配送担当者は、荷物の紛失や破損に関して顧客からクレームを受けることが多い。
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- ウォルマートやアマゾンなどの小売業者は、返品なしの返金詐欺によって数百万ドルを失っている。
- ある犯罪組織は、注文した商品が破損、届かなかったなどと偽ってくれる客を集めて詐欺行為を行っている。
- 404メディアとコートウォッチの調査では、レディットとテレグラム内のグループで、この詐欺のコツなどの情報交換を公然行っていることが判明したという。
アメリカ連邦検察当局によると、ウォルマート(Walmart)やアマゾン(Amazon)などのオンライン小売業者は、組織的な詐欺によって数百万ドル(数億円)の被害を受けているという。
2023年10月に封印されて提出された起訴状で連邦検事は、この犯罪組織が人をどのように勧誘し、「商品を購入して、購入代金を小売業者に返金させ、さまざまな手段で手元に残った商品を個人的に使用して営利目的で販売」するように仕向けたかを詳細に説明した。
この訴状は最近公開されたもので、最初にテクノロジーニュースサイトの404メディア(404 Media)がコート・ウォッチ(Court Watch)と共同で報じた。
アルテミス・リファンド・グループ(Artemis Refund Group:ARG)と呼ばれる組織の10人が、Eコマースで注文をした商品を使って、返金や返品で詐欺を数年にわたって続けていたとして、電信詐欺の共謀罪で起訴された。
アマゾンとウォルマートはInsiderのコメント要請に対してすぐに詳細な回答はしなかった。
起訴状によると、ARGは商品を注文した人から、詳細情報を入手し、それを利用してその人に代わってカスタマーサービス部門とやりとりしていたという。
もしアマゾンやウォルマートが返品なしの返金を受け付けた場合、ARGは何%かの手数料を受け取り、注文した客はそのまま商品を所有する。アマゾン、ウォルマート、ターゲット(Target)などの小売業者は、返送費用が販売者の負担となる場合、返品なしの返金を提供する制度がある。
もし売り手が商品の返送を要求してきた場合には、ARGはすり替えた商品などを送るという。
アマゾンやウォルマートから代替品が送られてきた場合、ARGはその商品を受け取って販売し、元の商品を所有する買い物客と売り上げを分ける。
起訴状によると、詐欺の成功率を上げるためARGはウォルマートの返品部門のスタッフを含む内部関係者を採用したという。
検察当局によると、数千人の買い物客がARGの手口を利用して、高額商品を中心に85%もの割引価格で商品を手に入れたという。2023年2月には、政府に情報を提供した人物がARGの詐欺を利用し、541.41ドル(約8万1500円)のケイト・スペード(Kate Spade)のハンドバッグを、同年5月には同じ手口でMacBook Proをアマゾンから入手した。
取引件数が非常に多いため、ARGはそれらをスプレッドシートで整理しており、検察当局によると、返品数があまりにも多かったためにある被告は保管庫を借りていたという。
アマゾンはこの詐欺によって70万ドル(約1億円)以上の損害が生じたことを認めているが、検察当局は、他の小売業者にもこのような詐欺で合わせて「数百万ドル(数億円)以上の損害が出ている」と述べている。
404メディアは、ソーシャルニュースサイトのレディット(Reddit)やインスタント メッセージング サービスのテレグラム(Telegram)内の多数のグループで、各小売業者への具体的な対応のアドバイスや、この詐欺のコツを公然と情報交換していることも発見した。404メディアは、レディットで10万人以上のフォロワーのいるr/illegallifeprotips2などの少なくとも6つのサブレディット(特定の領域向けに焦点を当てたコミュニティ)を見付けている。
また404メディアはまた、配送担当者の多くが単発の仕事を請け負うギグワーカーで、荷物の紛失や破損に関する顧客からのクレームの矢面に立たされることが多いとも指摘している。