OpenAIのサム・アルトマンCEO(左)と、マイクロソフトのサティア・ナデラCEO。
Joel Saget/AFP and Loren Elliott via Getty Images
オープンAI(OpenAI)のChatGPTやグーグル(Google)のBardといった生成AIツールは、ユーザーの質問に回答する際、著作権で保護された素材を用いることも多い。しかし大手テック企業は、著作権侵害の申し立てがあった場合、その責任を負うべきはユーザーであると主張している。
先ごろ公開された米国著作権局の資料によると、グーグル、オープンAI、マイクロソフト(Microsoft)は同局へ寄せたコメントの中で、ユーザーと生成AIツールとの間で発生したやりとりについてはユーザーに責任を負わせることを要請している。
著作権局は、AI、および生成AIツールの基礎となっている大規模言語モデル(LLM)のトレーニングのためテック業界が所有コンテンツを使用することに対して、新たな規則の制定を検討している。
多くの大手テック企業が著作権局にコメントを提出しており、そのほとんどが生成AIに課すあらゆる種類の新たなルールに反対するものだった。また、著作物に対価を支払わなければならなくなれば、AI分野で計画していることが台無しになるだろうとの意見を伝えている。
どの企業も、AIツールのトレーニングにインターネットからスクレイピングした大量の著作物を利用しており、それらの著作物に対して対価を支払っていないことや、AIツールが著作物を表示する可能性があることについては否定していない。この場合はすべてユーザーに責任がある、というのがグーグル、オープンAI、マイクロソフト(マイクロソフトはオープンAIに巨額の投資をしている)らの意見だ。
グーグルは、AIツールが「学習データからコンテンツを複製させられた」場合、そのようなデータが表示されるのを防ぐための努力をした開発者に責任はないと主張している。
「AIシステムがユーザーから権利を侵害するアウトプットの生成を促される場合、その結果として生じるすべての責任は、侵害の直接的な原因行為を自発的に行った当事者であるユーザーに帰属してしかるべき」(グーグルが著作権局に寄せたコメントより)
さらにグーグルは、自社のような開発企業が著作権侵害の責任を負うことになれば、「あまりに重い責任」が生じることになるだろうと付け加えている。それは、AI開発者たちが、著作物が表示されるのを防ごうと努力したからだという。
AIツールを動作させるために著作権で保護された訓練データを使用する責任を開発者に負わせることは、コピー機や録音機・録画機に著作権侵害の責任を負わせるのに等しいと、グーグルは主張する。
マイクロソフトも、コピー機だけでなく「カメラやコンピュータ、スマートフォン」を使って著作権を侵害する作品を作成しても、その行為に対して責任は問われないと指摘している。生成AIツールはカメラと同様の「汎用ツール」である、というのがマイクロソフトの主張だ。
「ユーザーは、責任をもって設計された通りにツールを使用することに対し、責任を負わなければならない」(マイクロソフトが著作権局に寄せたコメントより)
オープンAIは、自社のツールが著作権で保護されたコンテンツを表示した場合、「その『自発的行為者』はユーザーである」と主張する。著作権法における自発的行為者の定義は通常、「誰がこの複製物を作ったのか」という質問によって答えが得られる。
「アウトプットに関する権利侵害の申し立ての評価は、まずユーザーの分析から始まる。
結局のところ、ユーザーからのプロンプトがなければ出力はない。また、アウトプットの性質は、求められた内容に直接の影響を受ける」(オープンAIが著作権局に寄せたコメントより)
裁判所はこれまで、機械には「心理状態」や人間レベルの思考が欠如しており、責任を問うに足る十分な意思の働きがあるとは見なされないと判断してきた。
しかし、2019年に『コロンビア・ロー・レビュー』に掲載された論文が示唆するように、技術の進歩に伴って生成AIのようなツールが運用レベルに達すれば、その背後にいる企業が責任を問われる可能性がある。
ビッグテックをはじめAI開発に携わる企業は、自社のAIツールが学習や能力において人間のようであることを頻繁に打ち出している。それは、著作権局に提出されたコメントの多くでも同様だ。
すでに世界中の多くの政府や規制機関が、AIに関する新たな法律を提案または検討している。