ハロウィン当日の渋谷。2023年は『異例づくし』となった。
撮影:土屋咲花
2023年10月31日。新型コロナ感染症の感染症法上の位置づけがインフルエンザと同じ「5類」に移行してから、初めてのハロウィンを迎えた。
例年、ハロウィン期間に多くの人が集まる渋谷。区は、JR渋谷駅ハチ公口前や渋谷センター街に出した広告などで「渋谷はハロウィーンイベントの会場ではありません」と、渋谷に来ないように呼びかけてきた。また恒例となった路上飲酒の禁止に加えて、安全対策として10月28日から11月1日までの間、ハチ公像の周辺を封鎖するなど例年より厳しい態勢を敷く“異例づくしのハロウィン”となった。
果たして、徹底した対策に効果はあったのか。ハロウィン当日の渋谷を歩いた。
午後8時:人はいるけれど……
午後8時頃、渋谷センター街の様子。道の中央に警察官が並び、右側通行を促していた。
撮影:土屋咲花
渋谷センター街で通行人を誘導する警備員。
撮影:土屋咲花
午後8時ごろ、渋谷のスクランブル交差点に向かった。
人通りは多いが、仮装姿の人はそれほど多くない。仕事帰りの会社員や、友人同士で買い物に来ていた若者も多く、この時点ではハロウィン目的の人の方が少なそうに見えた。
そのままセンター街に進むと、雑踏事故防止のためか道の中央に柵が設けられていた。周辺には警視庁の警察官が何人も立ち、ホイッスルを鳴らしながら右側通行を呼びかけている。
「右側通行でお願いいたします」「立ち止まらずにゆっくりと歩いてください」
他の道路には柵こそないものの、中央に警察官が立つことによって同様の対策が取られていた。とはいえ、歩けないほどの人出ではない。
センター街に入ると、仮装姿の人が目立ち始めた。アニメや映画のキャラクター、着ぐるみを来た人、被り物や耳カチューシャだけの控え目な人…。仮装姿の人たちは互いに声をかけ合い、写真撮影を楽しんでいた。
仮装して渋谷を歩いていた女性。
撮影:土屋咲花
時折、仮装姿の人たちの撮影で人だかりができることもあったが、すかさず近くで警備する警察官が「移動をお願いします」「止まっての写真撮影はやめてください」と声を掛ける。こうした人だかりはすぐに解消された。
午後9時過ぎ:一方通行が強化される
午後9時過ぎのスクランブル交差点。一方通行体制が敷かれ、思いのほかスムーズに通行できた。
撮影:土屋咲花
人気を集めていたスパイダーマンの仮装をした2人。他のハロウィン参加者や通行人との写真撮影に引っ張りだこだった。
撮影:土屋咲花
午後9時ごろ、仮装した人たちが増えてきた。
渋谷センター街の入口周辺に人が滞留し始めたが、警察官が柵を増設。JR渋谷駅からセンター街方面にスクランブル交差点を渡った人は、109方面には曲がれず、そのままセンター街に突入せざるを得ないかたちになった。
ハロウィン参加者からは「全然Uターンできない」など戸惑いの声も上がっていたが、この対策によって人流はスムーズになった。交差点は誘導がある分、普段の混雑時に比べても歩きやすいほどだった。
センター街を抜けて、渋谷モディやPARCO方面にも足を延ばしてみた。
ここまでくると、仮装した人たちは少なめだ。交差点には警察官が配置されているが、スクランブル交差点やセンター街と違ってけたたましくホイッスルを鳴らすこともない。行き交う人も静かに通行していた。
モディやパルコの入口周辺は、「立ち止まらないで」と言われて歩き疲れた人たちが座り込む休憩スポットになっていた。
スペイン坂の様子。思いのほか閑散としていた。
撮影:土屋咲花
スペイン坂も覗いてみた。道幅の狭い坂道で、人が密集したら危険な場所だが、ここも人はそれほど多くなかった。タピオカミルクティーで知られる「ゴンチャ渋谷スペイン坂店」には仮装した人たちが続々と入店し、甘いドリンクで疲れとのどの渇きを癒していた。
今年も渋谷区はハロウィン期間中の路上飲酒を禁止し、周辺のコンビニ店や量販店ではアルコールの販売を自粛した。参加者が手にしていたのは前述のタピオカやエナジードリンクが多かったが、禁止区域外の店で購入したとみられる缶チューハイを飲む人もちらほら見かけた。
路上飲酒をしたとみられるお酒の空き缶もあった。写真はMIYASHITA PARK入口。
撮影:土屋咲花
午後11時過ぎ:終電を前に、一部方向からはスクランブル交差点に進入できなくなる
午後11時20分ごろ。終電で帰る人たちの混雑を避けるため、交差点に進入せず駅へ向かうルートに誘導した。
撮影:土屋咲花
午後11時過ぎ。終電も近くなったころ、道玄坂からJR渋谷駅へ向かってみたところ、スクランブル交差点の手前にある「ラッシュ渋谷駅前店」の前に警察官が2人立ち、テープを持って道をふさいでいた。
渋谷駅へは迂回して向かうように呼び掛けている。帰宅する人はスクランブル交差点に進入させず、「渋谷に来た人」と「これから帰る人」を混在させないことで人の流れをスムーズにする狙いだったようだ。
実際、それほど人出が多くなかったこともあってか、終電間際の渋谷駅周辺は比較的落ち着いた様子だった。
一方で、宇田川交番近くの井の頭通りでは、バイクがタクシーに追突する交通事故が発生。タクシーはリアウインドウが割れ、路上にガラス片が散乱するなど現場周辺は一時騒然とした。
交通事故でリアウインドウが割れたタクシー。
撮影:土屋咲花
午前0時過ぎ:混雑はほぼなくなる
午前0時過ぎ。数時間前までにぎわっていた場所も閑散とした。
撮影:土屋咲花
上記写真とほぼ同じ場所の、午後9時半ごろの様子。
撮影:土屋咲花
午前0時を過ぎると、センター街の一部やダンスクラブ周辺を除いて人が減ってきた。西武渋谷店がある井の頭通り入口付近では、午後9時ごろには仮装した人たちの撮影スポットになっていたが、ほとんど人がいなくなっていた。センター街の入口も、柵が一部取り払われたようだった。
この時間帯になると、ビニール袋とトングを手にしてごみ拾いをする人の姿も目立ち始めた。
結局人は来たけど…
柵が設けられ、一方通行になった渋谷センター街。
撮影:土屋咲花
警察官や警備員が、強い口調で移動を促す場面もあった。
撮影:土屋咲花
渋谷区などが事前に「来ないで」と呼び掛けていた2023年の渋谷ハロウィン。だが結局、仮装した人たちは少なからず集まっていた。
ただ、センター街で近くを歩いていた通行人からは「全然人おらんやん!」という声も聞こえ、確かにコロナ明けのハロウィンとしては、集まった人の数は少ないと感じた。
交通規制も功を奏したのか、現地を歩いている限りでは大きなトラブルは見かけず、歩行に困ることもあまりなかった。渋谷区や警察などによる「厳戒態勢」は、一定の効果を上げたといえる。
来年以降も今回のような“整然としたハロウィン”が続くのか。渋谷区の判断も注目されそうだ。