資産運用は活況を呈しており、世界全体で約110兆ドル(約1.6京円)の資産が運用されている。
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- 資産運用とは、顧客の資産目標達成のためにお金を運用するビジネスだ。
- アセットマネージャーは、個人、政府機関、企業、機関投資家の資産を運用する。
- アセットマネージャーにはさまざまな種類があるが、多くのアセットマネージャーはより包括的に顧客へサービスを提供する。
資産運用は、投資の世界を変える成長著しいビジネスだ。アセットマネージャーはリスク管理と同時に顧客の資産拡大を目指して投資判断を下す。
資産運用では、資産の拡大と(顧客が定めた)適正なリスクの維持という2つが最重要課題だ。この手のサービスを提供するプロフェッショナルには、ウェルスマネージャー、公認投資助言者(RIA)、投資マネージャー、ポートフォリオマネージャーといった人々がいる。
アセットマネージャーの採用を考えているならば、その役割、運用資産の種類、自分の資産運用に合ったアセットマネージャーの見つけ方を知っておくと良いだろう。
資産運用とは何か?
通常アセットマネージャーは、富裕層、企業、政府または機関投資家といった特定の顧客に対してサービスを提供する。たいていの場合、投資家は自分だけで行うよりも幅広い分散機会が得られる。独立系のアセットマネージャーもあれば、銀行や資産運用会社のような金融機関のために働く者もいる。
アセットマネージャーが運用するのは次のような金融資産だ。
- 株式
- 債券
- コモディティ
- 投資信託
- インデックスファンド
- プライベート・エクイティ
- ヘッジファンド
- マネージド・フューチャーズ
- 不動産
資産運用の仕組み
資産運用のプロセスはマネージャーによって異なるが、いくつか共通する要素がある。アセットマネージャーはまず、顧客と話し合い、顧客のリスク許容度を精査し、運用資産の種類や金額を確認する。また、財務計画を立てて顧客の資産目標達成に向けた道のりを協議する。
口座を開設したら、アセットマネージャーは次に市場動向や企業が発行する財務諸表を読み、購入する証券を特定する。購入後は運用成績の悪い証券を見込みのあるものに入れ替えながら、口座を維持する。
アセットマネージャーとは何か?
アセットマネージャーにはさまざまな種類があるが、顧客の現金や証券を管理、維持および監督するために顧客に雇われた専門家のことである。また多くのアセットマネージャーはより包括的に顧客へサービスを提供する。
「我々自身は、会計士、弁護士またはファイナンシャル・プランナーではないが、一般的には、顧客のためにこれら専門家との関係を調整する役割を果たすことが多い」とヴィラ―・アンド・カンパニー(Villere & Co.)のパートナーでポートフォリオマネージャーのラマー・ヴィラ―氏は言う。
証券取引委員会(SEC)や活動する州に登録するアセットマネージャーには、フィデュシャリー・デューティー(受託者責任)がある。つまり、アセットマネージャー自身の利益ではなく、顧客の最善の利益になるよう行動することが法的に義務付けられているのだ。
「人々は金融サービスに対して大いに不信感を抱いている」と話すのはパイオニア・ウェルス・マネジメント・グループ(Pioneer Wealth Management Group)のウェルス・アドバイザー、ニコル・ルノー氏だ。「(フィデュシャリー・デューティーのある運用会社を使えば)顧客は最善のアドバイスを得られるので、そうした不信感を払しょくできる」
アセットマネージャーを採用する際には、フィデューシャリーとして活動していることを確認することが重要だ。肩書だけで決めつけてはいけない。
アセットマネージャーの種類
アセットマネージャーには以下のようにいくつか種類があり、知っておくと役立つ。
- 公認投資助言者(RIA): 資産運用残高が1億ドル(約140億円)を超える場合には、RIAはSECに登録しなければならない。RIAの報酬は、資産総額の一定割合か定額である。
- 投資ブローカー:投資ブローカーは投資仲介者としての機能を果たす個人または企業のことである。投資ブローカーの手数料は、各株式取引の手数料、管理費、独自商品の販売などである。投資ブローカーにはフィデュシャリー・デューティーはない。
- ファイナンシャル・アドバイザー:ファイナンシャル・アドバイザーは顧客のために証券を売買できるほか、保険や税務といった事柄について推奨を行う。ファイナンシャル・アドバイザーはフィーベースかフィーオンリーの場合があり、フィデュシャリー・デューティーについてもある場合とない場合がある。
- ファイナンシャル・プランナー:ファイナンシャル・プランナーは顧客の資産についてより包括的な助言を提供するファイナンシャル・アドバイザーの一種であり、貯蓄、資産管理、投資などについても相談に乗る。報酬も時間給、固定給、資産総額の一定割合などさまざまだ。
