ボストンを拠点とする不動産投資家兼デベロッパーのリッキー・ベリボー。
Courtesy of Ricky Beliveau
リッキー・ベリボーは、不動産業で自分のキャリアを築くとは思っていなかった。
ノースイースタン大学で金融を学んだベリボーは、学生時代に投資管理会社でインターンを経験し、2010年に卒業した後は同じ会社に就職した。
大学4年生のときに受けた不動産ファイナンスの授業で、不動産ビジネスについて知ることになったが、それまでは、不動産の定義は基本的に「自分が住む家」だった、と彼はInsiderに語る。
ベリボーは卒業後1年も経たないうちに、最初の物件であるボストンの集合住宅を購入した。FHAローンを使って集合住宅を購入し、2013年からはコンドミニアムのコンバージョンも試みた(編注:コンドミニアム・コンバージョンとは、集合住宅を独立したユニットに改造し、単独で販売できるようにすること)。金融の仕事を辞め、ヴォルネイ・キャピタル(Volnay Capital)という不動産ビジネスに専念するのに十分なお金を稼げるようになったのはその時である。
ベリボーは現在、不動産管理会社、開発会社、仲介会社など複数の不動産関連事業を経営しており、個人としては94物件を所有している。Insiderが確認した資産表によると、ヴォルネイ・キャピタルのポートフォリオとパートナーと共同所有する物件を合わせると、彼は1000以上のユニットを所有している。
ベリボーは、不動産業界でのキャリアのきっかけをくれたノースイースタン大学の教授に感謝しているし、卒業してからも自分で学び続けている。
彼が定期的に聞いているポッドキャストは、ボストンを拠点とする2人の投資家、レイ・ハートーとダン・ルービンの「Real Estate Addicts」だ。そして一番のお薦めの本は、不動産ブローカーであり投資家であり、不動産業界での日常を描いたリアリティショー『ミリオンダラー・リスティング(Million Dollar Listing)』のスターでもあるライアン・サーハント(Ryan Serhant)が書いた『Sell It Like Serhant』だという。
サーハントは不動産業を中心に自分のキャリアを築いてきたが、彼の本はキャリアで出世を目指すあらゆるプロフェッショナルのためのものでもある。
サーハントの本を読みながらベリボーの心に最も響いた成功の法則は、必ずしも不動産とは関係ない。それは、この著者が言うところの 「ボールが宙にある」という考え方だという。
「彼は 『ボールが宙に浮いている状態』について語っているんです」。ここで言うボールとは、さまざまなビジネスや収入を得る機会を表しているとベリボーは言う。
「100個のボールをジャグリングしているところを思い浮かべてください。それらのボールのいくつかは、最も重要な位置にあったり、いま取り組んでいる中で最も重要なものだったりして、より多くの注意を払う必要があります。でも、もしあなたが1つの大きなボールだけをジャグリングしていたとしたら、それが落ちるか消えてなくなってしまえば、他にできることは何もなくなってしまいます」(ベリボー)
例えば不動産業を営んでいる人にとって「複数のボールを動かしている」とは、ベリボーいわく「1人の顧客だけでなく、20人の顧客と仕事をしようとしている」という意味になる。彼のようなデベロッパーであれば、「建設中のプロジェクトが1つ進行中かもしれないが、それだけに取り組んでいるわけにいかないので次のプロジェクトを探して契約に結び付けなければならない」ということになる。
同書の中でサーハントは、最も多くのボールを宙に浮かべるというこの原則を「私に大きなアドバンテージをもたらした秘密」と表現している。
不動産業の免許を取得したサーハントは、アパートの賃貸を始めた当初も1つの取引に集中することはなかったという。サーハントは著書の中で次のように書いている。
「私は1軒の販売、1人の顧客に全エネルギーを注ぐことはしなかった。ある顧客とのクロージングから、そのまま別の顧客の内見に直行したり、タクシーの中で取引のオファーの電話を受けたりした。1つの取引で生きるか死ぬかを決めるようなことはしなかった。次の取引がすでに始まっていたからだ。このような大胆なアプローチによって、私は大きな利益を得ることができ、すぐにトップ・セラーとなったのだ」
サーハントが言う「より多くのボールを持っているとき」というのは、チャンスに囲まれ、同時にそのチャンスを活かしているときであり、新しい顧客を開拓し、多くの紹介をしてもらい、起きている時間を最大限活用しているときだ。
サーハントは、複数の取引や機会を同時にこなすことは可能だと考えている。
「5つ以上の案件をこなせるのに、なぜ1つのボールだけをつかむのか。もっと大きく考えよう」(サーハントの著書より)