1997年の創業以来、日本を代表する金融機関をテクノロジーの側面から支援してきたシンプレクス。働く上で社員と共有している価値観の一つに「プレーヤーであれ」がある。
日本企業では一定の年数を重ねると、昇格や昇給の評価基準としてマネジメントスキルを課せられることが多い。
しかし、シンプレクスでは、部下の有無に囚われず、特定分野の卓越したプロフェッショナルとして活躍する仕組みが整っている。スペシャリスト、マネジメントのそれぞれで活躍する二人の話から、シンプレクスが実践する働き方の多様性を紐解いた。
マネジメント職かスペシャリスト職か。自分の強みや働き方を加味して選べる
長らく終身雇用が続いた日本企業。その名残もあり、年功序列や在籍年数の長さが考慮され、一定の経験を積んだ後は、マネジメント能力が昇給、昇格の条件とされることが多かった。
最近ではジョブ型雇用も注目されており、専門性をもったスペシャリストを重視する人事制度も散見されるが、まだ主流とは言い難いだろう。そんななか、シンプレクスは早くから、多彩なキャリアプランを選び、成長できる仕組みを整えてきた。
具体的には、「戦略コンサルタント」や「UI/UXスペシャリスト」、「数理工学エンジニア」など、特定の技術を究めるスペシャリスト職、または、「シニアプロジェクトマネージャー」といったマネジメント職のどちらかを自らの意思で選び、道を究めることができる。
環境や状況に応じて、キャリアチェンジすることも可能だ。スペシャリスト職の場合、なかには一人の部下も持たずして、最高の職位に到達した社員もいるという。
2010年に新卒で入社した望月英希氏は、自らのキャリアをマネジメント職に見出した。現在は、執行役員として証券・銀行系ホールセール事業を担い、キャピタルマーケット向けのプロジェクトを統括している。
望月英希(もちづき・ひでき)氏/シンプレクス 執行役員。2010年に新卒でシンプレクス入社。ホールセール向け株式トレーディングシステムのプログラマとしてキャリアをスタートし、案件・保守リーダー、PMと徐々にマネジメントのキャリアを歩む。その後は株式領域に加えて証券会社のホールセールビジネス全般に対するソリューションを担当し、現在は証券・銀行系ホールセール事業の責任者を務める。また、PMコンピテンシーメンバーとして、社内の大規模プロジェクトのレビュアーも担当。2022年に執行役員就任。
「シンプレクスの新入社員は、全員がエンジニアからスタートします。私もホールセール向け株式トレーディングシステムのプログラマとしてキャリアをスタートさせました。当初からマネジメントが得意なタイプだと自覚していたので、3年目頃には案件・保守リーダー、7年目にはプロジェクトマネージャーと徐々にマネジメントロールへと移行していきました」(望月氏)
2009年に中途入社した森川穣氏は、最高職位である「エグゼクティブ・プリンシパル」。技術専門組織をリードする立場で、スペシャリストとして現場でも難易度の高いシステム開発に携わっている。
森川穣(もりかわ・じょう)氏/シンプレクス エグゼクティブ・プリンシパル。大学卒業後、スタートアップでのCTO職を経て、転職後は一貫して金融システム・ソリューションのコアを開発。技術難易度の高い課題の解決に強みを発揮し、技術・業務の両方の観点から、あるべきサービスデザインを考えプログラミングしたシステムは、高いパフォーマンス・拡張性を備える。また、SDコンピテンシー(システムデベロップメントのスペシャリストを育成する横串組織)メンバーとして複数の大型プロジェクトのアーキテクチャをレビューしている。
「入社1年目は証拠金取引のプラットフォームの開発にプログラマとして、2年目からは金融機関向けのトレーディング・リスク管理の開発に携わっています。その中でも、最も重要なコア部分だけの開発に携わっていました。
コア部分を開発したら、次のプロジェクトに移り、そこでもまた、コア部分を開発するといった形です。現在は、スタッフエンジニアとして、クライアントの課題に対してどういった技術を使うのか相談に乗ったり、問題解決に従事したりしています」(森川氏)
スタッフエンジニアは、米国で発刊された『スタッフエンジニア マネジメントを超えるリーダーシップ』で提唱された職種。マネジメント職ではなく、最高の技術を持って現場で働くスペシャリストのことだ。
シンプレクスは、早くからこの概念を導入していたことになる。森川氏自身も「マネジメントは好きじゃないんです。技術が好きだし得意なのだから、そこで実力を発揮したほうが、みんなハッピーになれる」と語り、こう続けた。
「日本企業では、マネジメントを前提に昇給や昇格が組まれることが多い。しかし、シンプレクスは現場の技術者でも年俸2000万円を超えるケースがあります。
これほどの金額は事業会社系でもメガベンチャーでもあまり存在しません。個人的には、この会社を選んで良かった理由のひとつです」(森川氏)
受注方針や教育体制、企業風土が多彩なキャリア選択と社員の成長を促す
シンプレクスで働くと、多彩なキャリアを選べて成長にもつながる。それを支えているのが、三つの特徴だ。一つ目は、仕事への取り組み方。シンプレクスは、クライアントと直接取引を行うプライム受注を徹底し、下請けへの丸投げも行わない。
「マネジメント職のキャリアを積もうと思っている社員にとっては、クライアントの意見をダイレクトに聞けて、こちらの想いも直に伝えられる環境は大きなメリットです。クライアントにもプロジェクトにも、直接触れないと問題の本質は理解できない。そこに魅力を感じてくれる中途社員は少なくないですね」(望月氏)
