米銀大手バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)が、上場投資信託(ETF)投資のコツと推奨銘柄を投資家向けに紹介している。
Photo by ANGELA WEISS/AFP via Getty Images
上場投資信託(ETF)は初心者にも取っつきやすい投資商品として人気を博しているものの、利益を出すのは経験豊富な投資家であっても簡単ではない。
ETFは他の投資信託と同じように、一つの商品を購入するだけで多くの株式銘柄を保有することができる。
個別銘柄を何十種類も吟味し、積極的にモニタリングしてベンチマークを上回る成績を目指すアクティブ運用のような手間がかからないし、ポートフォリオの分散化(によるリスク軽減)を図る手段としても有効だ。
さらに、米銀大手バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)のストラテジストチームによれば、ETFには投資信託では得られない明確な利点が他にいくつもある。
また、流動性の高さがそれだ。終値から算出される基準価格で取引する投資信託とは異なり、ETFはリアルタイムで変動する取引(所)価格で売買できる。
また、投資信託に比べて透明性が高く、手数料も平均60%以上安いので、長期的には数千ドル単位の節約になる【図表1】。
【図表1】投資信託(ミューチュアルファンド、左)との比較で分かる、上場投資信託(ETF、右)の長期的な節約効果。青色が元本+リターン、水色が経費、橙色が税金。
Bank of America
そうした利点を踏まえると、ETFの人気がここ数十年で爆発的に高まったのも不思議ではない。
近年では、各種株価指数に連動する商品や特定のテーマへのエクスポージャーを提供する商品など、ETFの選択肢も広がっている。
ほぼありとあらゆるビジネストレンドについて、大した目立たないトレンドであっても、その動向を追跡するETFが存在すると言っていい。
ETF投資「3つのコツ」
ここまでETFの多くの利点を紹介してきたが、とは言え、ETFに投資すれば絶対確実に確実利益が出るというわけでは全くない。
バンカメ内部で投資テーマや即実行可能なアイデアについて議論する調査投資委員会(RIC)の責任者を務めるジャレッド・ウッドアード氏は最近発行した顧客向けレポートで、ETF投資で成果を得るための「3つのポイント」を紹介している。
「ETFは非常に繊細に設計された商品が多く、投資家は商品ごとの差異を生み出す3つの要素、すなわち『一部銘柄への集中度』『組入資産(あるいは銘柄)』『(国際ファンドの場合)為替リスク』に注意を払う必要があります」
ウッドアード氏によれば、設計の優れたETF商品は、他のETFを年平均6%アウトパフォームするという【図表2】。
【図表2】上場投資信託(ETF)商品の「格差」は大きい。主要テーマについて、最大リターンと最低リターンの差を比較した。「日本株」「コミュニケーション(電気通信)」「製薬」「ESG」「リテール(小売り)」はピンキリとの結果に。
Bank of America
ウッドアード氏は投資家に対し、ETFを購入する前に銘柄の集中度をチェックするよう推奨する。組入銘柄の数を把握できるだけでなく、最大保有比率の銘柄がそのETFのパフォーマンスにどれだけ大きな影響を及ぼすかを把握できるからだ。
例えば、20銘柄で構成されるETFは120銘柄で構成されるETFより変動が大きくなる可能性がある一方で、40銘柄のうち10銘柄の保有比率が過半を占めるようなETFは、30銘柄で構成されるETFより変動幅が大きくなる可能性もある。
ひと握りの銘柄への集中度が高いETFは、パフォーマンスの揺らぎも大きくなる恐れがあり、注意が必要だ。
また「セキュリティ・メンバーシップ」、すなわちどんなアセット(資産)がETFに組み込まれているかもチェックすべきとウッドアード氏は指摘する。
先述の顧客向けレポートでは、具体的な例として2種類のハイイールド社債ETFが挙げられており、組み込まれた社債の信用格付け次第でリターンが極端に変わってしまうのだという。
ウッドアード氏は最後に、ETFが外貨へのエクスポージャーを取っているかどうかをチェックしておくことにも重要な意味があると指摘する。例えば、外貨の対米ドル相場次第でリターンには有意な差が生じる可能性があるという。
「海外の株式銘柄や債券に資産配分している投資家にとって、為替変動は大きな影響をもたらす可能性があります。(為替予約取引などの)為替ヘッジなしのETFは、国内の取引所で購入したものでも為替変動リスクにさらされるため、注意が必要です」
