メタをはじめとするビッグテックやVCのアンドリーセン・ホロウィッツらは、生成AIの技術発展のためには著作権保護コンテンツに対価を払うのは適切ではないと考えている。
Reuters
世界屈指のテック企業各社は、自社の生成AIツールの基礎となるモデルをトレーニングするために必要な、膨大な量の著作権保護データの対価を支払う必要はないと考えている。
米国著作権局は、生成AIに関する新たなルールを検討するためにパブリックコメントを実施した。これは「AIモデルのトレーニングにおける著作物の使用に対して、著作権所有者またはクリエイターに報酬を支払う」ライセンス制度やその他のプロセスを設けることについて意見を求めるものだ。
募集期間中には1万1000人近い意見が寄せられ、その中にはメタ(Meta)、マイクロソフト(Microsoft)、グーグル(Google)、アップル(Apple)、オープンAI(OpenAI)、アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)などの企業や、報道機関、メディア機関、関係者なども含まれていた。
メタのLlama、グーグルのBard、オープンAIのChatGPTといったAIツールは大規模言語モデル(LLM)によって支えられている。LLMのトレーニングにはインターネットから取得された膨大な量のデータが使われるが、大半のテック企業はどうやら、著作権で保護された素材に対して対価の支払いを求められると、技術開発上、乗り越えられないハードルになると考えているようだ。
メタはコメントに次のように書いている。
「生成AIモデルには、大量のコンテンツだけでなく、多様なコンテンツも必要だ。
確かに、AI開発者が個々の権利者と取引を行い、より広範なパートナーシップを築く、あるいは単に訴訟の脅威から平和を買うという可能性はある。しかし、そのような取引では、AI開発者はモデルの訓練に必要なデータのごく一部の権利しか得られないだろう。また、AI開発者が他の重要なカテゴリーの著作物の権利をライセンスすることは不可能だろう」
グーグル、マイクロソフト、オープンAIの主張も同様で、モデルのトレーニングに使われるデータの量は膨大であり、その対価を支払う方法を見つけるのは不可能だという。
どの企業も、権利者の許可なく著作物を使用することを否定しない。その代わりに、著作権保護素材をインターネットに掲載することはそれを「公に利用可能」にすることであり、したがって利用するための公正なゲームである、というのが各社の主張だ。LLMのトレーニングにそのデータを使用することは、現行の著作権法では「公正な使用」にあたると、各社は付け加えている。
グーグルは、BardのようなAIツールの学習に使用する著作権保護素材を「ナレッジ・ハーベスティング(知識収穫物)」と呼び、現行の著作権法はこのようなハーベスティングを可能にすることを意図していると主張する。
グーグルは、トレーニングの際に著作権保護素材を使用することについての責任を開発者に負わせるのは、「AI開発者に膨大な責任を課すことになる」と主張し、生成AIは「アイデアの自由な流れ」に関わるものだと主張する。
さらに、ベンチャーキャピタル(VC)のアンドリーセン・ホロウィッツは、同社をはじめとする投資家がAIブームに注ぎ込んだ数十億ドルという資金は、著作権者を利するような新たなルールを作らない十分な理由になるはずだと考えている。
この投資は、「現行の著作権法の下では、統計的事実の抽出に必要なあらゆるコピーが認められているという理解を前提としている」とアンドリーセン・ホロウィッツは書いている。同社によれば、その理解や前提を覆すことは、AIへの「将来の投資を危うくする」。また、コンテンツ所有者に支払うべき金額が膨大になる可能性があるため、AIで著作物を使用するためのいかなる種類のライセンス制度も意味がないと主張する。
「個々の権利者に無視できないほどの支払いを規定するライセンスの枠組みの下では、AI開発者は年間数百億ドルから数千億ドルのロイヤルティ支払いの責任を負うことになるだろう」(アンドリーセン・ホロウィッツ)
一方、ニューズ・コーポレーション(News Corp.)、写真素材のゲッティ(Getty)、大手タレントエージェンシーのWME、そしてテレビドラマ『ブレイキング・バッド』を手がけたヴィンス・ギリガンなど、AIモデルのトレーニングに使用される素材の制作に関わるほとんどの団体や個人は、AIツールからコンテンツが保護され、対価が支払われるよう著作権ルールを更新することに賛意を表明している。
現在、著作権保護コンテンツがインターネット上でクロールされ、LLMの作成に使用されるのを防ぐ方法はほとんどない。著作権法はこの問題に対処していないからだ。作家、ビジュアルアーティスト、そして開発者までもが、自分たちの同意なしにオリジナル作品が企業のAIツールのトレーニングに使用されたとして、すでにオープンAI、マイクロソフト、メタなどを訴えている。