スペシャリスト職に関しても森川氏は、「直接取引のプライム受注のおかげで、若いうちから重要な案件に触れることができ、さまざまな経験を積ませてもらえます」と同意する。
二つ目の特徴は、目指す職種に合わせて若手を育成する仕組みだ。「マネジメント職で最も学びとなるのは、現場におけるOJT」と語る望月氏。
そこに加えて、「ユニット・リーダー制」を取っており、優秀な先輩がメンターとして一人ひとりにつき、場合によってはデイリーで1on1を実施しながら、仕事に対するスタンスから共有していく。
さらに、人材育成支援を推進するための横串組織「コンピテンシー」が存在し、研究開発や技術研鑽、人材育成を行っている。 その中の一つである部署横断組織「SD(システム・デベロップメント)コンピテンシー」が、スペシャリスト職の育成に対して有効に機能しているという。
「SDコンピテンシーは、技術に特化したキャリアを希望する社員のなかから、特に高い技術力が評価されたメンバーから選抜され、全エンジニアの10%ほどで構成されています。ここに参加する若手・中堅のエンジニアは、ベテランエンジニアから1on1の面談を受けられたり、相談に乗ってもらえたりします。
シニアメンバーから今必要なスキルや参加すべき開発プロジェクトなどのアドバイスを受けられるので、大きな学びと成長につながります」(森川氏)
三つ目の特徴は、キャリアパスの多様性を後押しする企業文化。その根底にある思想が、フィロソフィのひとつ、「Mutual Respect(ミューチュアル リスペクト)」。チームとして最高の成果を出すためには、様々な分野に尖った才能の結集が求められる。
「Mutual Respect」は、謙虚な姿勢で他者の持つ才能を認め、他者から学び、お互いに尊重しあう姿勢である。その結果、生まれたのが、個々のポテンシャルを伸ばし、その個性を活かす企業風土だ。
「個々の才能を素晴らしいことだと考え、尖った人材を大切にする。なぜなら、新しい価値を生み出すには、尖った人材も必要だからです。この考え方に基づき、シンプレクスでは個性豊かな尖った人材の採用も行っています。これも他社との差別化につながっている部分です」(望月氏)
自らもスペシャリストとして尖った仕事を続ける森川氏は、「尖った人材とはいえ、最初のフィルタリングで、チーム作業ができる人材かどうかを見極めています」と語る。
見極めるポイントは、シンプレクスの行動規範である「5DNA」に共感できるかどうかだ。尖った人材が揃っていても、目指すべき方向は同じ。だからこそ、個の力を最大化できて、シンプレクスの強さへとつながっている。
そして、尖った人材による個の力を最大限に活かすために、もう一つ重要な考え方がある。それは、タイトルとロールのすみ分けだ。タイトルとは職位、ロールとは役割のことである。個の力を引き出すには、年次や職位に関わらず、意見を交わせる環境が必要。シンプレクスでは、役割に職位が紐付いていない。
「シンプレクスには、『全員がプレーヤーであれ』という価値観があります。例えば、新しいプロジェクトに本部長がプログラマとしてアサインされたとします。その場合、プロジェクトマネージャーよりも職位は上です。
しかし、役割上、プロジェクトマネージャーは忖度せずに指示を出す。むしろ、遠慮する方が悪です。それは、現場のモチベーションアップにもつながっています」(森川氏)
シンプレクスは、正しいと思うことを突き詰めることができる
技術者を束ねるマネジメント寄りの立場から、技術を突き詰める道を選ぶことも可能。シンプレクスでは、さまざまな道が準備されているので、自分の適性を見極めながら、長い間現場で活躍できる。
個の力を尊重し、多彩なキャリアを選ぶことができるシンプレクス。この場所で働くやりがいを二人に尋ねると、このような答えが返ってきた。
「マネジメント職はタイトルが上がると、会社単位で考えたり判断したりすることが増え、関わる範囲がどんどん広くなります。もちろん、クライアントのプロジェクトに対しても社内の課題でも、解決すべきことが山積み。そういった重要事項に携わるのは大変ですが楽しさでもあります」(望月氏)
「技術の知識は、正直、ネットでも入手できます。しかし、シンプレクスで働いていると、金融業界を始めとしたさまざまな業種業態の生々しい最新情報が入ってきます。それを知れることでダイナミズムを感じられますし、そこにある課題を技術で解決するのが、なによりも楽しいですね」(森川氏)
これらのやりがいを踏まえた上で、森川氏はシンプレクスに向いている社員像を「自社サービスを運用する企業ではなく、あくまでクライアントからの受託によって、課題を解決する会社。技術を極めたい人には向いていますし、そのための教育体制や仕事の仕組みも用意されています」と語る。
望月氏は、「自分の頭で物事が正しいかどうかを考えて、自分の言葉で意見できる人には向いている会社。シンプレクスは、正しいと思うことを突き詰めることができる場所です」と続けた。
巷では、エンジニア40歳定年説なども語られるが、シンプレクスでは、50代を超えても現場の第一線で活躍するスペシャリスト職も多いという。
年齢、性別、国籍などに一切、囚われない完全実力主義で、経験を積み重ねると第一線を退いてマネージャーになるといった概念もない、全員がプレーヤーの会社であるシンプレクス。旧態依然とした日本企業とは一線を画すその働き方に、強さの一端と、人材が育つ会社の秘密を垣間見ることができた。