- ロボアドバイザー:ロボアドバイザーは、専門の投資マネージャーよりも手頃かもしれない。ロボアドバイザーは顧客の投資スタイルや資産目標に関する情報を収集し、ほとんど人の手を介さずに、アルゴリズムを使って顧客の資産を運用する。最高のロボアドバイザーは、複数の投資オプションや投資教材を提供する一方、手数料は低い。
また、資産運用会社(AMC)に任せることも可能だ。資産運用会社は、投資家が購入できる投資信託や上場投資信託(ETF)のような合同投資ファンドを設立する。これらは上場ファンドのこともプライベート・ファンドのこともあり、プライベート・ファンドの場合は一般的にリスクが高く、規制は緩く、購入できる投資家が限定される。資産運用会社は通常、富裕層や機関投資家に対して、証券口座や証券担保ローンの提供、デビッドカードやクレジットカードの管理を行う。これら口座に預託された資金は、リターン向上のためにマネー・マーケット・ファンド(MMF)に置かれることが多い。
その他の資産運用
資産に価値があれば管理する必要が生じる。金融以外にもいくつか資産運用の種類がある。
- デジタル資産管理(DAM):利用者が写真やプレゼンテーションのようなデジタル資産を整理、保存、共有できるデジタルプラットフォームやソフトウェア。
- 固定資産管理:利用者が機械、コンピューター、建物のような固定資産を追跡できるシステムで、これにより有形資産をより効果的に運用できる。
- IT資産管理(ITAM):利用者がソフトウェア、ハードウェア、コンピューターのようなIT資産を活用、監督および処分できるシステムで、これら資産が適切に機能しており、常に最新のテクノロジーが維持されるようにする。
- 企業資産管理:企業が機械や装置のような有形資産のメンテナンスを監督できる一連のプロセス。
- インフラ資産管理:原子炉や公共上水道など重要なインフラ設備の保守管理を追跡するツールと戦略。
資産運用のコスト
アセットマネージャーの報酬体系はまちまちなので、採用前にコストがいくらなのか必ず確認しよう。大半のアセットマネージャーは運用資産の一定割合を報酬として受け取る。一般的には運用資産の1~3%だが、口座で管理する資産の数によって、それよりも高いことも低いこともある。
また、取引ごとに売買委託手数料がかかることもある。例えば、売買委託手数料が無料のオンライントレーダーもあれば、取引当たり5~50ドルかかるところもある。
また、ロボアドバイザーは運用資産の一定割合を手数料として徴収する。ベターメント(Betterment)やウェルスフロント(Wealthfront)のような多くのロボアドバイザーの手数料は年間約0.25%だ。だが、多かれ少なかれ、プラットフォームや口座の種類によって異なる。
その他一般的な報酬体系は以下の通りである。
- 資産運用報酬
- 財務管理報酬
- 管理報酬
アセットマネージャーには共通の報酬体系はなく、実際のコストはマネージャーごとに異なる。
資産運用に関するよくある質問
アセットマネージャーは何をするのか?
- アセットマネージャーはリスクを管理しながら資産を増やすために、顧客の現金と証券を管理、維持および監督する。アセットマネージャーにはRIA、ファイナンシャル・アドバイザー、ファイナンシャル・プランナー、投資ブローカーまたはロボアドバイザーも含まれることがある。
アセットマネージャーの収益構造は?
- アセットマネージャーは資産運用残高に対する報酬、売買委託手数料、定額報酬、管理報酬等さまざまな報酬を通じて収益を上げる。どのアセットマネージャーも同じ報酬体系ではなく、コストはマネージャーによって異なる。
世界最大のアセットマネージャーは?
- ADV Ratingsによると、2023年6月30日現在、世界最大の資産運用会社はブラックロックである。ブラックロックの資産運用残高は合計9兆1,000億ドル(約1,274兆円)で、時価総額は1,040億ドルに上る。第2位がバンガードで、資産運用残高は7兆6,000億ドル(約1,064兆円)である。
アセットマネージャーを採用するべきか?
自分の資産の扱いに苦慮しているならば、アセットマネージャーは資産を整理し増やすのを手助けできる。だが、アセットマネージャーがあなたの味方であることを確認しよう。SECのウェブサイトを検索して、アセットマネージャーがSECに登録したフィデューシャリーであるかチェックしてみよう。
また、アセットマネージャーに対して裁判所から判決や命令が出されていないことも確認できる。最後に、報酬を払い過ぎないよう、契約を結ぶ前に報酬について協議しよう。数十ベーシス・ポイント(bp)多く報酬を支払うだけでも、長い目で見れば大きなコストになりうるのだ。