心理学者で著述家のトレイシー・トーマス博士。
Courtesy of Dr. Tracy Thomas
心理学者で著述家のトレイシー・トーマス博士(Dr. Tracy Thomas)は、著名人、CEO、プロスポーツ選手など、大きな成功を収めている人を対象にしたコーチングでキャリアを積んできた。
12年前にコーチング業を始め、2021年だけでも100万ドル(約1億3800万円、1ドル=138円換算)以上を稼ぎ出している。さらに、高い収入に堅実な貯蓄と投資を組み合わせて数億円規模の純資産を築いた。Insiderは、税務書類や銀行口座明細からその事実を確認した。
「たくさん貯蓄し、たくさん投資してきましたよ」と話すトーマスは働き始めて以来30年、収入の一部を貯蓄や投資に回してきたという。しかし、トーマスは普段「貯蓄」や「節約」という言葉は使いたがらない。
「貯蓄や節約という言葉には、『本当にやりたいことが奪われる』というニュアンスがあります。これは、あまり魅力的でも素敵でもない言葉です」
そこで、お金を「貯め」なければと思うのではなく、「私は富を蓄積している」「富を築いている」と自分に言い聞かせよう、と彼女はアドバイスする。
「『私は富を築いている』と言葉に出せば、すでにその道は開き始めているも同然。なぜなら、自己認識とは、それがどんなものであれ、自分が示す方向性に従うからです。
例えばあなたが、『悪い知らせを聞いた』あるいは『素晴らしい知らせを聞いた!』と口に出せば、あなたの精神状態はそれに合わせてすぐに変化するでしょう。それは、その言葉の方向に自己認識が向くからです」
同様に、「予算を立てる」という言葉は「振り分ける」に置き換えたほうがいいとも言う。
予算を立てるということは、生活の中から何かを削らねばならないという制限を意味するからだ。
それよりも、「家、車、リタイアなど、将来の目標や何かの購入にお金を振り分けている」と考えよう、とトーマスは言う。実際に、トーマスや彼女のクライアントたちは、このような言葉遣いをしている。
「クライアントが『予算を立てる』ことはありません。それは欠乏を感じるマインドセットですから。
クライアントは自分の持つリソースを振り分けたり、投資したりしているのです。例えば、日々の報酬を毎月の楽しみであるワードローブに振り分けたり、将来持つ予定の湖畔の家に投資したりしているという訳です」
考え方を変え、博士が言うところの「富の言葉」を使うことは、想像以上に大きな効果をもたらす可能性がある。お金との関係性を築き直し、マインドセットを「欠乏」から豊かさに変える上で意味があるからだ。
富の構築から遠ざける5つの言い回し
サクセスコーチで著述家としても知られるジェン・シンセロ(Jen Sincero)も、著書『You Are a Badass at Making Money(未訳:お金儲けには容赦なく)』の中で同様のアドバイスをしている。
「もしあなたが経済的に望ましい状態でないなら、ぜひとも言葉遣いを改めるべきです」とシンセロは書いている。発せられる言葉には、往々にしてその人のお金に対する本当の考え方や信条が表れるものだからだ。
シンセロは、一見無害に思えても実は口にした人を縛り、富の構築から遠ざける言い回しを挙げている。よく聞かれるのが次の5つだ。
- 「○○が欲しい」「○○が必要だ」は、「○○が足りていない」と同じ
- 「○○だったらいいのに」は、「自分をコントロールできていない」と同じ
- 「○○になればいいのに」は、「○○になるかもしれないし、ならないかもしれない」という気持ちの現れ
- 「○○したほうがいい」は、「○○しないかもしれない、あるいは○○したくない」という気持ちの現れ
- 「できない」は説明するまでもない
そこで、こういった言い回しではなく、次のような言葉を使おう、とシンセロは提案する。
- 「○○を持っている」
- 「○○を選び取る」
- 「○○を創り出す」
- 「○○でありがたい」
- 「○○を楽しむ」
- 「できる」
「自分の言葉遣いを常に意識しましょう」とシンセロは書いている。
「話し出す前に深呼吸する習慣をつけてください。そうすると、一度考えて、口から出そうとしていた言葉に注意を向け、必要なら修正する余裕が生まれます」
※この記事は2022年7月22日初出です。