REITは投資家に、管理の手間をかけずに不動産から利益を得る流動性の高い方法を提供する。
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- 不動産投資信託(REIT)は、収益不動産を保有、運営またはそれに資金を提供する企業のことである。
- 上場REITは不動産そのものを購入したり管理したりしなくても、不動産に投資できる流動性の高い手法だ。
- REITは安定した高い収益源とポートフォリオに分散効果を提供するが、金利リスクにもさらされる。
REIT(リート)は不動産そのものを購入したり管理したりしなくても、不動産に投資できる投資信託だ。大家としての義務には、大半の人がやりたいと思う以上の作業を伴う。そのため、REITは個人投資家の不動産投資の選択肢になることが多い。
NAREIT(全米不動産投資信託協会)によると、2020年10月には、推計1億4500万人の米国人、すなわち米国家計の約44%がREITの投資口を保有。そして、その多くは主な証券取引所で取引されているという。
REITには株式投資が持つ気楽さと流動性に加えて、不動産を保有し、そこから利益を上げる機会を兼ね備えている。そのため、多くの投資家がREITをポートフォリオに組み込んでいる。REITは収益を上げることを目的としているため、定期的なリターンや高い配当を提供することが多い。
REITとは何か?
REITは、不動産を保有、運営またはそれに資金を提供する企業のことである。投資信託や上場投資信託(ETF)のように、1物件だけでなく複数の資産を保有する。投資家はREITの投資口を購入し、それら資産が生む収益から保有口数に応じた利益を獲得する。
REITは1960年に米国議会がたばこ消費税延長の改正として創設したもので、これにより投資家は商業用不動産ポートフォリオの持分を購入できるようになった。それ以降、REITは今の市場規模まで拡大し、NAREITは米国全体でREITの保有資産額が合計で約3兆5000億ドル(約528兆円)と推計する。
REITは、不動産を保有せずに不動産市場に投資をしたい人に魅力的だ。
REITの種類
すべてのREITは収益を生むことを目的としているが、その投資先はさまざまだ。REIT全体では3つの種類がある。
エクイティREIT:大部分のREITはこのカテゴリーに入り、大半の人がREITという場合はこれを指す。エクイティREITは実際に不動産物件を保有し運営する。その収入源は賃料だが、物件売却から値上がり益を得られる可能性もある。
モーゲージREIT:mREITと記載されることがあるモーゲージREITは、どちらかと言えば厳密な収益投資であり、不動産を所有するのではなく、不動産担保ローンを提供するかそれを保有する。実際に不動産担保ローンを保有することもあれば、モーゲージ担保証券(MBS)を保有する場合もある。収益源は、不動産担保ローンの支払い、特にそれに対する金利だ。一般的にモーゲージREITはエクイティREITよりもレバレッジが高い傾向にあり、それによりリスクが高くなる。
モーゲージREITは、借入金利と不動産担保ローン金利との差を捉えることで収益を上げる。金利1%で資金を借り入れて4%の不動産担保ローンを購入できれば、その差の3%を投資家に還元できる。このことはまた、モーゲージREITが特に金利変動に対する感応度が高いことを意味する。金利が下がるとモーゲージREITの価値は低下する。
ハイブリッドREIT:その名が示すように、ハイブリッドREITは投資戦略の組み合わせであり、不動産の現物と不動産担保ローンの両方を保有する。ハイブリッドREITはエクイティREITとモーゲージREITのどちらか決めかねているジェネラリスト投資家に魅力的だが、ハイブリットREITは一方に偏りがちである。
REITの投資先
アメリカの場合、REITがアメリカ合衆国内国歳入法(IRC)のルールを遵守している限り、いかなる不動産物件にも投資できる。
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REITは普通、不動産セクターの1つに特化して運用するが、ポートフォリオに複数種類の物件を抱えるREITもある。
REITは自分に合っているか?
