「仕事したいなら妊娠はコントロールして」「昔はこんな残業当たり前」…職場の“駄言”はなぜなくならない?

Panasonicconnect DEI Month 2023 dagen

パナソニックコネクト初の駄言イベントは「DEI Month 2023」最終日に、同社のスタジオから生配信された。

撮影:湯田陽子

『早く絶版になってほしい #駄言辞典』(日経BP・日経xwoman編)という書籍をご存知だろうか。

「女性なのに仕事ができるよね」「男なのに育休取るの?」など、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)によって人の心をくじく発言を「駄言(だげん)」と名づけ、解説を加えてまとめた発言集だ。

2021年に発売されると、DEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)に関心のある層や企業担当者などを中心に話題となった。中には、社員のDEI教育の一環として活用する企業もあるという。

パナソニックコネクトは、10月に実施した「DEI Month 2023」最終日の10月31日、オンラインの駄言イベントを開催。350人を超えるパナソニックグループ社員が参加した。

グループ横断で「駄言」集めて投票

Panasonicconnect DEI Month 2023 dagen abuta

駄言イベントを企画した、パナソニックコネクトDEI推進室の油田さなえさん。

撮影:湯田陽子

今回のイベントを企画したのは、『#駄言辞典』を発売直後に読んだというパナソニックコネクトDEI推進室シニアマネージャーの油田さなえさん。

読了当時はイベントを開催することまで考えていなかったが、

「実はDEIでつながっていた企業の方が、2023年3月の国際女性デーに駄言に関するイベントを(社内で)やったと教えてくださったんです。それを聞いて、いつかうちの会社でもやりたいと思っていて。今回のDEI月間で私の野望の一つとして企画しました(笑)」(油田さん)

という。

イベント開催に当たり、事前にグループ全社員からこれまで見聞きしてきた駄言を募集。92の駄言が寄せられ、それを「妊娠・出産・育児」「性別」「ジェネレーション・年齢」「仕事・キャリア」の4カテゴリーに分類して、グループ全社員に投票を呼びかけた。

31日は、パナソニックコネクト社内のスタジオに、進行役の油田さんのほか、パナソニックオートモーティブシステムズ(PAS)の秋庭弘さん、エレクトリックワークス社(EW社)の栗山幸子さんというグループ会社のDEI推進室長2人が集まった。

「今年の4月ごろ、EW社の栗山さんがパナソニックグループ各社のDEI推進室長のチャット・グループをつくってくださって、みんなで日々の悩み事や取り組みの共有をし合うようになったんです」(油田さん)

そうした日々のやり取りの中で、共通する課題も見えてきたという。

「個々の事業会社だけではなく、一緒に取り組めそうなものってたくさんあるんですよね。その中でも、この駄言というテーマは各社に共通していると思ったので、横のつながりを生かして一緒に何かコラボしたいという思いと、駄言のイベントをぜひやりたいという思いをくっつけて、グループみんなでやりましょうと、みなさんにお声がけしたんです」(油田さん)

というわけで、今回のDEI Month 2023で唯一のグループ横断企画が実現した。

登壇した栗山さん、秋庭さんだけでなく、ほかのグループ各社のDEI推進室長も募集や投票に協力。多くの力添えがあったからこそグループ横断でイベントを開くことができたと、油田さんは言う。

笑えない駄言の数々…トップ3を公表

そうして迎えたイベント当日、投票で選ばれたカテゴリー別のトップ3が公表された。

時代錯誤な言葉に絶句したり、駄言の背景にあったエピソードに共感したり。笑えない駄言も多かったが、イベントの目的は糾弾ではなく「DEIリテラシー」を高めることだ。

その点、気心の知れたDEI推進室長同士ということもあって、「私も言われた!」「10年以上前の話で安心した」などとツッコミを入れながら、和気あいあいとした雰囲気でトークを展開。

