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世界広告主連盟(World Federation of Advertisers)とメディア投資分析会社Ebiquityによる最近の調査で、回答者の60%が2024年は広告予算を増やす予定だと答え、企業のマーケティング担当者たちが2024年に向け慎重ではあるが前向きに考えていることが明らかになった。
この調査結果は、世界の年間広告費500億ドル(約7兆5000億円、1ドル=150円換算)以上を占める大手広告主92社の意見をまとめたものだ。
2022年の時点で「2023年にメディア向け予算を増やす」と答えた回答者はわずか29%だったのと比べると、今回の数字は最近の広告不況が収束しつつあることを示す一つの指標といえる。
2023年調査の残り40%の回答者のうち、およそ3分の1(33%)は2023年と同水準の広告予算を2024年も維持するつもりだと答えている。「大幅な減少」を予定していると答えたのはわずか2%で、「わずかな減少」を見込んでいるのは5%だった。
世界広告主連盟のステファン・ロルケ(Stephan Loerke)CEOはこう語る。
「私はこの結果を驚きを覚えながらも好意的にとらえています。今の情勢を考えれば、誰もが先行きはもっと不透明なものだと思っていたのではないでしょうか」
それでも、中東の紛争がさらにエスカレートし、原油価格が上昇すれば、この楽観論は頓挫する可能性があると彼は付け加える。
匿名を条件にBusiness Insiderの取材に応じたある大手食品ブランドのメディア責任者は、2023年に入る前は原材料やエネルギーなどのコストが大幅に上昇し、値上げを余儀なくされるのではないかと懸念していたという。しかし、2023年は予測よりもはるかにまともな結果となった。
「小売店は想定外の値上げを受け入れ、消費者も値上げを受け入れました」とその幹部は語る。
今年は3分の1強(35%)の回答者が、2024年に長期的なブランドマーケティング活動の割合を増やすと答えた。1年前にそう答えていた回答者は21%にとどまった。その一方で、より即効性のある結果につながるマーケティング、つまりパフォーマンス・アクティビティの組み合わせを増やすとした回答者は今年は21%で、昨年の28%から減少している。
ある飲料ブランドのメディア責任者は、「これは良い兆候です。ブランディングにお金をかけるということは、長期的な視点で考えているということですから」と語る。この幹部は、2024年に向けて明るい兆しはあるものの、完全に元に戻るわけではないと言い、次のように続ける。
「予算がカットされるような厳しい時期に元の水準に戻すには、社内の財務担当者との交渉が少し必要になるでしょう」
2024年の広告予算増額で主に恩恵を受けるのは動画広告で、回答者の85%が例えばコネクテッドTV(CTV)広告への出費を大幅に増やす、または若干増やすと答えている。一方、新聞や雑誌などの紙媒体、リニアTV、ラジオはすべて、2024年にはほとんどのマーケティング担当者の持つ予算対する割合が少なくなる可能性が高い。
リテールメディアおよびコマースメディア、CTV、デジタルOOH広告(交通広告や屋外のデジタルサイネージなどの家庭以外の場所で接する広告メディア)といった新しい分野の広告の台頭により、マーケティング担当が広告を出稿できるチャネルはかつてないほど増えている。裏を返せば、広告主にとっては複雑さとリスクが増すということでもある。
ある医療関連企業のメディア責任者は語る。
「CTVは詐欺が横行している分野であり、それが懸念材料です。ストリーミングやビデオ・オン・デマンドの方にわれわれが移行すると誰もが考えているようですが、詐欺や偽のストリーミング・サイトも多く、必要以上に厳しく規制されているとは思えません」
今回の調査では、広告主の約3分の1が、2024年と2025年にプログラマティック・サプライチェーンのログレベル分析を行う予定だと回答している。