップルはDynamic Cachingによって「最も負荷の高いプロ向けアプリやゲームでのGPUの使用率とパフォーマンスが大幅に向上する」としている。
M1シリーズやインテル時代の機種と比べて性能アップが目立つ
MacBook Proシリーズは各種クリエイターや研究・教育分野などに必要な性能をサポートする。
出典:アップル
細かな理屈は置いておいて、具体的な利用シーンはどのように変わるのか。
正確な使用感は実機のレビュー記事が待たれるが、30日の基調講演でアップルが公開したいくつかのベンチマークから引用してみよう。
- 画像処理性能は各世代のMシリーズを搭載した16インチMacBook Proで比較すると、M3 Pro搭載機とM1 Pro搭載機を比較すると40%、M2 Pro機との比較で20%高速化。
- 「Cinema 4D」を使った3Dレンダリング性能は、M3 Max搭載機とM1 Max搭載機で比べると2.5倍、M2 Maxで2倍高速化。
インテルベースのMacBook Proとの性能比較。
出典:アップル
また、アップルは公式サイトで「以前のMacBook Proモデルと比較」として、より具体的な利用シーンでの性能比較を公表している。
ただ、これらの数値は主に2020年5月のリリースが最後となったインテルCPUベースのMacBook Proと比較したものだ。アップルとしては、現存しているインテルベースのMacBook Proユーザーを、自社設計の新しいAppleシリコンベースの新機種へと移行させたい狙いが強い点は留意しておく必要がある。
- Final Cut Proのレンダリング時間はIntel Core i7搭載13インチMacBook Proと比較すると、M3搭載機は7.4倍高速。
- Photoshopのフィルタと機能の適用時間は、Intel Core i7搭載13インチMacBook Proと比較すると、M3 Pro搭載14インチMacBook Proは2.9倍高速。
- DaVinci Resolve Studioのノイズ低減適用時間は、Intel Core i9、Radeon Pro 5600M搭載16インチMacBook Proと比べると、M3 Max搭載16インチMacBook Proは2.7倍高速。
13インチモデルは終売。14インチにM3搭載機が追加
新型MacBook Proの特徴。
出典:アップル
ちなみに、チップセット以外の新しいMacBook Proの特徴は基本的に従来の14/16インチのMacBook Proを踏襲している。
ディスプレイは高精細・高コントラストな「Liquid Retina XDR」を搭載し、ProMotionテクノロジーにより最大120Hz駆動が可能。
バッテリー持続時間は14インチモデルが最大12時間のインターネット閲覧(Wi-Fi利用時)、最大18時間のムービー再生。16インチモデルが最大15時間のインターネット閲覧(Wi-Fi利用時)、最大22時間のムービー再生と、M2シリーズ時代とほぼ変わらない。
新色となる「スペースブラック」はM3 Pro以上のモデルで選択可能。表面加工を改善することで指紋の付着が大幅に減るとしている。
出典:アップル
なお、今回の発表によってアップル直販サイトでは、唯一のTouch Bar搭載機となっていたM2採用の13インチMacBook Proが終売。その代わりに、14インチMacBook ProでM3搭載モデルが選べるようになった(従来の14インチ/16インチMacBook ProではPro以上のAppleシリコンが選べた)。
M3搭載の14インチMacBook Proもほかのモデルと性能以外の差は大きくはないが、外部インターフェイスが他モデルがThunderbolt 4(USB-C)端子が3つなのに対し、M3搭載機だと2つ、カスタマイズ可能なメモリーも最大24GBに絞られる点は注意したい。
また、今回新色となる「スペースブラック」もPro以上のモデルでないと選べない(従来通りのシルバーとスペースグレイは選べる)。
Appleシリコン発表から3年超が経過
新しいiMacの概要。
出典:アップル
アップルが公開している各種ベンチマーク結果を見ても、M2シリーズのMacBook Proを持っている人にとっては、大幅な性能向上とまでは言えないかもしれない。
主にターゲットとなるのはやはり、Appleシリコン登場から3年以上経って、まだ移行していないインテルベースのMacBook Proを使っているユーザーになるのだろう。
アップルは他にもM3搭載の一体型PC「iMac」を発表するなど、Appleシリコン搭載モデルを拡充していく方針だ。