専門家が何と言おうと、暗号資産はいまだ「インフレヘッジ」にはならない。なので、2つの点に特に気をつけよう

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インフレーションが経済にさまざまな形で打撃を与えている。暗号資産市場も例外ではない。

Jirapong Manustrong/Shutterstock

  • 財テクに関するアドバイスのすべてが正しいわけではない——特に暗号資産(仮想通貨)関連のアドバイスには問題のあるものが多い。
  • 誰かからアドバイスを得たら、それに従うことでアドバイスした側にどんな利益が生じるかを考えてみよう。
  • 絶対に儲かる投資など存在しないことを忘れないように。

2009年のビットコイン取引開始を皮切りに暗号資産(仮想通貨)が流通し始めたが、本当の意味での「暗号資産ブーム」が起こったのは2017年だと言える。一般の人々が分散型バンキングに関心を向け始め、誰もが「次のビッグウェーブ」に乗り遅れまいとした時期だ。

そのころから、私のような金融ジャーナリストは暗号資産への投資に関する主張やアドバイスを聞く(あるいは読む)ことが増えた。2018年から2019年にかけては、「誰もが退職金ポートフォリオの1%から10%を暗号資産に投資しておくべきだ」と主張する専門家もいた。

また当時は、暗号資産は「インフレーションに対するヘッジ」にもなるという声に何度も遭遇した。基本的にこの主張は、専門家らが暗号資産の価値は(少なくともほかの投資形態に比べて)インフレーションよりも速く高まると信じていたことを意味する。

アメリカ合衆国やほかの国の専門家たちだけでなく、諸機関も同じような立場をとった。破綻したFTXはアフリカでインフレーションに対するヘッジとして暗号資産を宣伝し、投資を始めた人にボーナスとして5ドルのプレゼントを約束した。

だが実際には、当時は暗号資産の大規模な取引が始まったばかりだったので、それがインフレーションに対するヘッジになるのか、それとも大失敗につながるのか、誰にもわからなかった。そして少なくとも現時点では、暗号資産は基本的に「インフレーションに対するヘッジ」にはならないことが明らかになった

では、どうやってそのような現実を反映していない投資アドバイスを見抜けばいいのだろうか? 将来的に実現すると考えられるアドバイスを見分けるには、何に注目すればいい?

1. 動機を見抜く

金銭に関するアドバイスでは、そのアドバイスの裏に隠されている動機を見抜く必要があると、インパクト・ファイナンシャル(Impact Financial)で認定ファイナンシャルプランナーとして働くテイラー・ジェシー氏は説く。つまりは、「お金の動きを追う」ということだ。

たとえば、暗号資産会社や同プラットフォームは当然ながら、顧客が自分たちのビジネスを利用して投資することで利益を得る。そのため、暗号資産は価値があり重要だと思いたいのだ。

同じことが、ここ数年メディアを賑わしてきた自称「暗号資産のプロ」にも言える。暗号資産に多くを投資している人や暗号資産を使ってビジネスをしている企業などから暗号資産に関するアドバイスを得たときには、彼らの描くデジタル通貨の未来像に疑いの目を向けるべきだろう。

「偽りの主張を見抜くには、自分で調査してデータを確認する必要がある」とジェシー氏は言う。「たくさんの情報源を利用して、さまざまな意見を突き合せて比べるべきだ」

2. 何も確実ではない

長期的な成長を願って投資を行うときはつねに、過去の成果が将来の利益を保証することはないと意識しよう。このことは株式市場にも、不動産市場にも、さらには金やほかの資産にも当てはまる。なかでも特に強く該当するのが暗号資産だ。何しろ、それらの多くは誕生してからまだ数年しかたっていないのだから。

ウェルス・グループ(The Wealth Group)の認定ファイナンシャルプランナーであるマイク・アール氏は一般論として、市場に関するあらゆる予測に対して、消費者は健全な範囲内で懐疑的であるべきだと言う。

「しばしば、最も大きくて最も断固とした声が鳴り響き、人々は権威をもって話す人に信頼を置いてしまう」とアール氏は説明する。

投資の世界には、絶対に確実なことなど何もないと肝に銘じておこう。真実であるにはあまりにもできすぎた話だと思えるときは、実際に真実ではない場合が多い。

※本記事は取材対象者の知識と経験に基づいて投資の選定ポイントをまとめたものですが、事例として取り上げたいかなる金融商品の売買をも勧めるものではありません。本記事に記載した情報や意見によって読者に発生した損害や損失については、筆者、発行媒体は一切責任を負いません。投資における最終決定はご自身の判断で行ってください。

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