TikTokは、「TikTokショップ」で多くの商品を販売するために、新しいEコマース機能を試している。
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TikTok(ティックトック)は、EC市場への攻勢を続けるなか、販促動画以外でも商品の売り込みを始めた。
同社は人工知能(AI)を使って動画をスキャンし、商品を識別し、類似商品を自社ECサービスの「TikTokショップ(TikTok Shop)」を通じて購入するようユーザーに促している。TikTokはこれまで、クリエイターにアフィリエイト・プログラムの一環として、動画内に登場する商品にタグを付けることを認めてきた。一方、今回の新機能に関しては今のところ、クリエイターへの通知はなく、また動画が売上に貢献した場合のコミッションについても約束はされないまま運用されている。
TikTokの広報担当者は、この機能は実験の初期段階にあり、アメリカおよびイギリスの一部ユーザー向けに限定的に提供されているもので、正式にはリリースされない可能性があると述べた。TikTokによれば、この機能は物体検出を活用して動画内の商品を識別し、類似カテゴリーの商品をレコメンドするものだという。
Insiderがこの機能を最初に発見したのは10月29日のことで、記者がアップロードした動画に「Shop now(今すぐ買う)」ボタンが表示された時だった。
動画は、シュリヤ・バッタチャリヤ記者がインドの祭典「ディワリ」を紹介するものだった。彼女は、ブラウス、スカート、ドゥパッタと呼ばれる長いスカーフを特徴とする南アジアの民族衣装「レヘンガ」を着ており、#lehenga、#Diwali、#diwaliglamなどのハッシュタグを動画に付けていた。
この動画は、別のInsider記者の「おすすめ」フィードに表示され、「TikTokショップで他のウェディングドレスを探す」ことを勧めるメッセージが添えられていた。それと合わせて表示される「Shop now」ボタンをタップすると、TikTokショップのタブが開く。なお、ボタンをタップすることで開いたのは、特定のウェディングドレスページではなく、TikTokショップのトップページだった。
TikTok は、Insiderのバッタチャリヤ記者の動画に「Shop now」ボタンを追加し、他のユーザーにはTikTok Shopでウェディングドレスを購入するよう促した。
TikTok/Insider.
TikTokはバッタチャリヤ記者に、自身の投稿動画がTikTokショップの販売促進に利用されることを知らせていない。
バッタチャリヤ記者によれば、動画は結婚式への出席を撮影したものではなかったが、彼女が着ていたオフホワイトのレヘンガは花嫁が身につけてもおかしくないという。TikTokのシステムがそれをウェディングドレスと判断したということだろう。
TikTokショップで「ウェディングドレス」を検索すると、973.99ドルの「スパークリング・オフショルダー・クリスタルスパンコールチュール・ボールガウン・ウェディングドレス」や1650〜1750ドルの価格帯で購入できる「2-in-1スパンコール・ウェディングドレス」など、さまざまなウェディングドレスが表示される。
通常のTikTok動画にショッピングボタンが導入されたことで、同社がアプリ全体を通したユーザー体験にECサービスをいかに深く組み込もうとしているかが読み取れる。
TikTokはここ数カ月間、ショッピング機能を軌道に乗せるため、総力戦を展開してきた。具体的には、売り手に送料などの割引を提案したり、アフィリエイトリンクを貼ったインフルエンサーにボーナスを支払ったり、ブラックフライデーとサイバーマンデーなどの一連のイベントに関連するインセンティブをセラーに提供している。
写真や動画に商品タグを付けるソーシャルメディア・アプリはTikTokだけではない。YouTube(ユーチューブ)やInstagram(インスタグラム)にも同様のタグ付け機能があり、Facebook(フェイスブック)、Snapchat(スナップチャット)、Pinterest(ピンタレスト)、Google(グーグル)などは、機械学習を使って商品を視覚的に識別し、ユーザーへの商品レコメンドの精度を上げようとしている。活用例としては、新郎新婦が結婚式をプランニングする際に、ムードボードとしてPinterestを利用することが考えられる。