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ポートフォリオ・マネジャーのジョン・バイラー(John Bailer)氏は、これまで培った知見を生かし、20年近く投資の世界で支配的な地位を占めてきた。
市場に入って31年のベテランであるバイラー氏は、共同マネジャーのブライアン・ファーガソン(Brian Ferguson)とともにBNYメロン・ダイナミック・バリュー・ファンド(BNY Mellon Dynamic Value Fund:DAGVX)を運用しながら、2005年の年初来、誰もが羨む成績を収めてきた。
モーニングスター(Morningstar)によれば、バイラー氏が運用するファンドは過去15年間で年平均11.5%上昇し、過去3年間は大型株バリュー・カテゴリーでも上位1%に入っているという。
この顕著な成功は、バイラー氏がInsiderとの最近のインタビューで概説した、常識的かつ現実的な投資戦略の賜物だ。
投資のやり方、そして避けるべきよくある間違い
他のバリューファンドマネジャーと同様、バイラー氏は、どんなに事業が魅力的に思えたとしも、その株式に投資しすぎることには否定的だ。この原則を貫くことで、2022年のような市場の暴落時にも、彼のファンドはS&P500が19.4%下落する中で2.8%の利益を絞り出し、持ちこたえることができた。
しかし、銘柄選びとは、市場の割安銘柄を探し回ることだけではないとバイラー氏は言う。
「高評価を得ながらも、その高評価に止まっていない株を探すという哲学が必要です」
BNYメロン・ダイナミック・バリュー・ファンドに組み入れられる企業は、質の高いファンダメンタルズと事業のモメンタム向上の両方を兼ね備えていなければならないとバイラー氏は言う。多くのポートフォリオマネジャーは、安定的で健全な企業だけを求めているが、そのような銘柄が適正価格で取引されることはめったにないと彼は指摘する。
「多くの場合は高すぎるので、質の高い企業の株を保有することは難しいのです」とバイラー氏は言う。
「われわれは、バランスシートが良く、バリュエーションが良い企業を見つけようとしています。なかなか見つからないこともありますが、実際には多くの成功を収めています」
優良な企業はあまり割安にならないのが普通であり、最も安い企業は値引きされてしかるべきであることが多い。バイラー氏によれば、まだ魅力的なバリュエーションにある、堅実な銘柄を見つけるのがコツであり、企業にモメンタムを与えられるような要素を見落としていないかを確認することで、これを実現しているという。
逆に、深刻な長期的課題を抱える業界を避けることも不可欠だ。
「バリューマネジャーとしてバリュートラップを避けるには、常にクオリティとモメンタムに注目することが役に立つと考えています」
そして彼は次のように付け加えた。
「良い評価を得ている株には理由がある、というのがわれわれの信念です。そして、その理由の中には世俗的なものもあるかもしれない。そのような企業には踏み込みたくありません」
例えば、バイラー氏は2000年代初頭に、現金と配当金を生み出しながらも割安だった新聞株に手を出さなかった。彼は、この業界には世俗的な評価がありながら、長期的には逆風が吹いているため、リスクの高い賭けだと考えたという。そして時間とともに、それが正しいことが証明された。
小売業はこの理論をよく表した現代の例であり、パンデミックのどん底から立ち直ったとはいえ、Eコマースによって、まだ混乱状態にあるとバイラー氏は言う。この“アマゾン(Amazon)時代”に見事に適応した企業がある一方で、かつては強かった実店舗型の企業で倒産したところもある。
バイラー氏の言う優良企業とは、バランスシートに潤沢なキャッシュがあり、これによって配当や自社株買いで株主にキャッシュを還元しながら、どのような経済状況でも持ちこたえることのできる企業だ。
大企業はその規模を利用して商品やサービスを低コストで生産するため、これに当てはまることが多いとバイラー氏は言う。特に金利がこれほど高い時には、キャッシュフローが少ない中小型株は、それほど魅力的ではないという。
「現在の経済環境では、われわれは大型株を選びます。バランスシートが優れている傾向があるためです。大型株は、より安定した事業で、長期にわたって一貫したキャッシュフローを生み出しています」
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適正な評価を受けている優良企業を手に入れるのは難しいが、バイラー氏のファンドが75銘柄を保有しているという事実は、適切な場所を探せばそれが可能であることを示している。
BNYメロン・ダイナミック・バリュー・ファンドの上位6銘柄は、2023年9月30日現在、金融とヘルスケアという2つの業種のいずれかに属している。これらのグループの中でも特に保険会社と医療機器企業に期待しているという。
投資の神様、ウォーレン・バフェット(Warren Buffett)氏を高く評価しているのはバイラー氏だけではないだろうが、彼はバークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)にファンドの最大のポジションを置き、自分の言葉を行動で示している。彼はバフェットとチャーリー・マンガー(Charlie Munger)の後継者を信頼しているという。さらに、バークシャーのキャッシュ創出能力を高く評価し、その雑多な事業は市場から過小評価されていると考えている。
「バークシャーが現在所有している中には、長期にわたって良いリターンを生み出せるような、実に強力なビジネスを提供しているものが本当にたくさんあります」とバイラー氏はバークシャーについて語った。
「バークシャーの今後のリーダーシップについては非常に良い感触を持っています。そして、その株はまだ非常に割安であり、彼らは誤解されていると思います」
バイラー氏のファンドで2番目にウェイトが大きいのは、JPモルガン(JPMorgan)だ。バイラー氏は、銀行全般にはあまり強気ではないとしつつも、このウォール街の巨大企業は預金水準が健全であり純利息収入も急増していることから例外的な存在だとしている。
「JPモルガンは、安定した預金水準を持ち、実際に純利息収入が伸びている素晴らしい銀行です」とバイラー氏は言う。
「多くの銀行は預金を減らしているため純利息収入が伸びていませんが、JPモルガンは非常に優良だと見られているため、他の多くの銀行から預金を奪っています」
JPモルガンを気に入っている理由はこれ以外にも、9.3倍という非常に安い予想株価収益率(PER)、2.9%の配当利回り、1.4兆ドル以上の現預金を持つトップクラスのバランスシートなどがあるとバイラー氏は指摘する。
メドトロニック(Medtronic)は、オゼンピック(Ozempic)やウゴービ(Wegovy)のような減量薬の人気拡大の懸念から13%下落した医療機器メーカーだ。その懸念とは、これらの新薬が何百万人もの患者に驚くほどの効果をもたらし、肥満に関連する医療機器や手術の需要に打撃を与えるというものだ。
しかしバイラー氏は、こうした懸念は誇張されすぎていると言う。彼はメドトロニックの先行きに強気で、業績予想は上昇していると指摘する。その上、優れたバランスシートと増加するフリーキャッシュフローを持つ利回り3.8%の企業の予想PERが14.1倍であることを考えると、株価は比較的割安だという。