monzenmachi/Getty Images
「セルフブランディングって、どうやればいいんですか?」
最近、そんな質問をされることが増えました。
私はメディアの連載や取材対応、講演・イベントへの登壇、書籍出版などの活動が多いため、「どうすれば自分にそのような声がかかるのか。機会を得られるのか」と聞かれるのです。
特に、BtoCビジネスを手がけている個人事業主の方などは、セルフブランドの価値を高めることで顧客獲得のチャンスが増えます。営業活動をしなくても依頼が舞い込むようになるため、セルフブランド構築への意欲が高いのです。
セルフブランディングへの意欲が高まっているのは、現在企業に勤務している方も同様です。メディアへの露出や登壇などによってセルフブランドを築き、ゆくゆくは独立したいと考えている方が増えていると感じます。
また、メディア露出・登壇・書籍出版までは考えていなくても、社内でやりたいことを実現する、昇格する、転職を成功させるといった目標に向け、自身の「強み」を強化したいと考えている方が多数いらっしゃいます。
「キャリア自律」という概念が広がり、転職が当たり前になっていく時代、セルフブランディングの意識が高まっていることを実感します。
そこで、セルフブランディングを築く方法について、私自身が実践して効果を得られた経験も踏まえて、6つの視点からお伝えします。
1. マイノリティの中で価値をつくる
まずは自社内・自身のビジネス分野内で、周囲を見渡して「みんながまだ手をつけていない」「第一人者的な存在がいない」テーマやドメインを見つけましょう。
おそらく今、世間で「インフルエンサー」として活躍している人たちも、最初はそのように自分の得意なテーマを開拓していったはず。
マイナーでも何らかのテーマを見つけて情報収集し、誰よりも詳しくなることを目指してみてください。
私の新人時代は人材業界の法人営業として、先輩たちが攻めていなかった「流通業界」にフォーカスして市場情報の収集や顧客開拓に注力した結果、「流通の森本」と言われるようになったのが初のセルフブランディングでした。
それによって流通業界に関する情報や案件がどんどん私のところに集まってくるようになり、社内トップの業績を挙げることができたのです。
その次には「ベンチャー」領域に特化したことで、「スタートアップの幹部人材に強い転職エージェント」という現在のブランドの確立につながりました。
マイナーなテーマであっても、何か強い領域を持つことで、社内外のネットワークを拡大することができると感じます。
2. 自社内の「評価軸」を理解する
セルフブランドを築く第一歩は、自社内での評価を上げることです。高く評価されれば、新たな取り組みをするチャンスが手に入り、経験値を高めていくことができます。
しかし、「頑張っているのに評価されない」と嘆く声もよく聞こえてきます。そういう方々は、「自社では何をすれば評価されるのか」を正しく理解していないケースが多く見られます。
今一度、自社の「評価軸」「評価指標」を確認してみてください。在籍する企業によってグレードや職制ごとに設計されているはずです。それに基づいて自分なりのKPIを設定して行動すると、評価を得やすくなるでしょう。
なお、「全社で売上ナンバーワン」といった高度な目標を掲げても、到達はなかなか難しいものです。しかし、売上数字などの目立った成果以外にも、さまざまな切り口で「グッドプラクティス(優れた実践・事例)」を生み出すことは可能です。
「オンリーワン」を意識し、自身が得意な行動で評価されることを目指してみてください。
3. 成果を分析し、再現性を持たせる
自身の目標において成果を出せたら、「なぜ成果が挙がったのか」を振り返って分析してみましょう。
例えば、社内で表彰を受けて「おめでとう」「どうやったの」などと言われた時など、「ラッキーだったんです」「お客様に恵まれました」「上司やメンバーが支えてくれたおかげです」などといった言葉で終わらせてはいないでしょうか。
そうではなく、自分の戦略や行動、工夫したことがどのように功を奏したのかを認識しておきましょう。必ずロジックがあるはずです。
成功ストーリーを組み立てれば、これからも「再現」することができます。
過去の実績からは「信用」を得られますが、「信頼」=「未来への期待」を得るためには、「再現性」が重要です。継続して成果を挙げ続けるために、自身がやってきたことの分析を欠かさないでください。
4. 成功のノウハウ・ナレッジを共有する
成果の要因を分析したら、そのノウハウやナレッジを独り占めせず、アウトプット・共有していくことをお勧めします。
「ペイフォワード」という言葉があります。自分が受けた善意や恩を、他の誰かに渡し、先へつないでいくことを意味します。「恩送り」とも表現できます。私はこの発想がとても大切だと思います。
自身が得たものをアウトプットして多くの人に渡していくことで、いずれ別の形で必ず返ってくると確信しています。
私の場合、社内勉強会を自身で企画し、ノウハウ共有するところから始めました。最初は数名の参加者のみでのスタートでしたが、全社的に評判になり各地の支社から声がかかるようになりました。その後、リクルートグループ各社にまで波及し、その先には、同業界の中で研修を行うまでに発展しました。
5. SNSで発信する
昨今は、メディアに出演したり書籍を出版したりするまでもなく、SNSを活用して自分を発信することができます。
X(旧Twitter)、Facebook、YouTube、TikTokなど手段が多様化していますので、自分に適したツールで発信することを習慣づけるといいでしょう。
しかし、「SNSを活用すればいいのは分かっているけれど、自分には自信を持って発信できるものがない」という方も多いのではないでしょうか。
その場合、自身が興味を持っているテーマ、強みとしたいテーマについて、情報収集に力を入れてみるのも一つの手です。
そして、得た情報の中で、心動かされた内容を「想い」として発信することをお勧めします。数十万人のフォロワーのいる友人曰く「日記を書くように毎日感じたことをつぶやく」。そのつぶやきに返事をくれる人を1人、2人と増やしていけばいい。時間帯や文字数、つぶやき方など、効果的なノウハウは後から学んでいけばいい。まずは“つぶやく”ことを習慣にすることが大事……と言います。
実際私も、LinkedInなどでそのような発信をしている方に注目し、常にその人の発信をチェックしています。
そこからネットワークが広がり、同じテーマや思いを持つ仲間を獲得していける可能性があります。
6. 副業を利用して新たな経験を積む
昨今、副業が進化しています。副収入を得る「副業1.0」から、自分のスキルを活かす「副業2.0」へ移行し、現在では未知の領域のWILL((やりたいこと・なりたい姿)にチャレンジする「副業3.0」が広がっています。
今は、会社を辞めて転職しなくても、副業を通じて現職では得られない経験ができる環境が整ってきました。
副業も活用して新たな知見やスキルを増やし、セルフブランディングにつなげてみてはいかがでしょうか。
今の時代、どんな人にとってもセルフブランディングは重要です。自分に合ったやり方から始めてみてはいかがでしょうか。
※転職やキャリアに関して、森本さんに相談してみたいことはありませんか? 疑問に思っていることや悩んでいることなど、ぜひこちらのアンケートからあなたの声をお聞かせください。ご記入いただいた回答は、今後の記事作りに活用させていただく場合があります。
森本千賀子:獨協大学外国語学部卒業後、リクルート人材センター(現リクルートキャリア)入社。転職エージェントとして幅広い企業に対し人材戦略コンサルティング、採用支援サポートを手がけ実績多数。リクルート在籍時に、個人事業主としてまた2017年3月には株式会社morichを設立し複業を実践。現在も、NPOの理事や社外取締役、顧問など10数枚の名刺を持ちながらパラレルキャリアを体現。2012年NHK「プロフェッショナル〜仕事の流儀〜」に出演。『成功する転職』『無敵の転職』など著書多数。2男の母の顔も持つ。