2023年度第3四半期決算説明会に登壇した寺尾玄社長。
画像:筆者によるスクリーンショット
「非常事態だと考えている」
11月10日に開催された2023年度第三四半期決算説明会で、バルミューダの寺尾玄社長は厳しい表情でそう話した。
バルミューダの業績はコロナ禍があけて家中需要が落ちてから、携帯電話事業の終了や円安などの要因もあり落ち続けている。
10日には、5月に続き2度目となる2023年度業績予想の下方修正を発表。最新の予想では、売上高133億円(前回予想159億5000万円)、純損失20億円(同12億5000万円)とした。
「大幅に人員を減らす」200人規模に増えた従業員にメス
「緊急事態」への対処は大きく分けて3つ。
出典:バルミューダ
寺尾社長は決算説明会で「最速での黒字化を目指す」とし、業績改善のための方策を以下の3つの視点でまとめた。
- 売上総利益率の改善……原価の低廉化、設計と製造工程の見直しを実施。値上げも検討しているが、一斉値上げではなく新商品から適正な価格にしていく。
- 固定費の圧縮……今後の大幅な売上高減を想定し、各種費用、組織・人員体制の最適化を図る。
- 家電カテゴリーの積極的な展開……キッチンやエアのカテゴリーに集中して新規を含む商品を展開する。円安傾向を考慮し、タイ、シンガポール、マレーシアでのブランド展開も11月から開始する。
特に大きい点は2つ目の「固定費の圧縮」だ。組織や人員体制の最適化は、いわゆる「人員削減」を意味する。Business Insider Japanの「リストラなのではないか」という質問に対し、寺尾社長は否定しなかった。
バルミューダは携帯電話事業の参入を含めたIT事業で「(当時)200〜300億円の売上を目指していた」(寺尾社長)とし採用を強化。2018年には102人だった従業員数は2022年には213人まで急拡大していた。
一方、コロナ後の市況変化を受け「今期大幅に人員を減らしている」と寺尾社長は明言する。
具体的な数値は示されていないが、図表からは、2023年には200人を超える規模から150人前後の規模まで事業を縮小させるように見える。
出典:バルミューダ
最終的な人員削減の規模について、寺尾社長は「来年の予算で売上高がどうなるかは確定していない」とし、具体的な数字の言及は避けたが「以前のように200億円を目指さない人員数で臨んでいく」と答えた。
得意なキッチンや空調家電を強化、東南アジアにも手を伸ばす
直販価格4万2900円(税込)の「BALMUDA The Plate Pro」。
撮影:小林優多郎
大幅な事業規模の縮小を図るバルミューダだが、対応策の1つ目と2つ目はいずれも支出を抑える防衛策だ。
3つ目の「家電カテゴリーの積極的な展開」こそが今後の行く末を決める。
新商品について寺尾社長はある程度の自信を見せており、特に9月に発表したホットプレート「BALMUDA The Plate Pro」は、「想定を上回る非常に良好」として「来年以降も重要な商品になってくる」と厳しい状況下にあって、期待を寄せる製品だとした。
バルミューダは得意なカテゴリーでの新商品展開と販路拡大も仕掛ける。
出典:バルミューダ
また、11月6日にはタイ、シンガポール、マレーシアでの「BALMUDA The Toaster」と「BALMUDA The Pot」の展開も発表。決算説明会では円安傾向の中での外貨獲得の重要性が強調された。
ただ、直近の動向を見ると北米や韓国の売り上げも下がっており、日本以外でのブランド力や需要の低下は否定できない。
なぜバルミューダは、日本や韓国で売上が落ちる中、東南アジアに勝機を見出したのか。
寺尾社長は「(3地域では)以前より並行輸入でデパートで売られていた」「昨年から商談をしている中で、良いご縁もあったので決めた」と、これまで表面化していなかったバルミューダ製品への需要に期待していることをうかがわせる。