「DEIとは関係のない部署にいた自分たちも、考え方をアップデートすることができた」「みんなにも可能だし、自分もまだ変われると思った」とオンライン参加者にメッセージを送った。

panasonicconnect_DEIdagen03

「妊娠・出産・育児」トップ3。1位は「子どもがいない/育てない人は大人として一人前になれない」、2位は「仕事がしたいなら子ども(妊娠)はコントロールしてもらわないと」、3位は「子どもいないの?」。

出所:パナソニックコネクト

panasonicconnect_DEIdagen04

「性別」トップ3。1位は「飲み会などで『部長の隣・前に座ってあげて』『あなた(女性)に注いでもらったお酒は美味しい』など」、2位は「女性ならではの感性」、3位は「(昇格した私に)女性は追い風でいいよね。実力以上に評価されていいよね」。

出所:パナソニックコネクト

panasonicconnect_DEIdagen05

「ジェネレーション・年齢」トップ3。1位は「プロジェクトや委員会などを『メンバーを若手で構成しました』」、2位は「若い人にもっとチャンスを」、3位は「うちの若い『子』」。

出所:パナソニックコネクト

panasonicconnect_DEIdagen06

「仕事・キャリア」トップ3。1位は「(残業時間など)昔はこれくらい当たり前だった」、2位は「プロジェクトや委員会などを『メンバーを若手で構成しました』」、3位は「仕事できるやつは朝早く来るやつだ」(複数のカテゴリーに重複している駄言もある)。

出所:パナソニックコネクト

最後に、油田さんが参加者に向けて「まだまだこの会社の中のどこかで、駄言や駄言だととらえられるような言葉が飛び交っていることが分かったのではないでしょうか」と述べ、次のように語りかけた。

「『#駄言辞典』と同じように、私たちもこのステレオタイプの考え方をアップデートしていく。まずは、駄言というものの存在を知りながら変わっていくということに、みなさんと一緒に、パナソニックグループ全体としてチャレンジしていきたいと考えています」(油田さん)

西川CFOが語る「想定外」の盛り上がり

Panasonicconnect DEI Month 2023 dagen nishikawa CFO

パナソニックコネクトの西川岳志CFO。

撮影:湯田陽子

パナソニックコネクトには、10月18日のDEIフォーラムで進行を務めた山口有希子取締役のほかにもう1人、DEI推進担当役員がいる。西川岳志CFOだ。

西川CFOは、1カ月にわたり80ものDEIイベントを実施した背景について、次のように語った。

「これまで単発でDEIのイベントを開催してきましたが、1万人も社員がいると、感度の高い人、興味のある人は見てくれるので(リテラシーの)レベルが上がっていきます。一方、そうでない人は参加しないので、差がどんどん広がってしまう。

だったら、集中的に数を増やせば必ずみんながどれかに参加できるだろうということで、(10月に)ギュッと固めて開催することにしました」(西川CFO)

その結果、パナソニックコネクトとして独立する以前のカンパニー制だった時代を含めても「ダントツで史上最大規模」(西川CFO)のイベントになった。

とはいえ、「正直、80も企画が出てくるとは思っていなかった」という。なぜそこまで盛り上がったのだろうか。

「実現した理由はまず、DEI推進室のメンバーのあふれる思いでどんどんアイテム(イベント)が増えていったことです」(西川CFO)

想定外だったのは、事業場の動きだったという。

「1つ2つ程度は企画してくれるかなと思っていたら、パソコンの事業部やプロジェクターをつくっている事業部、私の担当している経理部門も、法務部門や人事部門も、いろいろな事業場が自走して企画を立て、全部積み上げてみたら80になった。

DEI推進室が引っ張っているから実現したというのではなく、みんなが自ら走り出しているというところに感動しました」(西川CFO)

panasonicconnect_DEIdagen08

今回のイベントでは、駄言のほか名言も募集。パナソニック創業者・松下幸之助氏の言葉としても知られる「やってみなはれ」など69の言葉が寄せられた。

出所:パナソニックコネクト


Popular

あわせて読みたい

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み