YouTubeを率いるニール・モーハン。
Tom Vickers/MOVI Inc
YouTubeのNFLサンデーチケット(編注:日曜午後に行われるNFLの全試合を視聴できるパッケージ)に対する大きな賭けは、成功しているのかもしれない。Insiderが確認した社内用の成長指標データによると、YouTube TVはグーグル(Google)の中で過去1年に最も急成長したプロダクトになっている。
高い継続率
YouTube TVは、2022年10月から2023年10月にかけて48%成長した。このことは、グーグルの自社プロダクトの成長と競合プロダクトとを比較した業績状況を追跡する社内システム「マジックアイ(Magic Eye)」のデータに示されている。
同データによると、テレビストリーミングサービスのYouTube TVは、エンゲージメントもグーグルの全プロダクトの中で最も高く、継続率も最高だった。YouTube TVのユーザーの52%が頻繁に利用しており、利用されなくなったYouTube TVアカウントはわずか8%にとどまっている。
レギュラー番組とオンデマンド番組のセレクションを提供するYouTube TVは、2017年に始まった。同年12月、グーグルとNFLはサンデーチケットのほとんどの試合をYouTubeで配信する契約の締結を発表した。
YouTube TVの加入者がアドオンとして利用できるこのパッケージサービスに対し、グーグルは年間約20億ドル(約3000億円、1ドル=150円換算)を支払っているとウォールストリート・ジャーナルは報じている。
YouTubeは全体として、グーグルの急成長収益部門であり続けている。同部門の2023年第3四半期の広告収入は、前年同期比12.5%増となる79億5000万ドル(約1兆2000億円)だった。アルファベット(Alphabet)のルース・ポラット(Ruth Porat)社長兼最高投資責任者は、同社の第3四半期決算説明会で、最も明るい材料としてYouTube TVの加入者増を挙げた。
Insiderは同社にコメントを求めたが、広報担当者から返答はなかった。
タブレットはYouTubeと好相性
グーグルの内部データによると、テレビは前年比で最も急速に成長しているサービス形態である。同社は最近開催されたイベント「Brandcast(ブランドキャスト)」で、テレビをフル活用していることを明らかにした。同イベントでは、ユーザーがテレビでYouTubeを見ている時に流すスキップ不可の30秒広告など、テレビを重視した広告主向けサービスが多数発表された。
また、匿名を条件にInsiderの取材に応じた関係筋によれば、グーグルの広告販売業者も、広告主がテレビ広告予算をもっとYouTubeに振り向けるよう積極的に働きかけているという。
興味深い話がもう1つある。2021年にグーグルのマジックアイのアナリストが行った社内調査研究で、タブレットがYouTubeの視聴時間を増やすのに適していることが分かったのだ。
「(グーグルによる)タブレット事業への再参入後、YouTubeの視聴時間が大幅に増加した。一方、タブレット以外の形態での視聴時間はわずかに減少しただけだった」と、調査結果のサマリーに書かれている。
このレポートが、その後のグーグルのプロダクト決定に直接影響を与えたかどうかは不明だ。しかし、ある社内スライド資料には、この報告書はグーグルの経営陣が「エコシステムをよりよく理解し、プロダクトの業績を把握する」のに役立つように考えて作成されたと書かれている。
グーグルは2022年、Pixel Tabletで再びタブレット事業に参入することを発表した。グーグルは以前、アップル(Apple)のiPadに対抗するのを断念する発表しており、再参入は大きな方針転換だった。