アメリカ初の商用二酸化炭素回収プラントが稼働

大気中に放出された二酸化炭素が地球温暖化の原因となっている。

大気中に放出された二酸化炭素が地球温暖化の原因となっている。

Reuters/Aly Song

  • アメリカ初の商用炭素回収プラントが稼働したとニューヨーク・タイムズが報じている。
  • 大気中から回収された二酸化炭素はコンクリートや地中に注入され、そこで永久に閉じ込められる。
  • このプラントはまだ比較的小規模だが、炭素回収技術は気候変動を食い止めるのに役立つだろう。

カリフォルニアは今、気候変動との戦いにおける新たな本拠地になっている。

カリフォルニア州トレイシーでエアルーム・カーボン・テクノロジーズ(Heirloom Carbon Technologies)が空気中から炭素を取り出すアメリカ初の商業プラントを稼働させたと2023年11月9日にニューヨーク・タイムズ(NYT)が報じている。

現時点で同プラントが除去できる二酸化炭素は年間1000トンで、これは200台の自動車から排出される排気ガスにほぼ匹敵するという。

操業規模はまだ比較的小さいが、同社には拡大計画がある。シャシャンク・サマラ(Shashank Samala)CEOは、プラントを増設し、年間数百万トンの除去を達成したいと語っている。

スポンジのように炭素を捉える

エアルームの共同創業者兼CEOのシャシャンク・サマラ。カリフォルニア州ブリスベンにあるエアルーム本社にて。

エアルームの共同創業者兼CEOのシャシャンク・サマラ。カリフォルニア州ブリスベンにあるエアルーム本社にて。

JENN CAIN/Getty Images

エアルームの公式サイトによると、同社は直接空気捕獲技術(DAC)で「石灰岩をスポンジのように」用いて空気中の二酸化炭素を吸い取るという。

プラントではまず石灰岩を焼いて二酸化炭素を除去し、酸化カルシウムの細かい白い粉末にする。その後、酸化カルシウムに水を加え、できた混合物を金属トレイに広げて外気にさらすと、混合物は大気中の二酸化炭素を吸収して石灰岩に戻る。

そうしてできた石灰岩は、ちょうど「スポンジを繰り返し絞るように」同じプロセスが繰り返される。回収された二酸化炭素はコンクリートや地中に注入され、そこで永久に閉じ込められるという。

この全工程は再生可能エネルギーで動いており、同社は石油・ガス会社からの投資を受け入れないことを公約しているとNYTは報じている。

この技術を開発した理由

大気中の過剰な二酸化炭素は熱を閉じ込め、地球を温暖化させる。人間がこのまま二酸化炭素を放出し続ければ、海面が上昇して自然災害が頻発し、人間の健康寿命が短くなる未来に向かうと専門家は指摘する。

世界自然保護基金(WWF)とボストン・コンサルティング・グループが最近発表したレポートによると、化石燃料を現在のペースで使い続けた場合、2050年だけでも全世界で約2億年分の人間の健康寿命が失われる(死亡あるいは障害を負う)ことになるという。

そのような未来を避けるには、温室効果ガスの排出量を削減することが極めて重要だ。すでに排出された二酸化炭素を一部でも除去できれば、気候変動を早く食い止めることができるだろう。

アメリカエネルギー省のジェニファー・グランホルム(Jennifer Granholm)長官は、NYTにこう語っている。

「再生可能エネルギーによる炭素排出削減だけでは、気候変動による被害を食い止められないことは科学的に明らかだ。直接空気捕獲技術は、炭素汚染を除去するための画期的なツールになるだろう」

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