瞑想部屋に高集中エリア…、見学者が殺到するイトーキの本社新オフィスに潜入

イトーキのヒット商品の椅子が並ぶ。

オフィスの一角にはイトーキのヒット商品の椅子が並ぶ。

撮影:杉本健太郎

130年以上の歴史を持つオフィス家具メーカーのイトーキ。

2023年12月期第2四半期の売上高は、前期として過去最高となる前年比7%増の681億円を記録。今期の通期予想も、営業利益65億円から75億円へと上方修正を発表している。

絶好調とも言える業績を支えるのが、オフィスリニューアルや、オフィス移転に関わる事業だ。コロナ禍で進んだリモートワーク化などによって、オフィスのあり方を模索している企業は多く、そんなオフィス改築のニーズを受け業績を伸ばしている。

そんなオフィス改築のプロであるイトーキは、当然、自社オフィスにも力を入れている。

2022年から2年続けてリニューアルした日本橋の自社オフィス「ITOKI TOKYO XORK」には、2023年4月の完成以降、経営者や役員などが相次いで見学に訪れており、約半年で見学者の数は1万2110人にのぼるという。

イトーキのオフィスの特徴は、それぞれの活動に合わせたエリアを設けていることだという。活動に合わせたエリアとは一体どんなものなのか、そして本当に使いやすく、快適なオフィスなのか? 実際にオフィスを現地取材した。

仕事内容で働く場所を変える働き方

ABWの10分類。

ABWの10分類。

出典:イトーキ

イトーキの新オフィスは、オランダのコンサルティング企業であるVeldhoen + Companyにより提唱され、欧米の企業を中心に広まっているABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)に基づいて設計されている。

ABWとは簡単に言えば、その時々の仕事の内容に合わせて、働く場所を自由に選択する働き方のこと。

イトーキでは、ABWに基づき活動エリアに分けて空間を構成している。1人で集中して作業したいとき、2人で共同して作業したいとき、ウェブ会議をしたいとき……など、それぞれの活動に適した空間を用意し、社員は自分がしたい活動に合わせて自由に移動する。

これこそが出社したくなるオフィスの肝だという。各エリアを紹介しよう。

高集中エリア

高集中エリア。

高集中エリア。

提供:イトーキ

予約制で使用は2時間まで。会話は禁止されている。1人で集中して作業を行いたい時に使う。邪魔が入らないようオフィスの一番端に位置している。

コワークエリア

コワークエリア。

コワークエリア。

提供:イトーキ

メンバーと短い会話や質問などを交えながら、個人作業を行う。タッチポイントを増やすためオフィスの中央付近に位置している。

電話・WEB会議エリア

電話・WEB会議エリア。

電話・WEB会議エリア。

提供:イトーキ

物理的には1人で行うバーチャル上でのコラボレーションを行うエリア。

2人作業エリア

2人作業エリア。

2人作業エリア。

提供:イトーキ

2人が近距離で横並びになって作業ができるように設計されたエリア。

対話エリア

対話エリア。リラックス効果を狙い木漏れ日のようになるように照明が工夫されている。

リラックス効果を狙い木漏れ日のようになるように照明が工夫されている。

提供:イトーキ

2人ないし3人で議論や会話を行うためのスペースとして設けられている。照明も独特だ。

アイデア出しエリア

アイデア出しエリア。モニターはタッチパネル。

アイデア出しエリア。モニターはタッチパネル。

提供:イトーキ

新たな知識やプロセスを構築するために3人以上で協働する。

情報整理エリア

情報整理エリア。

情報整理エリア。

提供:イトーキ

計画の進捗を整理・議論するために3人以上で計画された会議を行う。

知識共有エリア

知識共有エリア。

知識共有エリア。

提供:イトーキ

3人以上のグループで知識を共有する。主にプレゼンターが話す。奥の壁にかかっているのは超ワイドモニター。

リチャージエリア

「マインドフィットネスゾーン」と銘打たれた瞑想部屋。朝始業前に利用する人が多いという。

「マインドフィットネスゾーン」と銘打たれた瞑想部屋。朝始業前に利用する人が多いという。

撮影:杉本健太郎

仕事から隔絶し、心身のチャージや切り替えを行う。

このほか、ABWでは特別な設備を必要とする専門的な業務を行う「専門業務」の区分がある。

社員のエンゲージメント・内定応諾率が上昇

イトーキの社員エンゲージメントは上昇し続けている。

イトーキの社員エンゲージメントは上昇し続けている。

提供:イトーキ

新オフィスの影響とは断言できないが、イトーキが年に一度、自社社員に調査している重要KPIであるエンゲージメントは年々上昇している。2023年度は3項目で10ポイント以上上昇したという。

また採用面接の際、入社希望者にオフィスを見学できるようにしたところ、新卒採用応募数と内定応諾率が上昇したという。

・2023年度新卒採用の応募者数…140%(昨対比)

・2023年度新卒採用の内定応諾率…87%(昨年67%)

出社するのは「オフィスが自宅より快適だから」

「弊社は毎日リモートワークでも問題ないルールになっていますが、自ら会社に行きたくなるようなところにしようということで、居心地の良さを重視しています」(イトーキ広報担当・松尾陽さん)

広報担当の松尾さんは、イトーキに転職する前の職場ではリモートワークでほとんど出社することはなかった。しかし、今は8割ほど出社しているという。イトーキ転職後、頻繁に出社するようになったのは「オフィスが自宅より快適だから」というシンプルな理由だという。

リモートワークで自宅で仕事ができるようになった今、「自宅よりオフィスが勝る何か」がないと、わざわざ片道1時間かけて通勤したいと思うビジネスパーソンは少ないのではないか。

あなたの職場は自宅の書斎やリビングより快適だろうか? オフィスだから多少の不快は我慢すべきという時代はもう終わりにすべきなのかもしれない。

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