私の息子は脳性まひ児で、手足に運動機能障がいがある。そんな息子が、最近リハリビで着替えの練習を始めた。
汗っかきで敏感肌の息子は、綿100パーセントの服でないと肌が荒れてしまう。ただ、綿100パーセントの服は、伸びにくく、着替えの練習には向いていない。
そこで、首元を大きく開くことができる、スナップボタン付きの服を探していた。だが、乳児サイズのものはあっても、幼児サイズになるとなかなか見つけることができない。
誰でも着脱しやすいインクルーシブデザインのキッズウェア
IKOU Waffle Knit Tee 税込8700円
撮影:小野瀬わかな
そんな中、困りごとを全て解決してくれる子ども服を見つけた。
IKOUというインクルーシブブランドのもので、障がいのある子ども達と、その親たちの意見を活かして作られているという。
肩にはボタンがあるため、首周りが大きく開く。
撮影:小野瀬わかな
着替え練習中の子どもをはじめ、障がいがあるため腕の曲げ伸ばしがしづらかったり、一人で着替えることが難しく介助者が手伝ったりする際にも、着脱しやすいデザインとなっている。
見た目もとてもかわいい。配色ステッチもポイントになっていておしゃれだ。
ふわふわのオーガニックコットン
撮影:小野瀬わかな
実際に、この洋服で息子とお着替えにチャレンジしてみた。
肩のボタンを外した状態で、頭にトップスを被せる。
すると、座位が不安定な息子でも、片手で自身の体を支えながら、もう片方の手で簡単にスポッと被ることができた。
撮影:小野瀬わかな
首元が大きく開く上に、やわらかく伸縮性のある生地のため着替えやすいようだ。
素材は、農薬・肥料の厳格な使用基準を守って栽培された良質なオーガニックコットンだ。
肌触りがとても優しく、敏感肌の息子は初めて着た時に「ふわふわ〜気持ちいい〜」と言っていた。
値段はちょっと高めかも
撮影:小野瀬わかな
素材面も機能面もデザインも、全てのニーズを満たしてくれるかわいいキッズウェア。
ネックを挙げるとすれば、お値段だ。Waffle Knit Teeは、税込8700円。
お出かけ着としてはいいが、毎日砂や泥に汚れてもガシガシ洗えるようなデイリーウェアや保育園着として着るにはちょっとお高めに感じる。
しかし、IKOUの洋服だとやはり着替えやすいようで、機嫌を損ねることなく練習に取り組んでくれる。その機会を少しでも多く持てるよう、集めていきたいと思っている。
障がい児育児の経験から生まれたインクルーシブブランド
撮影:小野瀬わかな
IKOUを手がけるのは、株式会社Haluの松本友理さん。
彼女の息子は脳性まひによる運動機能障がいがあるそうで、障がい児育児の経験から起業に至ったという。
世の中のベビー・キッズ用品には、「障がい児専用」と「健常児にしか使えないもの」とがあり、前者は多くの場合、見た目よりも機能性に特化しており、選択肢も非常に少ない。
障がい児は「使える」ものの中から選ぶしかないという現実に直面した松本さんは、「障がいのある子もない子も使えるプロダクトを作りたい」とIKOUをスタート。
私も障がい児を育てる一人の親だが、いち消費者として、「選択肢がある」ことの喜びをIKOUを通して知った。
そして、誰もが使いやすいデザインのおかげで、息子は「できた!」という経験を一つ増やすことができた。
障がいの有無に関係なく、誰もが心地よく使えるプロダクトデザインは、機能だけではなく心にも豊かな経験を与えてくれるのだと教えてくれた一着だ。