日本リスキリングコンソーシアムが取材するイベントで登壇した新浪剛史・経済同友会代表幹事。
撮影:横山耕太郎
リスキリングのプログラム提供や、転職支援などを行うプラットフォーム・日本リスキリングコンソーシアム※が10月31日、経済団体・経済同友会と戦略的パートナーシップを結んだと発表した。
イベントに出席した経済同友会代表幹事でサントリーホールディングス社長の新浪剛史氏は「全世代の人材の活性化は、日本経済のダイナミズムを生み出すために最も重要な鍵だ」と、リスキリングの必要性について述べた。
コンソーシアム、年間20万人の支援目指す
日本リスキリングコンソーシアムと経済同友会は、戦略的パートナーシップを締結した。写真左はグーグル合同会社の奥山真司代表。
撮影:横山耕太郎
日本リスキリングコンソーシアムには現在、国や地方自治体、企業など200団体以上が参画し、1200以上のリスキリングプログラムや就労支援サービスを展開している。
現在の登録者は約8万5000人だが、今回、経済同友会と戦略的パートナーシップを結ぶことで年間20万人のリスキリング支援を目指すという。
イベントに出席した新浪氏は、「バブル崩壊以降、人的資本への投資を減らしたことが今のイノベーション力を落とした。私たち企業は、収益を得ながら再投資し、好循環を作ることが重要だ」とし、リスキリングを含めた人的資本への投資が必要だとした。
一方、国のリスキリング関連施策に関しては、岸田政権が経済対策として掲げる「三位一体の労働市場改革」にリスキリングが盛り込まれている。三位一体の労働市場改革とは、「リスキリング支援」と「企業のジョブ型賃金の導入支援」、そして「成長分野への労働移動」という3つを同時に進めることで、賃上げを目指す政策だ。
新浪氏もこの方針を踏まえ、「岸田首相が時代の転換点と言っているが、私もそう思う。特に人事制度、人の育成や働き方、人材マネジメントのあり方は、技術革新や経済社会の変化において変えていく必要がある」とした。
「本当にいい人材に来てもらえない危機感」
撮影:横山耕太郎
また新浪氏は、企業におけるリスキリングが人材獲得面でも有効だとして、「私たち企業は継続的に賃上げをし、また人的な投資しなくては、本当にいい人材に来ていただけない、また残ってもらえないという危機感がある」とした。
「重要なのは、賃上げとともにキャリアデザインとリスキリングの仕組みを整えていくこと。そして学びの挑戦の機会を提供していくことだ。
内外の優れた人材に選ばれる組織、選ばれる企業は、結果的に企業価値が高まっていく。そして競争優位を形成し、再投資する力を整えていくことができる」(新浪氏)
小林衆院議員「人を奪おうということではない」
トークイベントに出席した自民党の小林史明・衆院議員。経済産業省の担当者や、日本ディープラーニング協会の松尾豊・理事長と対談を行った。
撮影:横山耕太郎
その後のトークイベントには、自民党の小林史明・衆院議員らが参加した。
小林氏は、自民党の「新しい資本主義実行本部 リ・スキリング・労働移動・構造的な賃上げ小委員会」(委員長・上川陽子衆院議員)の事務局長を務めた。
小林氏は日本におけるリスキリングの課題として、「このスキルを身につけたら給料が上がることが明確になっていない。ジョブディクリプション(職務記述書)を整理し、スキルセットを標準化しなければ、このスキルがあればこのポジションにつけると企業が提示できない」とし、ジョブ型雇用を推進する必要性を強調した。
一方で小林氏は「私たちがやろうとしているのは、決して皆さんのところから人を奪おう、動かそうということではない」と指摘した。
「むしろ働いている個人にきっちりキャリアを考える機会を提供し、より意欲を持って働いてもらえる環境を作っていこうということ。
キャリアコンサルティングの機会をきちんと提供することによって、たとえ転職したいと相談にきた社員でも、多くの人材がそのまま会社に残るという傾向がある。
より意欲を持って働いてもらえる環境を作っていこうということであり、そこをぜひ皆さんと共有したい」(小林氏)