歴代コンソメパンチ。
撮影:杉本健太郎
この11月、カルビーの「ポテトチップス コンソメパンチ」が発売45周年、「ポテトチップス コンソメW(ダブル)パンチ」も発売20周年を迎えた。11月9日、カルビーはこれを記念し新商品「ポテトチップス コンソメM(メガトン)パンチ」(税込み285円前後)の発売会見を開催した。
カルビーのポテトチップスは、2022年度には年間約9億3000万袋を生産し、約909億円を売り上げる。国内のポテトチップス市場ではシェア率70%を超える人気商品だ。
会見には45年前コンソメパンチを開発した同社・元上級常務執行役員の阿紀雅敏さんが出席。コンソメパンチの開発秘話を明かした。
開発のヒントは「フレンチのスープ」
左端がポテチの定番商品「コンソメパンチ」の産みの親の阿紀雅敏さん。
撮影:杉本健太郎
元祖コンソメパンチ開発のきっかけは、当時「湖池屋」に次ぐ後発メーカーとして、関東エリアでシェアを獲得できていなかったカルビーが、うすしお味、のりしおに次ぐフラッグシップとなる商品を必要としたことだったという。そこで目をつけたのが、ポテトチップスがよく食べられているアメリカで流行していたビーフ味だった。
ただ、ビーフ味をそのまま持ってきても日本人の口に合わないと考え、注目したのがコンソメスープだった。カルビーを創業した松尾孝さんが都内のフレンチレストランで飲んだコンソメスープがヒントになったという。阿紀さんも後日その店でコンソメスープを飲み、開発に役立てた。その出来事から、「日頃からいろんな食経験をしていることが食製品の開発には大事」(阿紀さん)だと学んだという。
隠し味の梅肉パウダーがロングセラーの秘密
コンソメパンチリニューアルの軌跡。
撮影:杉本健太郎
45年続くロングセラーのコンソメパンチだが、1978年11月の発売当初は苦戦していた。そこで、「ある素材」を入れた結果、現在まで続く人気商品になった。
その素材とは、隠し味の「梅肉」だ。
阿紀さんは当初、ビーフの味が後を引きすぎてリピートされないと分析。そこで一度ビーフの「味を切る」ために酸味を加えることにした。数ある酸味料のなかで注目したのが梅肉だった。隠し味として梅肉をフリーズドライしたパウダーを加えた結果、売り上げは急伸したという。
酸味や辛味を使って味を切り替える手法は、現在も使われており、同じくロングセラー商品ののりしおにも、唐辛子が隠し味として使われている。辛味を感じない程度の隠し味で「味を切る」ことで、何枚も食べたくなるような味わいにしているという。
コンソメパンチは45年間の間に細かい微調整を含め10回以上の味のリニューアルをしている。
阿紀さんは在籍当時、国内で飲めるコンソメスープはほぼ全て飲んで味のマッピングをしていたという。まさに「変わらないために、変わり続ける」を地で行く改良を続けた結果、うすしお味に続く人気2位の座についている。
なぜコンソメ「パンチ」なのか?
現在でも現役時代の癖でポテトチップスの袋を開けると、まず匂いを確認するという。
撮影:杉本健太郎
ところで、現代から振り返ると、なぜネーミングを「コンソメ」ではなく「コンソメ“パンチ”」としたのか、よく考えれば不思議なところだ。
実はこのネーミングにも、創業者・松尾さんの意向が反映されているという。1978年当時「パンチ」は流行語で、「パンチを利かす」などの表現で「元気が良い」「勢いがある」といったイメージがあった。
松尾さんは、俳句や短歌で5・7・5のリズムが大事にされていることから、日本人にとって5と7の文字数が重要だとし、商品名の語感を大事にするように指示したという。
同社ポテトチップスチームブランドマネジャーの井上真里さんによると、現在もカルビーポテトチップスのロングセラー商品は「フレンチサラダ」「しあわせバタ~」など7文字が多い。今後の発売商品名も5文字、7文字で発売をする予定だという。