バンカメ推奨の優良ETF「15銘柄」
ウッドアード氏率いるチームは、ETF投資のコツを紹介するだけでなく、58カテゴリー400銘柄以上のETFを分析し、2023年の残り期間から2024年にかけてアウトパフォームが有望な銘柄をリストアップしている。
分析対象とされた株式ETFのうち、絶対基準で同カテゴリーのETFと比較して推奨される「1-FV」の投資判断と評価されたのは61本だけ。その中で「ソルティノレシオ」が1以上のETFはわずか15本だった。
ソルティノレシオ……投資信託やETFのリスク調整後リターンを表す指標の一つ。無リスク資産のリターンを差し引いた当該銘柄のリターンを、下落リスク(下方偏差)で割って求める。1以上なら下落リスクに強い堅実な銘柄と評価される。
ソルティノレシオが最高水準を示した4銘柄はエネルギーがテーマの商品で、いずれも過去3年間の平均年間リターンが50%超を記録している。
その他、金属などのコモディティ(商品)や、日本、インド、メキシコなど注目の株式市場に関係するETFが名を連ねる。
以下、バンカメが強気の投資判断を与え、なおかつリスク調整後リターンが良好な株式ETF15銘柄を列挙する。カテゴリー、ソルティノレシオ、過去3年間の平均年間リターンも付す。
Energy Select Sector SPDR Fund
Markets Insider
[カテゴリー]エネルギー
[ソルティノレシオ]1.96[過去3年間の年間平均リターン]50%
Fidelity MSCI Energy Index ETF
Markets Insider
[カテゴリー]エネルギー
[ソルティノレシオ]1.94[過去3年間の年間平均リターン]51%
Vanguard Energy ETF
Markets Insider
[カテゴリー]エネルギー
[ソルティノレシオ]1.94[過去3年間の年間平均リターン]51%
Invesco S&P 500 Equal Weight Energy ETF
Markets Insider
[カテゴリー]エネルギー
[ソルティノレシオ]1.92[過去3年間の年間平均リターン]56%
WisdomTree Japan Hedged Equity Fund
Markets Insider
[カテゴリー]日本
[ソルティノレシオ]1.89[過去3年間の年間平均リターン]25%
Global X MLP ETF
Markets Insider
[カテゴリー]MLP(エネルギー共同投資事業)
[ソルティノレシオ]1.66[過去3年間の年間平均リターン]36%
Global X MLP & Energy Infrastructure ETF
Markets Insider
[カテゴリー]MLP(エネルギー共同投資事業)
[ソルティノレシオ]1.37[過去3年間の年間平均リターン]31%
Global X Uranium ETF
Markets Insider
[カテゴリー]金属・鉱業
[ソルティノレシオ]1.20[過去3年間の年間平均リターン]37%
WisdomTree India Earnings Fund
Markets Insider
[カテゴリー]インド
[ソルティノレシオ]1.20[過去3年間の年間平均リターン]18%
iShares Currency Hedged MSCI Japan ETF
Markets Insider
[カテゴリー]日本
[ソルティノレシオ]1.20[過去3年間の年間平均リターン]17%
Xtrackers MSCI Japan Hedged Equity ETF
Markets Insider
[カテゴリー]日本
[ソルティノレシオ]1.19[過去3年間の年間平均リターン]17%
SPDR S&P Metals & Mining ETF
Markets Insider
[カテゴリー]金属・鉱業
[ソルティノレシオ]1.13[過去3年間の年間平均リターン]28%
iShares U.S. Insurance ETF
Markets Insider
[カテゴリー]保険
[ソルティノレシオ]1.07[過去3年間の年間平均リターン]20%
Pacer US Cash Cows 100 ETF
Markets Insider
[カテゴリー]クオリティ
[ソルティノレシオ]1.07[過去3年間の年間平均リターン]22%
iShares MSCI Mexico ETF
Markets Insider
[カテゴリー]ラテンアメリカ
[ソルティノレシオ]1.04[過去3年間の年間平均リターン]20%