※本記事は、2023年4月3日に公開した記事の再掲です。
Jeon Heon-Kyun - Pool/Getty Images
- 韓国に逃れてきた脱北者の女性は、北朝鮮に戻って死にたいと話している。
- この女性を含む複数の脱北者たちは、韓国に来てから直面した困難をブルームバーグに語った。
- 1998年以降、韓国には3万3000人以上の脱北者が逃れてきている。
2017年に韓国に逃れてきた脱北者のAさんは今、北朝鮮に戻って「そこで死にたい」と話している。
「とても孤独です。(北朝鮮に)戻ってそこで死にたい… 韓国は北朝鮮と同じくらい息が詰まります」とAさんはブルームバーグに語った。
Aさんは息子を1人だけ連れて韓国へやってきた。家族全員で逃れるにはお金が足りないと分かると、一番上の息子は自分が残ると申し出た。
一番上の息子は、Aさんが脱北したと分かると北朝鮮当局に撲殺されたという。
Aさんの韓国での生活は、金正恩体制から抜け出しても脱北後の生活が順風満帆とは限らないことを物語っている。ただ、北朝鮮の人権状況は国際社会の中でも特にひどく、人々は飢饉や深刻な食料不足に苦しんでいる。
ブルームバーグの取材に応じた脱北者のBさん(51)は家に帰りたい、家族に会いたいと語った。
「あとに残してきた家族に会いたくて、よく泣いています。(脱北してから)3年ほど経ちましたが、今でも北朝鮮の夢を見ます」とBさんは話した。
「母親の服を持ってくれば良かった。そうすれば母の匂いをかげたのに」
Bさんは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが始まって間もない頃、まずは中国へ逃れ、その後、ラオスやタイを経由し、韓国へやってきた。ブルームバーグによると、Bさんは韓国に逃れるルートを確保するために、ブローカーに北朝鮮の平均年収の約10倍を支払った。
ホームシックを感じつつも、Bさんはソウルを「地上の楽園」と呼んでいる。韓国政府から毎月、お金やお米を受け取っているという。
1998年以降、韓国には3万3000人以上の脱北者が逃れてきているとCNNは2022年、韓国統一部のデータをもとに報じた。
脱北者の中には、国際的に有名になった人たちもいる。元政治犯で左手足を失ったチ・ソンホ氏はのちに韓国で政治家になった。 アメリカのワシントンD.C.で開かれたイベントにも何度も招待され、2018年にはトランプ大統領(当時)の一般教書演説でスタンディングオベーションを受けた。
同じく北朝鮮から逃れたパク・ヨンミ氏も作家、ソーシャルメディアのインフルエンサー、ユーチューバー、講演者として活躍している。
ただ、同じような成功を韓国に住む多くの北朝鮮の人々が掴んでいるわけではない。アジア財団が北朝鮮から逃れてきた難民起業家131人を対象に実施した調査では、53.4%が資本がなかったり、韓国で競争するのに必要なビジネス感覚やスキルがなく、生計を立てるのに苦労したと答えている。
『Yonsei Medical Journal』に掲載された2000年の研究によると、多くの脱北者は家族を伴わずに北朝鮮から逃れてきているため孤独に陥りやすく、周囲の人間に対して疑い深くなってしまうこともあり、集団生活をしない傾向があるという。