JMITU・Alphabetユニオン支部は11月14日、厚生労働省で記者会見を開いた。
撮影:横山耕太郎
グーグル合同会社(グーグルの日本法人)が一部の社員に対して実行した退職勧奨について、JMITU(日本金属製造情報通信労働組合)に本部を置く労働組合・Alphabet(アルファベット)ユニオン支部は11月14日、都内で記者会見を開いた。
組合員で育休中に退職勧奨を受けた女性社員が5月、東京労働局に対して「退職勧奨の対象に産休・育休中の社員が含まれているのは違法だ」と訴えていたことを受け、東京労働局は10月中旬、「調査の結果、法律違反を認定した」と女性に伝えたという。
同労働組合によると、東京労働局はグーグルに対して「1カ月の猶予で是正措置の報告を求めた」と説明する。労働組合側の弁護士によると、男女雇用機会均等法では虚偽の報告をした場合など「二十万円以下の過料に処する」(33条)とされている。
東京労働局は情報を公開せず、要請した女性本人の希望もあり、労働組合は「交渉の具体的な内容については公開しない」としている。
同労働組合は5月以降、グーグルから団体交渉を拒否されている。グーグル合同会社の社員で、同労働組合執行委員長の小林佐保氏は「産休・育休中のこの弱い立場の人に対して、家族と人生、キャリアを破壊するようなことは許してはならない。それを社会として示してくれた」と話した。
参考記事:グーグルの労働組合「育休・産休社員への退職勧奨は不当」と訴え。少なくとも6人が該当
労組側弁護士「安心して育児できる環境は政府方針」
吉田健一弁護士(中央)。
撮影:横山耕太郎
記者会見で同労働組合の担当弁護士・吉田健一氏は「育児休業など安心して出産・育児ができる職場環境や労働条件を確立することは、政府が打ち出している方針でもある」と指摘した。
「今回のグーグルのやり方については、『社会的に歯止めをかけなくちゃいけない、行政としても放置はできない』という一つの動きだと感じている。踏み込んだ対応だ」(吉田弁護士)
また同労働組合の小林執行委員長は「(退職勧奨の)話を聞いた時点から、倫理的に許されないという感覚があったが、今回違法という結論を労働局からいただいた。会社には労働組合と話し合う必要性を考え直すきっかけにしてほしいと思っている」と話した。
労働組合は11月14日、団体交渉に応じないことは不当だとして、東京都労働委員会に救済申立をしたと発表。引き続き団体交渉の開催を求めていくとした。
労働局長が紛争解決を援助
今回適用された、労働局による紛争解決援助制度とは、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法などに基づき、都道府県労働局長が紛争解決を援助する制度だ。
都道府県労働局長が、労働者と事業主との間のトラブルについて客観的な立場から、双方の意見を聴取し、問題解決に必要な具体策を提示(助言・指導・勧告)する。
労働局によると、裁判に比べて手続きが簡単で、解決までの時間も短く、援助を受けるための費用はかからない。
東京労働局によると、2022年度の「労働局長による紛争の解決援助の申出」の件数は84件。労働局長による紛争解決の援助は84件だった。
団体交渉は進まず
グーグル合同会社社員で、JMITU Alphabet ユニオン支部の小林佐保執行委員長。
撮影:横山耕太郎
労働組合などによると、グーグル合同会社では2023年3月、一部の社員に対して、早期の退職に応じた場合の退職金などの条件をまとめた「退職パッケージ」を送り、退職勧奨を実施した。
労働組合によると、グーグル合同会社では200人規模で人員削減を進めたといい、組合が把握している範囲では、産休・育休中だった社員6人も退職勧奨の対象になり、そのうち4人が退職に応じたという。
労働組合では、退職勧奨に育休・産休中の社員が含まれていたことは、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法の趣旨に反すると訴え、グーグルと団体交渉を求めた。
同組合では3月と5月に計2回、グーグルと団体交渉を実施した。しかし、3度目以降の団体交渉の開催要求については、グーグル側が応じなかった。
そのため「グーグルへの指導」を求めて、組合員の一部が、個人として東京労働局に要請していた。
編集部では、本件に関しグーグル合同会社広報にコメントを求めている。返答があり次第、掲載する。