IBMのCEOアービンド・クリシュナ氏。
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- IBMのCEOアービンド・クリシュナ(Arvind Krishna)氏は、一部の人々が恐れているほど、AI(人工知能)が多くの仕事を代替するとは考えていない。
- ただ、若い世代には時代遅れにならないためにもクリティカル・シンキング(批判的思考)のスキルを磨くようクリシュナ氏はアドバイスしている。
- わたしたちは安全保障上のリスクやAIによる誤情報をもっと心配すべきだと、同氏は話している。
IBMのCEOアービンド・クリシュナ氏(61)は、自分たちの社会人生活にAIがどのような影響をもたらすのか心配している若い世代にアドバイスを送った。
クリティカル・シンキングのスキルを磨くことが将来的に自分のキャリアをAIから守る上で重要になると、クリシュナ氏はイギリスのサンデー・タイムズのインタビューで語った。
同氏は変化する、予測不可能な状況に適応するのに役立つ科目を勉強するようアドバイスした。
「心理学、工学、歴史学… いずれの科目もそれを教えてくれる」
IBM一筋でキャリアを積んできたクリシュナ氏は、一部の人々が恐れているほど、AIがわたしたちの仕事に大きく影響するとは考えていない。AIに仕事を奪われるリスクがあるのは、労働人口の6%だと同氏は予測している。
「今から5年で労働人口の6%を再訓練することができないとでも言うのだろうか? わたしたちは医療、高齢者介護、子どもたちの教育、IT、サイバー分野でより多くの人材を必要としている。その需要は6%をはるかに上回っている」
IBMは5月、AIに取って代わられる可能性のある7800人分の新規採用を停止した。対象となった職種は主に、人事といった部門の"顧客と接することのない仕事"だった。既存のスタッフが解雇されることはないが、クリシュナ氏はブルームバーグに対し、向こう5年でバックオフィス部門の30%がAIや自動化に取って代わられるだろうとの見方を示した。
AIの普及によって雇用がどのような影響を受けるのか、まだほとんど明らかになっていない。
多くの人々が、職場でAIが自分たちに取って代わるのではないかと恐れている。ゴールドマン・サックスのアナリストは、AIが期待された能力を発揮すれば3億人のフルタイムの仕事に影響を与え、世界の労働市場に「広範囲にわたる混乱」をもたらすだろうと予測している。
一方で、AIは新たな技術的躍進であり、より多くの雇用を生み出すイノベーションのためのツールだとの見方もある。ゴールドマン・サックスは、AIが今後10年で世界のGDPを7%押し上げる可能性があるとしている。
クリシュナ氏はAIの雇用に対する脅威を心配していないものの、AIを取り巻く他の懸念はもっと根拠のあるものだと語った。
安全保障 —— 「AIを悪用したテロ、インフラ攻撃、サイバー攻撃」 —— と民主主義を妨害するために利用される誤情報がクリシュナ氏の考える2つの大きな脅威だ。
「妄想に取りつかれたわけではない。ただ、こうした懸念の多くは根拠のあるものだと思う」と同氏はサンデー・タイムズに語った。