Ai Pinはとても便利だが、スマホの代わりにはならないだろう

「Ai Pin」はタッチして問いかけるウェアラブルデバイスだ。

「Ai Pin」はタッチして問いかけるウェアラブルデバイスだ。

Humane

  • アップル(Apple)の元社員が、699ドルのAI搭載ウェアラブルデバイス「Ai Pin」を発表した。
  • 多くの機能は音声コマンドで制御されるため、人前で使うのは気まずいかもしれない。
  • とてもクールだが、このためにスマホを手放すことは想像しにくい。

賑やかなスーパーの青果売り場でドラゴンフルーツを手に取るところを想像してみてほしい。ジャケットの胸元にクリップされたデバイスをタップし、果物をかざして「これは食べても大丈夫?」と尋ねる。デバイスはすぐに答える。

「はい、ドラゴンフルーツは低糖質です」

これは、新たなウェアラブル・デバイス「AI Pin」のプロモーションビデオのワンシーンだ。シャツに装着したAIデバイスが、質問に答えてくれるのだ。見事なテクノロジーで、圧倒させられる。

唯一の欠点といえば、スーパーの真ん中で果物と話していると、確実に変人に見えることだ。まあしょうがない。

AIハードウェアのスタートアップ、ヒューメイン(Humane)は、同社初のデバイスとなるAI Pinを699ドル(約10万円)で発売すると発表した。この小さなデバイスはAIによる音声コマンドを用い、質問への回答、テキストメッセージの要約、言語の翻訳、音楽の再生などを行い、カメラで認識したものについて教えてくれる。最も驚くのは、内蔵されたプロジェクターから情報を手の平に投影したり、手のジェスチャーに反応したりすることだ。

これはかっこいい。新しいテクノロジーや奇妙なガジェットが大好きな筆者としては、欲しいに決まっている。

しかし、実際に役に立つだろうか。それはよく分からない。

AI Pinに食べ物を見せて「食べてもいい?」と聞くと、ユーザーの健康状態に合わせた適切な回答をしてくれる。

AI Pinに食べ物を見せて「食べてもいい?」と聞くと、ユーザーの健康状態に合わせた適切な回答をしてくれる。

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プロモーションビデオでは、共同設立者のイムラン・チャウドリ(Imran Chaudhri)とベサニー・ボンジョルノ(Bethany Bongiorno)(いずれも元アップル社員)がPinの機能とスペックの一部を披露している。また別のビデオでは、道を歩く、買い物をする、食事をするといった日常生活の場面で人々がAI Pinを使っている様子が映し出されている。

私の頭にすぐに浮かんだ問題は、公共の場で音声コマンドデバイスに話しかけたくないということだ。すごく変だ!反社会的行動にすら思える。SiriやAlexaのような音声アシスタントはもう何年も前から存在しており、公共の場でそれらを使うことがいかに奇妙か、あるいは奇妙でないかについての社会的規範はすでに確立されている。つまり、やっぱり変なのだ!

もちろん、音声アシスタントは、タッチスクリーンのスマホを使うのが困難な人々にアクセシビリティを提供してきた。音声アシスタントを人前で使うことが普通になるのはいいことかもしれないが、Siriが発売されて以来10年以上、それはまだ実現していない。

AI Pinで「スクリーンフリー」に

もしAi Pinのアイデアがスマホのスクリーンフリー版を提供することだとしたら、インスタグラムをチェックする誘惑を感じることなく散歩に出かけたい多くの人々にとって、それはとても魅力的なことだと想像できる。私の友人は、まさにその理由からApple Watchのセルラーモデルを身に付けるようになった。それだと必要なときに接続でき、スクリーンの誘惑に惑わされることがないからだ。また別の友人は「週末用電話」として折り畳み式の携帯電話を手に入れ、仕事以外の日にはもっと子どもたちと一緒の時間を過ごせるようにしていると話していた。

しかし、AI Pinは折り畳み式携帯電話とは違ってできることがたくさんある。通話、情報提供、カレンダーでの予定管理、摂取カロリーの記録、買い物、お気に入りのプレイリストの再生などだ。しかし、これらのことをしたいのであれば、便利なスマホを使えばいいのではないだろうか。

プロモビデオではちょっと変わった機能も紹介されている。「キャッチアップして」と言うと、最新のメッセージを要約して「ケイティが7時に会えるか知りたがっている」というように伝えてくれる。すごいとは思うが、自分でテキストメッセージを読むよりも便利なのかは分からない。

私は話したり聞いたりするよりも、読む方がずっと速い。読むことは実際、極めて効率的な情報取得方法だ。

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