ウォーレン・バフェット
AP
- ウォール街の大手企業は、ある大学の講義を修了した学生を好んで採用してきた。
- ジョンズ・ホプキンス大学のスティーブ・ハンケ教授は、学生たちにバフェット流の企業価値評価法を教えている。
- その講義で、学生たちは財務報告書を調べ、役員報酬を評価し、DCFモデルを構築し、シミュレーションを行っている。
ウォール街の大手企業は、ある大学の講義を修了した学生を好んで採用する。そこではウォーレン・バフェット(Warren Buffett)のように企業を評価する方法を教えることに重点が置かれているからだろう。
スティーブ・ハンケ(Steve Hanke)教授は、20年以上にわたって「応用経済学とファイナンス」を教えており、この講義の受講生はハンケによって厳選されている。受講後、彼らはほぼ全員が一流銀行やヘッジファンドから就職の内定をもらっている。
ハンケはジョンズ・ホプキンス大学の教授であると同時に、半世紀にわたって通貨とコモディティのトレーダーをしてきたベテランのエコノミストだ。また、ロナルド・レーガン(Ronald Reagan)大統領の元顧問であり、1995年にはブエノスアイレスのトロント・トラスト・アルゼンチン(Toronto Trust Argentina)の社長も務めた。
この名物講義では、学生はまず、企業価値を算定する手法である「DCFモデル」を企業の年次報告書や四半期報告書を使ってゼロから構築することを学ぶ。次に「モンテカルロ・シミュレーション」で起こりうるシナリオの作成法を学ぶ。これによって、企業の株の価格帯を見極め、株価が上昇あるいは下落する確率を測ることができるようになる。
また、現在の価格に基づく株式に対する市場の期待値、企業の資本収益率、上司の報酬、資本配分、負債比率、株式発行、取引、株主利益率など、あらゆることを検討する。そして作成したモデルを、数週間かけてフィードバックやさらなるリサーチに基づいてを改良して論文にまとめ、クラスで発表する。そうすることが、アナリストとして仕事をするための準備になるのだ。
同じようなアプローチを、バークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)のバフェットCEOも用いており、彼も企業の財務状況の精査、10年後の姿の予測、経営陣の資質と報酬を判断し、企業を評価しているという。
「企業への投資について、バフェットの考え方にかなり近い講義をしている」とハンケ自身もInsiderに語っている。彼はキャッシュフローモデルの構築を「非常にバフェット的」と表現し、「バフェットも頭の中で同じようなモンテカルロ・シミュレーションを行っていると確信している」と言う。
ハンケの講義の推奨図書リストにも、バフェットが大きく取り上げられている。また、バフェットのビジネスパートナー、チャーリー・マンガー(Charlie Munger)の知恵を集めた『Poor Charlie's Almanack』や、バフェットの恩師でありメンターでもあったベンジャミン・グレアム(Benjamin Graham)の『賢明なる投資家(The Intelligent Investor)』も含まれている。加えて、学生にバフェットのパートナーシップ・レター(投資家への手紙)を読むことを勧めている。
スティーブ・ハンケ教授
Portia Crowe/Insider
ハンケは、バフェットの重要な教えを学生に伝えようとしている。彼はInsiderへ宛てたメールで、『Warren Buffett Speaks: Wit and Wisdom from the World's Greatest Investor(ウォーレン・バフェットは語る:世界で最も偉大な投資家の知恵と知恵)』(ジャネット・ロウ著)の中から、投資のアイコンであるバフェットの教えをいくつか挙げ、それに関する見解(以下でカギカッコ「」で示した)を述べた。そこから重要なものを抜粋して紹介しよう。
1. 資本配分は賢く
「資本配分を巡る決定を、学生がいかにして分析すべきなのか、私は非常に重視している。そこが肝心なことなのだ」
2. 市場の呼びかけに耳を傾ける
「『ミスター・マーケット(株式市場のこと)』が企業の本源的価値を大きく下回る価格を付けたら、飛びつけ」
3. 収益、収益、収益
「私なら、フリーキャッシュフロー、フリーキャッシュフロー、フリーキャッシュフローと付け加える」
4. リスクを避け、ギャンブルをしない
「私がモンテカルロ・シミュレーションをDCFモデルにリンクさせるのはそのためだ。それによって、確率を考慮し、自分が有利になる可能性を高めることができる」
5. 過剰な負債を避ける
「健全なバランスシートほど重要なものはない」
6. 忍耐強く
「私は、行動を起こすまでに非常に長い間、時には何年も待つことを学んだ」
7. ウォール街を警戒する
「ウォール街のおしゃべりたちの言うことの95%は間違っているか、無関係だ」
8. 数学で苦労する必要はない
「複雑なアルゴリズムのことは忘れる。バランスシートと年次報告書の読み方を学ぶべきだ」
9. 倹約を賞賛する
「浪費や自慢をする人とは付き合わない。役馬や軍馬は、いつだって見せ物の馬に勝るものだ」
10. クオリティにこだわる
「クオリティの高い人や会社にこだわれば、間違いはない」
11. 分散投資について心配する必要はない
「自分が何をしているのか分かっているのであれば、馴染みがあり、アウトパフォームが期待できる少数の投資に大きな賭けをするのがベストだ」
企業のファンダメンタルズを掘り下げるにせよ、役員報酬を評価するにせよ、慎重さと規律を重んじるにせよ、ハンケの講義を受けた学生は、明らかにバフェット流の評価アプローチを取るようになる。それは、彼らがウォール街で憧れの職業に就こうとするときにも役立つだろう。