ミレニアルズ・イン・モーションの創設者、シャン・シャン・フー。
Courtesy of Shan Shan Fu
電子商取引ビジネスのオーナー、シャン・シャン・フー(Shan Shan Fu)氏は、アマゾン(Amazon)で商品を販売することで生計を立てている。
フー氏は2023年10月に5万3000ドル(約795万円、1ドル=150円換算)を売り上げた。Business Insiderはこの数字を、彼女が示したアマゾンダッシュボードのスクリーンショットで確認した。
フー氏は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック初期の頃にマスクを売り始めた。現在、彼女が販売している商品の大部分は、靴下やタイツなどアパレル分野のものだ。
しかし、「ファッションは販売可能なカテゴリーの中でも最も気まぐれな分野」だとフー氏は言う。
「女性は20%の確率で商品を返品します」
2023年、フー氏はファッションの枠を超え、販売商品の幅を広げることにした。そして、ピックルボールのぬいぐるみをデザインした。その商品に決めた大きな理由は、「当時はみんなピックルボールに夢中だったから」と彼女は言う。
しかし、アマゾンで売り出すと「あっという間に」失敗したことがわかったとフー氏は話す。
商品が失敗だったことを示す具体的な統計数値の1つが、広告費に対する収益の比率を測定する広告費用対効果(ROAS)だ。
「本当によく売れている商品は、ROASが2.0になることが多い」とフー氏は説明する。つまり、1ドルの広告費に対して2ドルの収益を生むということだ。
「一方、うまくいかない商品のROASは1.0以下を示す傾向があります。私がピックルボールの商品を発売したとき、ROASはすぐに1.0未満という超低水準に落ち込みました」
フー氏は、商品をクリックさせるため多くのお金を費やしているのに、客は出品ページに来ても商品を購入していないことに気づいた。
そうした商品は時間をかけて徐々に在庫を売れば、最終的には収支が合うかもしれない。
「でも、絶対に儲かることはありません」
失敗作となったピックルボールのぬいぐるみ。「良さが伝わらなかった」とフー氏は振り返る。
Courtesy of Shan Shan Fu
失敗作はピックルボールのぬいぐるみが初めてではなかった。ECビジネスを始めたばかりの頃、ランジェリーを発売したが、「まったくうまくいきませんでした」と彼女は言う。主に問題が2つあった。サイズと広告だ。
「アマゾンはランジェリーの広告を禁止している。アマゾンの広告プラットフォームを使わずに商品の販売に弾みをつけるのは、とても難しい」
フー氏は、年間30種類ほどの商品を販売し、そのうちの20%の商品が売上の80%を生み出していると推定している。ほとんどの商品は、最終的に彼女が「まあまあの成功」に分類する売上に落ち着く。明らかな成功ではないものの、売れてはいる、というぐらいの成功だ。
「そのような商品は2通りの道筋をたどる可能性があるので、非常に扱いにくいのです。時間をかけてゆっくりと成長し、勝者になることもあれば、徐々に売上が落ちて敗者になることもあります」とフー氏は話す。
「ある程度成功した商品に対して、さらにお金をかけるのか、それとも何もせずに放っておくのか、判断しないといけません」
発売前にテストをして失敗を回避
商品の失敗はビジネスにつきものかもしれないが、失敗商品を発売してしまう確率を最小限に抑えるのに役立つ戦略はある。
その1つは、アマゾンに出品する前に商品をテストすることだ。これはフー氏の戦略の核心になっている。ピックルボールの商品では、このステップを飛ばしてしまったという。
「『みんなピックルボールが好き、ぬいぐるみが好き。だから私はピックルボールのぬいぐるみを作るんだ』と思い込んでしまったんです。でもそれは間違いでした」
もしすべてをやり直すことができるなら、在庫を発注する前に商品をもっとテストしただろうと彼女は言う。
商品のテストにはいくつかの方法がある。まず、友人や家族に意見を聞いてもいい。インスタグラム(Instagram)の投票機能でアンケートを作ることも可能だ。フー氏は自分のビジネスアカウントでアンケートをとることを好む。例えば、タイツの新しいシリーズを発売しようと考えている場合、2つのスタイルを投稿し、フォロワーにどちらが好きか投票してもらうのだ。
「50人ほどの十分なサンプル数を集め、一方のタイプが他方よりも優れているという結果になれば、それが売上にも反映される可能性が高いです」
彼女は実際の一般人から意見をもらうため、ピックフー(PickFu)というサイトも利用している。
アマゾンに出品する前に商品を検証するもう1つの方法は、まずEtsy(エッツィ)で販売することだ。この方法の方が出品者にとってより安価で簡単なことが多い。例えば靴下を発売したい場合、フー氏は10〜20種類のデザインを選んで商品を自分のマンションに送ってもらい、写真を撮ってEtsyに投稿する。
Etsyに掲載されたら、クリックスルー率とコンバージョン率を見て、どの商品のパフォーマンスが一番いいかを確認する。そして、上位のデザインをアマゾンに出品するのだ。
フー氏は失敗商品や挫折にもめげず、勢いを緩めない。
「私が続けられているのは、本当に楽しいから」とフー氏は自身のECビジネスの運営について話す。
「それが私の情熱の源です。ビデオゲームをプレイしているようなものだと思う。ポイントが本物のお金だという点を除けば。毎日、目が覚めて商品のパフォーマンスを調べるのが楽しみです」
またフー氏は、成功している他のブランドオーナーたちとつながり、そこから学ぶことでもモチベーションを保っている。
「私の周りには、自分より成功している人たちがいる」とフー氏は言う。彼女は最近、経験豊富な起業家たちとつながるため、あるECカンファレンスに出席した。
「彼らが何百万ドルもの売上を上げているのを見ると刺激をもらえます。あの人たちだって私やあなたと同じ人間なのだから。実際、私より若い人もいます。彼らにできるなら、私たちにできないわけがない。だから、学ぶためだけでなく、刺激を受け続けるためにも、このようなイベントに参加するようにしているんです」