2023年度第2四半期決算説明会に登壇した宮川潤一社長。
撮影:小林優多郎
「NTTの話は詭弁に過ぎない」
11月8日に開催された2023年度第2四半期決算説明会で、ソフトバンクの宮川潤一社長は、切り捨てるようにそう言った。
ソフトバンクの決算自体は好調だ。2023年度上期までの連結業績は、売上高が2兆9337億5800万円、純利益は3021億4100万円と、2023年度通期予想に対し、売上高は進捗率66%、純利益は72%とやや上振れている状況だ。
ソフトバンクのブランド全体でのスマホ契約数は、3000万を突破した。
撮影:小林優多郎
宮川氏自身も説明会の中で「期初に建てた目標に対して好調な進捗」と評価。また、2020年8月から掲げてきた「(法人を含む)スマホ契約数を2023年度内に3000万件」を11月6日に達成したことも明かし、安堵感を吐露していた。
宮川社長「NTT自身が直接関係ないと言っているように聞こえた」
NTTが11月7日に公開した「NTT法のあり方についての当社の考え 2」のスライド資料。
出典:NTT
そんな宮川社長が、冒頭のように語気を強めていたのは「NTT法」に関する問題に関連した質問が出た時だ。
詳細は別記事で解説しているが、現在NTTとNTT以外の通信キャリア間で、国営企業時代の資産を継承するNTTのあり方を定義する「日本電信電話株式会社等に関する法律(通称・NTT法)」の撤廃・変更について意見が真っ二つに分かれている。
11月7日の2023年第2四半期決算に登壇したNTT島田明社長。
出典:NTT
宮川社長が「詭弁」とコメントしたのは、ソフトバンクの決算説明会の前日、11月7日に開催されたNTTの2023年度第2四半期決算でのNTT島田明社長の発言を受けてのものだ。
「民営化時に政府に株式を割り当てた時点で、(公金を使って整備した電柱や局舎などのインフラ)資産は(主要)株主である政府に帰属した」(NTT島田社長)
これに対し、宮川社長は真っ向から反論する形をとっている。
「公社時代の継承資産を保有して運用しているのは、NTT東西。この東西の株はNTT持株会社が100%を保有しているんですよね。継承資産は株主のものであります。僕にはNTT自身が直接関係ないと言っているように聞こえた」(ソフトバンク宮川社長)
宮川社長は加えて「(NTTが)継承資産を有していることの当事者意識が希薄しているのであれば残念。一度、(継承資産を)国に帰すべきだ」と従来の主張を述べた。
NTT法撤廃が強行されれば「このしこりは10年、20年は取れない」
終始にこやかに決算説明や質疑応答に応じる宮川社長だったが、NTT法に関しては強い言葉をあえて使っているようだった。
撮影:小林優多郎
また、今回の問題が単なる通信事業者としての競争に関わる問題だけではなく、通信業界全体やその通信を使う今後の国民生活に大きな影響を残すと警鐘を鳴らした。
「結局NTTとNTT以外では意見が対立しており、もし(NTT法撤廃などの形で)押し切られたとしても、最後まで我々は腹落ちしない。だから、(将来的にも)ずっと嫌いなポジションになってしまう。
今まで通信会社の我々は、協力し合えれば協力して、技術も互いに語り合って通信業界を引っ張ってきた。こんなことで分裂してしまっていいのか。
お互いに腹を割って話し合いをきちんとして、誰かが一方的に決めるのではなく、議論をした上で次のステージに行かないと、このしこりは10年、20年は取れないと思う」(宮川社長)
現在、NTT法を在り方に関する議論は、自民党内のプロジェクトチームで実施されている。ただ、宮川社長は議論の仕方についても「法律をなくす議論は国会ですべきではないか」と不満を漏らす。
政府は防衛費増額の原資としてNTT株の売却を検討している。11月中にはプロジェクトチームから提言が提出される見通しで、今後もNTTとNTT以外の通信事業者間の意見の対立は続きそうだ。