REIT投資が自分に適しているかどうか判断する前に、その長所と短所を理解することが重要だ。
長所 | 短所 |
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REITの平均配当利回りは一般的に高く、長期的には値上がり益が得られる可能性がある | REITの分配金には適格税率が適用されず、通常所得と同じ税率がかかる(日本では通常の株式と同じく分配金に20.315%課税される) |
REITにより投資ポートフォリオの分散ができる | REITの売却利益にはキャピタルゲイン税率[最大20%+メディケアタックス3%]が課せられる(日本では譲渡益に対して20.315%課税される) |
伝統的に流動性が低いことで悪名高い不動産投資に、流動性を提供する | REIT、特にモーゲージREITは金利感応度が高い |
REIT自体は分散されておらず、投資先セクターが低迷すると価格が下落する可能性がある |
REIT投資の長所
- 高いリターン:REITは課税所得の90%を株主に支払う必要があるため、平均配当利回りが高くなる傾向にある。また、保有する資産価値が長期的に高まると、値上がり益が期待できる。
- ポートフォリオ分散効果:厳密にいうとREITは株式だが、異なる資産クラス、つまり通常の株式ではなく不動産セクターの一部とみなされる。したがって、ポートフォリオを分散する1つの手法を提供するものであり、常にすぐれたリスク相殺戦略になりうる。
- 流動性:不動産の流動性は低いことで悪名高く、物件の売買には時間がかかる。だが、REITならば売却しなければならない場合でも、証券会社のサイトのボタンをクリックするか電話をかけるのと同じくらい簡単なことが多い。また上場しているため、保有銘柄の評価額を毎日把握できる。
REIT投資の短所
- 高い税率:アメリカでは、REIT自体には税制優遇措置がある。だが残念ながら投資家はそうではない。REITからの支払いは通常、アメリカ合衆国内国歳入庁(IRS)の「適格配当」の定義を満たさないため、投資家の利益は通常所得として課税され、他の種類の投資よりも税率が高くなる。また、アメリカでは、REITを売却する際には株式と同じくキャピタルゲイン課税が課せられ、最大20%のキャピタルゲイン課税と3.8%のメディケア課税が利益にかかる(なお、日本では、REITの分配金・譲渡益ともに、通常の株式と同じく20.315%が課税される)
- 高い金利感応度:REITは一般的に金利変動に対する感応度が極めて高く、特に不動産担保ローン投資はそれが顕著である。金利上昇局面では米国債の魅力が高まる傾向にあるため、REITから資金が流出し、価格が下がる。
- セクターリスク:REITはポートフォリオ分散の優れた方法だが、REIT内ではほとんど分散されていない。つまり、ある不動産セクターが苦戦すれば、保有REITにも悪影響が及ぶ可能性がある。
REITへの投資方法
REITへの投資方法はいくつかある。
上場REIT:上場REITは最も一般的で、大半の個人投資家が投資を検討するのもこのタイプだ。上場REITは証券取引委員会(SEC)が規制しており、ふつう最低投資金額は低い。
非上場REIT:非上場REITとして知られるタイプもSECによる規制を受け、報告が義務付けられているが、非上場REITは証券取引所に上場しておらず一定の投資制限を受ける。投資家はREITまたは第三者のディーラーから直接投資口を購入しなければならない。
非上場REITは上場REITに比べて著しく流動性が劣り、投資期間が長期に及ぶことが多い。また、購入時の手数料も高いことがある。
プライベートREIT:プライベートREITはSECへの登録が義務付けられていない。したがって、機関投資家や適格投資家向け商品であり、一般的に最低投資金額は非常に高くて1万ドル(140万円)以上のことも多く、大きなリスクを伴う。
REITファンド:ほぼすべての資産に上場投資信託(ETF)や投資信託があり、REITも例外ではない。バンガードやフィデリティのような資産運用会社が販売するこうした投資商品は、資産の大部分をREIT証券や関連デリバティブに投資するマネージド・ファンドである。分散効果を最大限に高めたい場合や、個別REITのリサーチをしたくない場合は、REITファンドという選択肢も良いかもしれない。
まとめ
REITは不動産投資に流動性を提供する物であり、これは不動産という資産とは矛盾するようにみえる。REITは安定した収益とやや長期的な値上がり益を享受しながら、ポートフォリオを分散する1つの手法になりうる。
REITは不動産につきものの多くの欠点を排除してくれるが、REITにもまた、高い税率、金利リスクと市場セクターリスクに対する特有の感応度といった欠点もある。だが全体として、個人投資家が不動産投資を行ううえで比較的安全な手法であることに変わりはない。