作家兼自費出版コンサルタントのクイン・ウォードは、これまで33冊をアマゾンで自費出版している。
クイン・ウォード(Quinn Ward)は2013年、35歳の時に最初の小説を自費出版した。
「ある友人がしきりに、君は作家になるべきだと言ってくれたんです。実際にやってみたらすぐに、これはある程度の稼ぎが得られる自分に合った方法だと気づきました」
ウォードはこれまでに34冊の本を執筆し、うち33冊をアマゾンの自費出版プログラム「Kindle ダイレクト・パブリッシング」を通じて販売している。2021年には、アマゾンから印税として10万ドル(約1380万円、1ドル=138円換算)以上の収入を得た。Insiderはその事実を書類で確認済みだ。
ウォードが専門にするのはゲイロマンス小説で、今ではフルタイムの作家兼自費出版コンサルタントとして、他の執筆家に本の出版支援を行っている。そのウォードが、執筆をビジネスとして成立させる方法や、作家を目指す人に向けて最高のヒントを語ってくれた。
自費出版のプロセス
ウォードは、1冊目の出版から自費出版を選択した。ただ、この選択をしたのは商業出版の知識がゼロだったからだという。なお、数年後に小さな出版社から出版話を持ちかけられたが、印税が少ない上に、本の宣伝についても発言権がないことが分かったという。
「商業出版は自分にとって一つのベンチマークになるんじゃないかと思っていたのですが、結局、びっくりするくらい良いことなしでした」
その後、ウォードは自費出版の道に再び戻ったが、こちらにも困難な問題はある。例えば、編集者もイラストレーターもウォード本人が見つけてこなければならない。
「でもこういうパートナーは必ず雇うようにしています。きちんと売り物になる本に仕上げる必要があるし、販売の際には雑務にめちゃめちゃ時間をとられますから」
執筆は起業と同じ
スタートアップの創業者と同じように、作家も何かを始める前には市場調査をする必要があるという。
「自分が執筆したいものについて調査し、そもそも需要があるのかを判断しなければなりません」と話すウォードは、そのジャンルでどのような作品がベストセラーリストに掲載されているか、ターゲット読者は普段どんな場所で時間を過ごすかといったことを調べ上げるのだという。
「読者が読んでくれなければ、収益の上がるビジネスになりませんから」
市場がニッチすぎるとお金を稼ぎにくいし、間口が広すぎるとロイヤルティが高い読者がつかない。加えて、どのプラットフォームを利用するかの調査も重要になるという。仮にリーチしたい読者がアマゾンの利用者であれば、他の自費出版サイトではなくアマゾンのプラットフォームで出版するのが理にかなっている。
「自費出版作家の場合は、ある特定のジャンルを書き続けて読者との関係を築くことも重要です」
それによってロイヤルティの高い読者層が生まれ、リピート顧客になるからだ。新たなジャンルに挑戦しようかと検討している作家に対しては、柱となるブランドを一つひとつ確立させていくようアドバイスする。
「私に関して言えば、ゲイロマンスというジャンルが柱として十分に機能しています。だから次のジャンルに進んでも、その間この柱で食べていけるんです」
新たな知識が新たな目標を生む
作家を志す者は、自分をクリエイティブな起業家として捉えて目標を設定し、それをもとに自分のキャリアを形成することが重要だ、とウォードは言う。そして、自分の知識やスキルが足りないと感じるのであれば、オンライン講座などで自分磨きの方法を見つけることも提案する。
「まずは無料で学べる方法を見つけて学び始め、その後は長期計画を立てて、常にそれに向かって取り組むべきです」と述べ、ビジネスの基本について理解を深めることも重要だと指摘する。
「なぜ今これに取り組んでいるのかが大切です。スマートに進めないと」
ウォードは自費出版を通じて、他の人をコーチングするなどの次なる目標を見つけ、達成することができたという。ただしこれは、経験と継続的な学習を通じて長年にわたって築き上げた専門家としての基礎があってのことだ。そうでなければ、起業家としての自身の成功について人に教える資格はない、とウォードは言う。
「私にとって自費出版は、当初は自分のためにやっていたことでした。でも今は、人に教える機会を与えてくれている。今ではコーチングにも情熱を持って取り組んでいますよ」
※この記事は2022年7月27日初出です。